第237回相続コラム 相続分とは何か 法定相続分・指定相続分・具体的相続分の違い

相続コラム

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第237回相続コラム 相続分とは何か 法定相続分・指定相続分・具体的相続分の違い

第237回相続コラム 相続分とは何か 法定相続分・指定相続分・具体的相続分の違い

遺産の取り分を意味する『相続分』。なんとなく理解はしているつもりでも、相続に関する解説などを調べていると、用いられる文脈やシチュエーションによって、「法定相続分」、「指定相続分」、「具体的相続分」など様々な似た用語が登場するため、混乱してしまうという方も少なくありません。今回のコラムでは、あらためて相続分とは何か、法定相続分・指定相続分・具体的相続分のそれぞれの違いについて解説したいと思います。

 

法定相続分とは

法定相続分とは、読んで字のごとく、法律で定められた『相続分』=『遺産の取り分』のことをいいます。

相続が発生し、遺言がない場合には、遺産分割協議によって、遺産を相続人間で分配することになります。

しかし、その際に、どの相続人が、どのくらいの割合で相続するのか、何らかのルールがないと、相続人間で遺産の奪い合いにもなりかねません。そこで、法律では、各相続人の遺産の取り分を定めており、それが法定相続分というわけです。

通常、単に『相続分』という場合、この法定相続分を指すのが一般的です。

各相続人の法定相続分について詳しくは
第234回相続コラム 配偶者の相続分について」をご覧ください。

 

指定相続分とは

被相続人は、遺言の内容として、各相続人の相続分を指定することが可能です。この遺言によって指定された各相続人の相続分のことを指定相続分といいます。

遺言では、自由に各相続人の相続分を指定することが可能であり、法定相続分とは異なる割合で指定することも問題ありません。

民法第902条1項
被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。

例えば、相続人として、配偶者および長男・長女がいる場合、法定相続分に従って遺産を分配すると、各相続人の相続分は、配偶者が1/2、長男が1/4、長女が1/4となりますが、遺言によって、配偶者は1/4、長男は1/2、長女は1/4などと指定することができます。

なお、指定する相続分の割合は、遺言作成者である被相続人の自由意思に委ねられていますが、あまりに法定相続分とかけ離れた割合を指定すると、相続人間の対立を生じさせかねませんし、遺留分という最低限保障された取り分を侵害しないように配慮することが大切となります。

遺留分について詳しくは
第143回相続コラム 遺言を書く際に気をつけるべき遺留分 遺言と遺留分の関係について」をご覧ください。

 

具体的相続分とは

一般的に、遺産の分配は、上で解説した「法定相続分」や「指定相続分」に従って行われることになるのが原則です。

しかし、そのまま指定相続分や法定相続分で分配すると、家族間の具体的な事情によっては、不公平な分配となってしまう場合があります。

例えば、「被相続人の療養看護に長年献身的に努めてきた相続人については、取り分を多くした方がより公平なのではないか」、「被相続人から生前に多額の援助や贈与を受けてきた相続人が、さらに他の相続人と同一の遺産を取得するのは不公平ではないか」などの価値判断から、法律では、『寄与分』や『特別受益』という制度を設け、各相続人間の相続分を調整・修正し、実質的公平を図っています。

つまり、『寄与分』や『特別受益』という制度により、調整・修正された個々の具体的な相続分が、具体的相続分と呼ばれるものになります。

例えば、Xさんが亡くなり、その相続人として長男Aさんと次男Bさんがいたとします。残された遺産は3,000万円です。法定相続分に従うと、AさんもBさんも1,500万円の遺産を受け取ることになります。

しかし、実はAさんは、Xさんより生前贈与として既に1,000万円もらっていたという場合、そのまま法定相続分通りに遺産を分配すると、Aさんは生前贈与1,000万円+遺産1,500万円=2,500万円分の財産を取得することになり、不公平な結果となってしまいます。

そこで、1,000万円の生前贈与を特別受益として遺産に持ち戻しを行い、再計算すると、遺産3,000万円+生前贈与1,000万円=4,000万円が総遺産とみなされ、Aさん及びBさんの取り分は、それぞれ2,000万円ずつとなります。そして、Aさんは、既に生前贈与として1,000万円受け取っているので、実際に遺産からもらえる額は、残りの1,000万円となり、Bさんは2,000万円の遺産を受け取ることになります。

この特別受益の計算により修正された各人の取り分、すなわちAさんの1,000万円、Bさんの2,000万円という相続分が具体的相続分というわけです。

特別受益について詳しくは
第21回相続コラム 遺産分割で問題となる特別受益とは?」をご覧ください。

寄与分について詳しくは
第22回相続コラム 相続分が変わる!?寄与分とは?」をご覧ください。

 

おわりに

今回のコラムでは、相続分とは何か、法定相続分・指定相続分・具体的相続分のそれぞれの違いについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。具体的相続分は、少し難しい内容だったかもしれませんが、重要な点は、『寄与分』や『特別受益』という制度により、法定相続分通りに相続されない、相続分が変更される場合があるということです。

「寄与分や特別受益を踏まえて相続分を計算するのは難しいし、面倒だ」という方は、相続に詳しい専門家に相談するのもひとつの手段です。

当事務所では、相続・遺言・相続登記などに関する相談を広く受けております。相談は、初回無料ですので、相続についてわからないことや、お悩みのある方は、お気軽にご相談ください。