第238回相続コラム 相続分の譲渡とは? 譲渡の方法や注意点も解説

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第238回相続コラム 相続分の譲渡とは? 譲渡の方法や注意点も解説

第238回相続コラム 相続分の譲渡とは? 譲渡の方法や注意点も解説

遺産の取り分である相続分。この相続分を他人に譲り渡すことができるのをご存知でしょうか。今回のコラムでは、相続分の譲渡とは何か、その方法や注意点などを解説したいと思います。

 

相続分の譲渡とは

相続分とは、簡単に言うと、『遺産の取り分』のことをいいます。

この遺産の取り分である相続分は、他人に譲り渡すことが可能であり、相続分を譲り渡すことを相続分の譲渡といいます。

例えば、ある人が亡くなり、その相続人として妻と長男・長女がいたとします。この場合、妻が1/2、長男と長女が1/4の相続分を有することになります。ここで、長男が、「長女は亡くなった父の介護を献身的に行ってくれていたので、自分の有する相続分を譲りたい」として、長女に相続分を譲るというのが、相続分の譲渡です。仮に長女が長男の相続分を全部譲り受けると、その結果、妻が1/2、長女が1/2の相続分を有することになります。

 

相続分の譲渡の方法

相続分の譲渡について、特に様式・方式の決まりはありません。つまり、他の相続人の同意等は不要で、譲渡人と譲受人の合意のみで成立します。

譲渡の対価は有償でも無償でも構いません。有償で譲り渡すと「相続分の売買」、無償で譲り渡すと「相続分の贈与」となります。また、相続分の譲り渡しは、一部でも全部でも問題はありません。

譲渡の方法については特に決まりはありませんが、譲り渡すことが可能な期間は、相続開始から遺産分割が終了する前までとなります。遺産分割が終了すると、具体的にどの相続人が何を相続するか確定し、抽象的な割合的持分ではなくなるからです。

 

相続分を譲り渡す相手

相続分の譲渡は、他の共同相続人を譲受人とする場合がほとんどですが、譲受人は、他の共同相続人以外の第三者でも問題ありません。

ただし、共同相続人以外の第三者に相続分が譲渡された場合、共同相続人は、取戻権という特別な権利を行使して、第三者が取得した相続分を取り戻すことが可能です。

第三者が相続分を譲り受けると、その結果、第三者は相続分を有する以上、相続人と同様の立場で遺産分割協議等に参加することになるため、「他人が関与してくると、話し合いが複雑化し、困る」というような相続人のために、取戻権という権利が法律上定められています。

取戻権行使の際には、取戻権行使時における相続分の評価額と譲渡の際に要した費用を譲受人に償還する必要があります。また、取戻権行使の期間は、相続分の譲渡があった時から1ヶ月という短い期間となりますので、取戻権を行使する際には、期間に十分注意する必要があります。

 

相続分の譲渡と遺産分割協議

相続分を譲り受けた人は、他の相続人と同等の立場で、遺産分割協議に参加することができます。
相続分を全部譲り渡した人は、遺産分割協議に参加する必要はありません。自身は既に持分を有しない以上、特に参加する意義がないからです。

ただし、単なる遺産分割協議ではなく、遺産分割調停等、家庭裁判所で手続きが進んでいる場合には、間違いなく相続分を譲り渡したということ確認するために、「相続分譲渡証書」等に署名・捺印を求められたりする場合があります。

 

相続分の譲渡とマイナスの財産

相続分の譲渡は、遺産の取り分の譲渡といいましたが、その「遺産の取り分」には、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含まれます。

つまり、相続分を譲渡すると、借金等のマイナスの財産も譲受人に移転することになります。

ただし、注意が必要なのは、借金等の負債が譲受人に移転しているとはいっても、その事実を債権者に対抗することはできません。ですので、仮に、債権者から、債務の支払を求められた場合に、相続分を譲り渡したことを理由に、支払を拒むことはできないので注意が必要です。

仮に、相続分を譲渡したにも関わらず、債権者から支払を求められ、実際に債権者に債務を支払った場合には、譲受人に対して求償権というものを行使して、立て替えた分のお金を返してもらうような格好となります。

おわりに

今回のコラムでは、相続分の譲渡とは何か、その方法や注意点などを解説しましたが、いかがだったでしょうか。相続問題に関わりたくないなどの理由で利用されるケースが多いですが、利用される場合には、その方法や注意点をしっかりと押さえておきたいところです。また、相続分の譲渡をすると、税金はどうなるのか?気になるところかと思いますが、それはまた別のコラムで解説したいと思います。

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