第145回 意外と知らない効果的な限定承認の活用方法

相続コラム

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第145回 意外と知らない効果的な限定承認の活用方法

第145回 意外と知らない効果的な限定承認の活用方法

相続の際に、多額の負債があると、よく利用されるのが相続放棄。相続放棄と同様に、借金などのマイナスの遺産が多い場合に取られる手段として限定承認という制度があります。馴染みの薄い限定承認について、効果的な活用方法とともに解説したいと思います。

 

相続の3つの方式

相続の方式には、単純承認、相続放棄、限定承認という3つの方式が法律上存在します。相続の際には、プラスの財産だけではなく、借金や負債といったマイナスの財産も受け継ぐことになるため、法は、どのように財産を相続するのか、または相続しないのかについて複数の選択肢を用意しています。

単純承認は、プラスの財産もマイナスの財産も全て引き継ぐという方式で、相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産も全て引き継がないで放棄するという方式になります。

両者は比較的分かりやすい制度なのに対して、やや難解なのが限定承認です。

 

限定承認とは

限定承認とは、プラスとマイナスの遺産があるときに、プラスの遺産の限度でマイナスの遺産を相続する制度をいいます。仮に借金などの負債が、相続するプラスの財産よりも多い場合には、承継する相続財産の範囲で借金などの支払をするという限度付きの相続といえます。

例えば、現金・不動産・有価証券など、全てのプラスの相続財産を合計すると5000万円相当の遺産があり、借金が6000万円あるとします。限定承認をすると、裁判所関与の手続きのもと、換価手続き(競売)が行われ、不動産や有価証券などの相続財産は基本的に全てお金に換えられます。債権者には、換価手続きで得たプラスの遺産である5000万円の範囲で借金を弁済すればよいことになります。

もし、上記の手続き後、余りがあれば、例えば、借金の額が4000万円であったとしたら、残りの1000万円を相続人間で分割することになります。

 

限定承認が効果的なケース

限定承認は、単純承認や相続放棄よりも理解が難しい制度ですが、どういった場合に活用されるのでしょうか。

プラスの財産とマイナスの財産の正確な額が不明なケース

相続放棄も限定承認も、利用するには相続開始後3ヶ月以内という期間制限があるため、遺産がプラスなのかマイナスなのか不明という場合に利用されます。

ただ、実際に限定承認を行うとなると、家庭裁判所に申立てを行い、官報に公告、財産目録の作成、換価処分後、債権者への通知・分配と、非常に手間と時間がかかります。また、限定承認の手続きをご自身で進めるのは専門性が高く困難なため、専門家の手助けが必要になることも多く、その報酬も高額になる傾向があります。

ですので、遺産の額が少ない場合には、相続放棄してしまった方が手間もかからず安価ということもあります。

 

借金はあるけど相続したい特別な財産がある場合

先祖代々の土地、家業用の財産など、どうしても手放したくない財産、引き継ぎたい財産が相続財産に含まれる場合に、限定承認を活用することによって、借金の負担を軽減しつつ、必要な財産を手放さずに済むことができます。

限定承認をすると、相続財産は換価手続きによってお金に換えられるのですが、相続人には先買権という特別な権利が認められています。その先買権を行使すると、遺産の換価手続きを進める前に、相続人は自分の欲しい遺産を買い受けることができます。

もちろん、買い受けようとする財産に相当する額をご自身で用意する必要はありますが、多額の負債を負わずに、手放したくない財産を手に入れられるため、譲れない大切な財産のある方にとっては効果的な手段となります。

 

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