第155回相続コラム 令和2年4月1日から施行された配偶者居住権とは

相続コラム

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第155回相続コラム 令和2年4月1日から施行された配偶者居住権とは

第155回相続コラム 令和2年4月1日から施行された配偶者居住権とは

社会の高齢化が進む中で、残された配偶者が住み慣れた自宅で安心して暮らせるように創設された配偶者居住権。令和2年4月1日から施行された比較的新しい制度なため、内容をよく知らないという方も少なくないのではないでしょうか。今回のコラムでは、配偶者居住権について解説したいと思います。

 

配偶者居住権とは

配偶者居住権とは、夫婦の一方が亡くなった場合に、残された配偶者が、亡くなった人が所有していた建物に、一定の要件のもとに終身または一定期間、無償で住み続けられる権利のことをいいます。

この配偶者居住権は、建物の価値を「自宅に住む権利(居住権)」と、「それ以外の権利(所有権)」に分離し、居住権を配偶者に相続させ、所有権を他の相続人に相続させることによって、残された配偶者が住む場所に困らないようにするための制度です。

 

配偶者居住権の具体例

夫が亡くなり、その相続人は妻と子の2人。
遺産は自宅4000万円、預金4000万円。

夫が亡くなり、その遺産として、自宅4000万円、預金4000万円があり、相続人は妻と子の2人だとします。遺産を法定相続分に従って相続人に分配すると、妻も子も取り分は1/2なので、それぞれ4000万円ずつ相続することになります。

仮に、妻が、亡き夫と暮らしていた自宅にそのまま住み続けたいと考え、自宅を相続すると、4000万円の自宅は相続できますが、預金は全て子が相続することになるため、生活費に不安が残ります。逆に、妻が生活費として預金を相続すると、子が実家を相続することになり、今度は住む家がなくなり困ってしまいます。

このようなケースで活用を期待されているのが配偶者居住権となります。

配偶者居住権が成立するケースでは、建物の価値を、居住権と所有権とに分けて考えることができます。そして、仮に、配偶者居住権が2000万円と評価されると、所有権は、居住権の制限を受けるため、4000万円-2000万円=2000万円と評価できます。

妻は、この配偶者居住権のみを取得することによって、自宅に引き続き居住しつつ預金についても2000万円分相続することが可能になります。他方で、子は、預金の取り分は減りますが、実家の居住権を差し引いた所有権を相続することになります。

妻:配偶者居住権2000万円+預金2000万円=4000万円
子:所有権2000万円+預金2000万円=4000万円

このように、配偶者居住権を活用することによって、残された配偶者が自宅に住み続けることを保障しつつも、当面の生活費も確保可能となり、遺産分割協議が円滑に進むことが期待されています。

 

配偶者居住権が成立するための要件

亡くなった方の法律上の配偶者であること

残された配偶者の方は、亡くなった被相続人の法律上の配偶者であることが必要です。
いわゆる事実婚の配偶者、内縁関係では配偶者居住権は認められません。

 

配偶者の方が、亡くなった方が所有していた建物に、相続開始時に居住していたこと

相続開始時点において、実際に居住していたことが必要になります。別居などをしていた場合には成立しません。

 

亡くなった方の所有建物または共有建物であること

被相続人の単独所有建物であるか、または被相続人と配偶者との共有建物である必要があります。被相続人と配偶者以外の者との共有建物の場合には成立しません。

 

遺産分割協議、遺贈、死因贈与、家庭裁判所の審判のいずれかの方法で配偶者居住権を取得したこと

遺産分割協議で、配偶者居住権を他の相続人との協議で認めてもらったり、生活に困らないように遺言等で予め配偶者居住権を残してもらう方法の他に、家庭裁判所の審判で認めてもらうことができます。家庭裁判所の審判では、配偶者居住権を認めることが、生活のために特に必要がある場合に、所有者の被る不利益等を考慮して判断されます。

 

配偶者居住権の施行時期

配偶者居住権の施行は、令和2年4月1日からなので、その日以降に発生した相続について適用されます。遺言で配偶者居住権を遺贈することができますが、その場合には令和2年4月1日以降に作成された遺言である必要がありますので、注意が必要です。改正法施行を見越して、改正法施行前に作成された遺言等がある場合には、遺言の作成日付を確認することをおすすめします。

 

配偶者居住権に関する相談は専門家へ

配偶者居住権を、自己の配偶者が確実に取得できるようにするためには、予め遺言を作成することが大切になります。また、実際に、配偶者居住権が成立した際には、その登記をすることも重要です。登記はせずに放置しておくと、万が一、所有者が第三者に自宅を売却してしまった場合に、対抗できなくなってしまう危険性があり、最悪自宅に住み続けることができなくなってしまいます。配偶者居住権は活用法次第では、二次相続時に大きな節税効果も見込めるため、専門家に相談の上、上手に活用したいところです。

当事務所は、遺言の作成、配偶者居住権成立時の登記など、相続や遺言に関する相談を広く受け付けております。相談料は初回無料ですので、お気軽にご相談ください。