第236回相続コラム 相続用語の解説~相続の登場人物まとめ

相続に関する調べものをしていると、難解な法律用語や専門用語が飛び交い、途中で挫折してしまう方も少なくないのではないでしょうか。相続に関する登場人物にも専門用語が使われることが多いため、「その人は一体誰なのか?」と毎回立ち止まってしまっては、本筋の理解も進みません。今回のコラムでは、相続によく出てくる登場人物に関する用語をまとめて解説したいと思います。
被相続人とは
相続に関するお話で頻繁に登場するのが、「被相続人」(ひそうぞくにん)という用語です。
被相続人とは、「相続される」人のことを指します。簡単に言うと、亡くなった人、故人のことです。
『相続』というと、相続人同士で遺産を分けるイメージを持たれる方が多いと思いますが、その遺産の元々の持ち主が被相続人であり、この被相続人に対する相続人が、被相続人の遺産を分けることが『相続』の中心テーマであり、本来、相続に関するお話しの中心人物は被相続人であるとも言えます。
人は、自身が亡くなった後に自分の財産をどうするかについて、遺言というかたちで最終意思を示すことができます。遺言を作成した場合、その遺言作成者のことを「遺言者」といいます。遺言に従って遺産が分配される場合には、故人のことを「遺言者」と表現される場合があります。
相続人(法定相続人)とは
相続人とは、文字通り、遺産を相続する人のことを指します。
「被相続人」が「相続される人」で、被相続人の遺産を「相続する人」が「相続人」です。
誰が相続人となるのかについては、法律で定められており、法律で定められた相続人のことを法定相続人と言います。
一般的に、単に「相続人」というと、「法定相続人」を指すことがほとんどです。
具体的に、誰が相続人となるかについては
「第230回相続コラム 相続人になれる人は誰か? 相続人の順位について解説」をご覧ください。
推定相続人とは
推定相続人とは、現時点である人が亡くなったと仮定した場合に、その亡くなった方の相続人となる人のことをいいます。
例えば、Aさんに、妻と子がいたとします。仮にAさんが、今亡くなったとすると、妻と子が相続人となりますので、妻と子はAさんの推定相続人です。
Aさんが現実に亡くなっていない段階では、相続が発生していないため、妻も子も相続人そのものではありませんし、実際に被相続人が亡くなるまでは、常に家族関係等が変わる可能性があるため、現在、相続人になると思われる人も、それはあくまで推定にすぎないため、推定相続人と呼ばれます。
推定相続人と法定相続人の違いについて詳しくは
「第223回相続コラム 推定相続人とは何か、よく似た法定相続人との違いについて解説」をご覧ください。
代襲相続人とは
本来相続人となるはずの者が、被相続人が亡くなる前に死亡していたり、相続人たる権利を喪失していた場合に、本来相続人になるはずの者の子がその者に代わって相続することになります。これを代襲相続(だいしゅうそうぞく)といいます。
代襲相続によって相続する人を、代襲相続人(だいしゅうそうぞくにん)と呼びます。
例えば、ある人が亡くなり、相続が発生したが、その方の子は相続発生時には既に他界していたため、孫が代わりに相続するというのが代襲相続の典型です。このケースの孫が代襲相続人にあたります。
代襲相続について詳しくは
「第231回相続コラム 相続人の順位と代襲相続との関係」をご覧ください。
受遺者とは
遺言によって、財産を譲り受ける人を受遺者(じゅいしゃ)といいます。反対に、遺言によって財産を譲り渡す人を遺贈者(いぞうしゃ)といいます。(※遺言によって財産を譲ることを「遺贈」といいます。)
人は、遺言によって自由に自身の財産を処分可能であり、相続人以外の者にも、財産を譲り渡すことができます。
例えば、「お世話になった恩師に遺産を譲りたい」、「支持している団体に寄付したい」など、遺言によって自由に遺贈することができます。この場合、遺産を譲り受けた恩師や団体が受遺者となります。
遺言によっても、相続人以外の者に「相続させる」ことはできませんが、「遺贈する」ことはできます。他方で、相続人には、遺言によって遺産を「相続させる」ことができますし、「遺贈する」こともできます。遺言によって、相続人に「相続させる」場合と「遺贈する」場合との違いは、また別の機会に解説したいと思います。
特別縁故者とは
特別縁故者とは、被相続人と特別の縁故があったことを理由に、法定相続人がいない場合に、遺産の全部または一部を取得できる人をいいます。
被相続人に相続人が一切いないということになると、遺産は最終的に国庫に帰属してしまいます。
しかし、法定相続人ではないが、被相続人と特別な間柄にある者がいるならば、その者に遺産を与える方が、国庫に帰属させるよりも、故人にとっても望ましいと言えます。
そこで、法は、一定の要件の下に、特別縁故者に遺産を与えることができる旨の規定を置いているのです。
特別縁故者として遺産を譲り受けるためには、家庭裁判所の判断が必要となりますが、典型的な特別縁故者として、内縁の妻や夫が挙げられます。
民法第958条の2第1項
前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
特別縁故者について詳しくは
「第38回相続コラム 相続人不存在の財産について」をご覧ください。
おわりに
今回のコラムでは、相続によく出てくる登場人物に関する用語をまとめて解説しましたが、いかがだったでしょうか。相続でよく登場する人物に関する用語をしっかりと押さえておくことで、相続に関する調べものをする際に、より理解が深まるのではないでしょうか。
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