第242回相続コラム 【改正】令和5年10月2日より遺言書保管制度における指定者通知の対象範囲等が拡大

相続コラム

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第242回相続コラム 【改正】令和5年10月2日より遺言書保管制度における指定者通知の対象範囲等が拡大

第242回相続コラム 【改正】令和5年10月2日より遺言書保管制度における指定者通知の対象範囲等が拡大

自筆証書遺言書保管制度(以下「遺言書保管制度」)における指定者通知の対象範囲等が、本日(令和5102)より、拡大されました。具体的には、指定者通知の対象者の限定が解除され、また、通知の対象者を3名まで指定できることになりました。今回のコラムでは、あらためて遺言書保管制度および指定者通知とは何かを解説しつつ、通知の対象範囲等がどのように変更されたのか解説したいと思います。

遺言書保管制度とは

遺言書保管制度とは、令和2710日に施行された比較的新しい制度で、その名が示すとおり、自分で書いた遺言書(自筆証書遺言)を法務局で保管してくれる制度となります。

自筆証書遺言は、他の形式の遺言とは異なり、成立する要件も緩やかで、極端な話し、紙とペンとハンコがあれば、すぐに作成することができます。

その反面、遺言書の保管・管理は自身で行う必要があるため、紛失や改ざんのおそれがあったり、また、実際に相続が発生した場面では、『検認』という面倒な手続きが必要となるのが原則です。

上記のような自筆証書遺言のデメリットを補い、より遺言書を利用しやすくするために創設されたのが遺言書保管制度です。

すなわち、遺言書保管制度を利用すると、作成した遺言書の原本は法務局で保管されることになるため、紛失したり、誰かに改ざんされるという危険性もなくなります。また、遺言書保管制度の創設に伴い、法律が改正され、同制度を利用した場合の自筆証書遺言について検認は不要となりました。

検認について詳しくは
49回相続コラム 知らないと罰せられることも!?遺言の検認」をご覧ください。

遺言書保管制度における指定者通知とは

遺言書を作成後、それを適切に保管することはとても重要ですが、保管以外にも、もうひとつ重要なことがあります。それは、「遺言書の存在自体を遺言執行者や相続人に知ってもらう」ということです。

せっかく遺言書をのこしていたとしても、その存在自体が誰にも知られていないと、遺言の内容を実現することができず、無意味となってしまいます。また、「遺産分割協議が成立した後に、遺言書が発見された」等の場合、手続きのやり直しや、争いの火種となってしまうおそれもあります。

遺言書を作成した際には、相続人等に遺言書の存在・所在を伝えておくか、または、エンディングノート等に遺言のことを書き記しておくのが一般的でしたが、遺言書保管制度では、特定の手続きを踏むことで、便利な通知制度を利用することが可能です。

具体的には、遺言書保管制度を利用した際に、「遺言者が指定した方への通知(指定者通知)」というものの申出をしておくと、遺言作成者が死亡したときに、法務局から、あらかじめ遺言作成者が指定した相続人などに、遺言書が保管されている旨の通知がされるので、相続人等に遺言書の存在を予め伝えておかなかったとしても、「遺言書の存在に気付かない」というリスクを回避することができるのです。

指定者通知の対象範囲等の拡大

指定者通知の申出をする際に、誰に通知するかを遺言者が決めることになりますが、その通知対象者は、遺言執行者か推定相続人に限られていました。

しかし、 法改正により、遺言執行者や推定相続人以外の者も通知対象者とすることが可能となりました。

また、通知対象者として指定できるのは1名に限られていましたが、こちらも改正により、最大3名まで指定することができるようになりました。

ちなみに、既に遺言書保管制度を利用し、指定者通知の対象者を1名指定している場合でも、変更の届出により対象者を追加することができるようになりました。

・通知対象者が遺言執行者や推定相続人に限定されなくなりました。
・通知対象者が1名から3名までとなりました。
・既に通知対象者を指定している場合には、変更の届出により対象者を追加できるようになりました。

参考:法務省ホームページ
https://www.moj.go.jp/MINJI/10.html

おわりに

今回のコラムでは、あらためて遺言書保管制度および指定者通知とは何かを確認しつつ、通知の対象範囲等がどのように変更されるのか解説しましたが、いかがだったでしょうか。

手軽に作成できるのが強みの自筆証書遺言ですが、保管上のリスクや検認の手間等の負担がありますので、それらの自筆証書遺言の弱点をカバーするのが、遺言書保管制度となります。万全を期すには、公正証書遺言がベストですが、シンプルな自筆証書遺言を選択する場合には、遺言書保管制度の利用を強くオススメします。

大切なご家族のために作成した遺言書であっても、それが適切に保管され、必要な際に効力が発揮できなければ意味がありません。「遺言書を作成したけど、保管方法で悩んでいる」、「作成した遺言書が思ったとおりに効力が発揮されるか不安」、「そもそもどうやって遺言書を作成したらいいのか」など、遺言書のことでお困りでしたら、当事務所までご相談ください。長年、遺言書作成のサポートを行ってきた専門の司法書士が、無料相談を実施しております。