第243回相続コラム 相続土地国庫帰属制度で国内第一号の国による引き取り

相続コラム

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第243回相続コラム 相続土地国庫帰属制度で国内第一号の国による引き取り

第243回相続コラム 相続土地国庫帰属制度で国内第一号の国による引き取り

令和5年4月27日からスタートした相続土地国庫帰属制度。相続した不要な土地の所有権を手放し、国に引き渡すことができる制度ですが、先月富山県内の土地が初めて同制度により国に引き取られたことが報道されました。同報道によると、8月末時点で、全国各地の法務局に引き取りの申請が900件近くあったとされます。

今回のコラムでは、相続土地国庫帰属制度について、あらためて制度の概要等をおさらいしたいと思います。

 

相続土地国庫帰属制度とは

土地を相続したけれど、「遠くに住んでいるので利用する予定がない」、「ご近所に迷惑をかけないように維持・管理するのが大変」、「固定資産税の負担が大きい」等の理由から、不要な土地を手放したいというニーズは以前からありました。

また、上記のような土地は、だんだん管理が面倒になって、放置されるようになったり、不要な土地を放置し続けた結果、誰の所有物か不明になってしまうという、いわゆる『所有者不明土地問題』の原因のひとつとなっていました。

土地が管理されないまま放置され、将来、「所有者不明土地」となってしまうことを予防するために、一定の要件の下で、相続した不要な土地を国に手放すことができるようにしたのが、相続土地国庫帰属制度となります。

 

相続土地国庫帰属制度のポイント

相続関連で取得した土地のみが対象

不要な土地を手放すことができるのが相続土地国庫帰属制度の“売り”なのですが、手放すことができる土地は「相続または遺贈」によって取得した土地のみとなります。

どんな土地でも不要であれば手放すことができる制度ではなく、あくまで相続または遺贈(遺言による譲り渡し)によって取得した土地のみが対象となります。

ちなみに土地の完全な所有権ではなく、土地の共有持分であっても構いません。建物は土地とは別の不動産であり、建物を手放すことはできませんし、建物が建っている土地は手放すことができないので注意が必要です。

 

法務大臣による要件審査・承認

不要な土地を手放すのに有効な相続土地国庫帰属制度ですが、土地を手放す際には、法務大臣による要件審査・承認が必要となります。

具体的には、法務局で申請を行い、その後、必要な条件を満たしているか審査され、問題がなければ承認という流れになります。

承認されるためには、満たさなければならない条件があり、下記10項目のいずれにも該当しないことが条件となります。農地や森林でも、下記の項目に該当しなければ、相続土地国庫帰属制度の対象となります。

①建物の存する土地
②担保権または使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
③通路など他人による使用が予定されている土地
④土壌汚染対策法に規定する特定有害物質で汚染されている土地
⑤境界が明らかでないなど、所有権の存否、帰属や範囲に争いのある土地
⑥崖がある土地のうち、管理に過分の費用または労力を要する土地
⑦管理・処分を阻害する工作物、車両、樹木などが地上にある土地
⑧除去が必要なものが地下にある土地
⑨隣接する土地の所有者などと争訟をしなければ使えない土地
⑩その他、管理・処分に過分の費用または労力を要する土地

上記の項目に該当する土地は、国が管理するにあたって過分な費用が必要になる等の理由により、
申請の却下ないし不承認となります。

 

審査手数料や負担金が必要

誤解されている方も少なくないのですが、相続土地国庫帰属制度を利用するには審査手数料や負担金が必要となります。不要な土地を“無料で引き取る”制度ではないので注意が必要です。

法務大臣による要件審査を申請する際には、審査手数料として、土地一筆当たり14,000円が必要となります。なお、審査の結果、申請が却下・不承認となった場合でも、手数料は返還されません。

また、承認後、実際に国に引き取ってもらう際には、管理のために必要となる負担金というものを納付する必要があります。

具体的には、草刈り等の管理が必要な一部の市街地等の土地を除き原則として20万円となります。草刈り等の管理が必要な一部の市街地等の土地については、土地の面積に応じて負担金の額が算定されます。

算定式について詳しくは法務省HPをご覧ください。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html

おわりに

今回のコラムでは、相続土地国庫帰属制度で国内第一号の国による引き取りが報道されたことを受けて、あらためて制度の概要等を解説してみましたが、いかがだったでしょうか。比較的新しい制度ではありますが、社会の高齢化や相続登記義務化等により、より需要が増えるものと思われます。いざ不要な土地を相続した際に備えて、制度のポイントを押さえておきたいところです。

当事務所では、相続・遺言・相続登記などに関する相談を広く受けております。相談は、初回無料ですので、不要な土地を相続してお困りの方はもちろん、相続についてわからないことや、お悩みのある方は、お気軽にご相談ください。