第87回相続コラム 押さえておきたい再婚者の相続問題と相続人の範囲
厚生労働省の平成28年度「婚姻に関する統計」によると、平成27年までの10年間、日本の婚姻総数の中で、夫婦の両方又はいずれかが再婚である婚姻の割合は25~26%で、両方が再婚である割合は9~10%です。多くの方が離婚又は死別後に再婚をしています。今回のコラムでは再婚に伴う相続の問題、特に相続人の範囲について解説します。
再婚者の相続人
配偶者
被相続人の配偶者は常に法定相続人になります。離婚をした元配偶者は長い婚姻期間があったとしても法定相続人ではないのに対し、再婚をした配偶者は婚姻期間の長短にかかわらず必ず法定相続人となります。
離婚した元配偶者は法定相続人ではない
再婚した配偶者が法定相続人
子ども
被相続人の子供も法定相続人です。離婚をした元配偶者との子供は、その後の親権の有無にかかわらず常に法定相続人となります。再婚した配偶者との間に生まれた子供も当然法定相続人となりますが、再婚した配偶者の連れ子については養子縁組をしない限り、法定相続人とはならないことに注意が必要です。また、誤解があることが多いですが、再婚の子供、前婚の子供、縁組した養子、又は認知のみされている非嫡出子も、皆法定相続分に違いはありません。子供の法定相続分は皆平等です。
元配偶者の子ども・再婚した配偶者との間に生まれた子どもは法定相続人
再婚した配偶者の連れ子は法定相続人ではない。
連れ子との間で養子縁組を結ぶと法定相続人になる。
子どもの法定相続分は皆平等。
直系尊属・兄弟姉妹
被相続人に子供がいなければ、直系尊属(両親又は祖父母)が法定相続人となり、子供も直系尊属もいなければ、兄弟姉妹が法定相続人となります。
再婚歴のある被相続人の相続問題
再婚歴のある被相続人の相続で円満な遺産分割協議が難しくなるのは、例えば以下のようなケースです。
再婚した配偶者(とその子供)と、前婚の子供
父又は母の再婚相手と前婚の子供では、やはり対立が避けられない場合があります。前婚の子供が未成年の場合は、親権者が被相続人と離婚した元配偶者であることも多く、なおさら状況は難しくなります。被相続人が死亡する直前の再婚なども紛争が起こりやすいと言えます。
再婚した配偶者と両親又は兄弟姉妹
被相続人の再婚相手と、被相続人の親族の折り合いが良くないことは珍しくありません。前妻の子供が家庭裁判所で相続放棄した結果、関係なかったはずの被相続人の兄弟姉妹が法定相続人となって、かえって協議がこじれてしまう場合も考えられます。
再婚後の実子と連れ子
再婚相手の連れ子と養子縁組をしていないと、実の親子同然に生活していたとしても、連れ子には法定相続分がそもそもないということになってしまいます。
被相続人が離婚や再婚、認知を繰り返している
相続人の確定自体が困難だと、遺産分割協議を始める事もままならない場合があります。
遺言書が争いを未然に防ぐ
遺産紛争は、ご本人が相続人の範囲を正確に把握した上で有効な遺言書を作成しておけば、その多くが避けることができるものです。当事務所でも相続や遺言書についての相談を幅広く承っています。お気軽にご相談ください。
-
前の記事
第86回相続コラム 遺言でいいの?具体例で学ぶ尊厳死宣言 2020.09.04
-
次の記事
第88回相続コラム 菅新総理と相続登記の義務化 2020.09.18