第88回相続コラム 菅新総理と相続登記の義務化
菅新総理誕生
令和2年9月16日、菅義偉氏が第99代総理大臣に就任しました。新元号「令和」の公表を担当し、「令和おじさん」とも呼ばれていた菅新総理ですが、官房長官時代は「所有者不明の土地の対策を協議する関係閣僚会議」の議長も務めていました。
菅総理は2年前、同会議の議長として「土地の所有権や登記制度など財産権の基本的なあり方に立ち返り、土地に関する基本制度についての根本的な検討をする必要がある」、「所有者不明の問題は土地の取引や公共事業の大きな支障だ。国民の経済活動にもさらなる悪影響が出る恐れがある」と述べて、「相続登記の義務化」を含む対策のとりまとめを進めていました。相続登記の義務化については「第48回相続コラム 深刻化する所有者不明の土地問題。相続登記の義務化?」をご参照ください。
不動産登記情報の更新を図る方策
今年7月の同会議に法務省から提出された資料によれば、所有者不明土地の発生を予防する仕組み、不動産登記情報の更新を図る方策として、以下の5つが検討されています。
・不動産を取得した相続人に、相続登記・住所変更登記の申請を義務付ける方向
・相続人からの簡易な申出による氏名・住所のみの報告的な相続人申告登記の新設
・登記漏れ防止のため、登記官が被相続人名義の不動産の目録を証明する制度の新設
・登記所が他の公的機関から死亡情報等を取得して不動産登記情報の更新を図る方策
・外国に居住する所有者に関して、国内の連絡先の登記制度の新設や、外国住所の確認書類の見直し
また、民法の共有制度の見直しも予定されており、不明共有者等に対して公告等をした上で、残りの共有者の同意で、土地の利用を可能にする制度の創設や、共有者が、不明共有者の持分を相当額の金銭を供託して取得するなどして、共有関係を解消する制度の創設が検討されています。
相続登記の義務化が注目される
所有者不明土地等問題は日本の喫緊の課題と言われています。今年度中に「相続登記の義務化」、「不動産登記情報の最新化」を含む法案が提出される予定となっておりその内容が注目されます。具体的な内容が分かり次第当コラムでも取り上げる予定です。
菅新総理のリーダーシップの下で、この問題を解決していくための政策が実現していくことを期待しています。
-
前の記事
第87回相続コラム 押さえておきたい再婚者の相続問題と相続人の範囲 2020.09.11
-
次の記事
第89回相続コラム 相続の基本、親等を徹底図解 2020.09.25