第86回相続コラム 遺言でいいの?具体例で学ぶ尊厳死宣言

相続コラム

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第86回相続コラム 遺言でいいの?具体例で学ぶ尊厳死宣言

第86回相続コラム 遺言でいいの?具体例で学ぶ尊厳死宣言

今回のコラムでは、尊厳死を希望される場合、どうしたらいいのか、具体的事例をもとに「尊厳死宣言」について解説したいと思います。

相談事例

私は、将来重い病気になり自分自身では判断ができなくなった場合は、一切の延命治療等を拒否したいという強い希望を持っています。しかし、日本ではこのようなリビングウィルについての法制度が確立されていないと聞きました。私のこのような希望を表明しておく手段はないのでしょうか?遺言書に記載すればよいのでしょうか?

 

尊厳死宣言とは

このようなご希望に対しては、当事務所では公証役場での「尊厳死宣言」をお勧めしています。尊厳死を望み、延命措置を差し控え又は中止する旨等の宣言を、公証人に公正証書としてもらうことができるものです。

「尊厳死」とは、回復の見込みのない末期症状の患者が、生命維持治療を差し控えまたは中止し、人間としての尊厳を保ったまま死を迎えること、と一般に解されています。生命を短縮する意図を持つ「積極的安楽死」とは全く意味が違います。

 

日本では、尊厳死に関する法律があるわけではなく、このような尊厳死宣言公正証書があったからといって、100%本人の尊厳死が実現するとは限りません。しかし、現在の日本でも「尊厳死の宣言書」を医師に示したことによる医師の尊厳死許容率は9割を超えるとも言われています。ご希望ははっきりと形にしておくべきでしょう。

 

家族の了解が得られている場合は、尊厳死宣言の中に家族が了承している旨も記載をするのが一般的です。尊厳死を実現するためには、できることなら家族の了解を得た上で、尊厳死公正証書を家族に託しておくのが理想といえます。

 

遺言に記載するのは間違い

よく、事例のように遺言書を利用して尊厳死を希望される方もいらっしゃいますが、遺言書の中に尊厳死宣言を記載するのは正しくありません。遺言は遺言者の死亡によって効力が発生するものであるのに対し、尊厳死宣言は存命中の治療等への指示を内容とするもので、性質が全く異なるからです。もっとも、公証役場で公正証書遺言の作成と同時に、尊厳死宣言公正証書の作成をすることは可能ですし、そのようなお話になることは珍しくありません

当事務所では、このような「尊厳死宣言」のサポートも承っております。お気軽にご相談ください。