第251回相続コラム 相続人ではないけど遺産を受け取ることのできる特別縁故者とは

相続が発生すると、相続人が遺産を相続することになりますが、被相続人に相続人がひとりもいないというケースも少なくありません。相続人がひとりも存在しない場合には、亡くなった方の遺産は最終的に国庫に帰属することになりますが、『特別縁故者』として認められると、遺産の全部または一部を受け取ることが可能となります。今回のコラムでは、相続人ではないが、遺産を受け取ることのできる特別縁故者とは何かについて解説したいと思います。
特別縁故者とは
特別縁故者とは、被相続人に相続人がひとりもいない場合に、被相続人と特別の関係(縁故)があったことを理由に、遺産の全部または一部を受け取ることのできる人をいいます。
被相続人に相続人が一切いないということになると、遺産は最終的に国庫に帰属してしまいます。
しかし、法定相続人ではないが、被相続人と特別な間柄にある者がいるならば、その者に遺産を与える方が、国庫に帰属させるよりも、故人にとっても望ましいと言えます。
そこで、法は、一定の要件の下に、特別縁故者に遺産を与えることができる旨の規定を置いているのです。
民法第958条の2第1項
前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
民法第959条
前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。
特別縁故者として認められるための要件
特別縁故者として認められるためには、以下の要件のいずれかに該当する必要があります。
1.被相続人と生計を同じくしていた人
「被相続人と生計を同じくしていた人」の典型例として、内縁関係のパートナーが挙げられます。いわゆる事実婚・内縁関係のパートナーには、相続の権利は与えられていませんが、特別縁故者として遺産を受け取ることは可能です。他には、事実上の養親子、おじ・おば、子の配偶者なども、被相続人と同居し、生計を同じくしていた場合に特別縁故者として認められるケースがあります。
2.被相続人の療養看護に努めた人
被相続人の生前に、献身的に介護を行った人が特別縁故者として認められる場合があります。自宅だけではなく老人ホームや介護施設に通って療養看護した人も特別縁故者と認められる可能性があります。
ただし、介護士や看護師などが、仕事として介護等を行った場合には、既に対価を取得しているので、特別縁故者とは認められないのが原則です。
3.その他被相続人と特別の縁故があった人
上記の1、2には該当しなくても、それに準じるような特別な縁故があった人も特別縁故者として認められることがあります。
どのような関係が、「特別の縁故」といえるのかについては、個別の事案毎に裁判所が判断することになりますが、例えば、「被相続人と特に親しく交流していた友人知人」、「生前に被相続人から、自分が死んだら遺産を譲ると言われていた人」、「生前から被相続人から金銭的な援助を受けていた人」などが考えられるでしょう。
特別縁故者と認めてもらうための手続き
相続が発生すると、相続人は自動的に遺産を相続することになりますが、特別縁故者として遺産を受け取るためには、裁判所に申し立てを行い、特別縁故者として認めてもらう必要があります。
この裁判所への申し立てを行うためには、特別縁故者という制度が、そもそも相続人がいない場合に認められる制度なため、前提として、相続財産の清算人が選任されており、相続人の不存在が確定している必要があります。つまり、相続財産の清算人が選任されていないという状況では、その選任の申し立てを行うところからはじめる必要があります。
特別縁故者として認めてもらい、遺産を受け取るためには、複雑な手続きが必要となるケースが少なくないため、相続の専門家に相談することをオススメします。
おわりに
今回のコラムでは、相続人ではないが、遺産を受け取ることのできる特別縁故者とは何かについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。近年は、少子高齢化や晩婚化、生涯未婚率の上昇等に伴い、いわゆる「おひとりさま」と呼ばれる人たちも増えつつあります。亡くなった方に身寄りがなく、相続人がいないというケースでは、今回のコラムで解説した特別縁故者という制度が活用される場面も増えてくることが予想されます。これからの時代の相続の知識として、是非、特別縁故者という制度を知っておいて頂きたいと思います。
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