第226回相続コラム 複数人のご家族が災害や事故に巻き込まれた場合、相続はどうなる?同時死亡の推定とは何か

相続コラム

相続コラム

相続コラム

相続コラム

第226回相続コラム 複数人のご家族が災害や事故に巻き込まれた場合、相続はどうなる?同時死亡の推定とは何か

第226回相続コラム 複数人のご家族が災害や事故に巻き込まれた場合、相続はどうなる?同時死亡の推定とは何か

災害や事故等に巻き込まれ、複数人のご家族が亡くなってしまった場合、誰が誰の遺産をどのように相続するのでしょうか?災害や事故に遭遇した場合には、亡くなった時期の先後関係が不明な場合も多く、民法の『同時死亡の推定』というルールによって判断されるケースが多くなります。今回のコラムでは、ご家族が災害や事故等に巻き込まれ、亡くなった家族間の死亡時期の先後関係が不明の場合、相続はどうなるのか、『同時死亡の推定』とは何かについて、解説したいと思います。

 

同時死亡の推定とは

複数人が何らかの原因によって亡くなり、亡くなった方の死亡時期の先後が不明な場合には、亡くなった時期を『同時』と考えるというルールが法律で定められています。これが『同時死亡の推定』と呼ばれるルールです。

そして、相続人となるためには、被相続人が亡くなった時点で生存している必要があるため、同時に亡くなった者の間では、相続は行われません

民法第32条の2
数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する

 

同時死亡の推定を具体例で解説

図のような家族構成のケースで、夫と夫の父が乗っている車が交通事故に遭い、ふたりとも亡くなってしまったが、どちらが先に亡くなったか不明という場合、『同時死亡の推定』により、夫と夫の父は同時に亡くなったと考えることになります。夫と夫の父の相続を考える際には、それぞれの相続について、各人がいないものとして考え、法定相続人や相続分を計算することになります。

『同時死亡の推定』を適用し、夫の父の相続について計算すると、相続人は、妻である夫の母が遺産の1/2を相続し、子である夫の兄が1/2を相続することになります。夫の父の相続について、夫はいないものとして計算するので、子の取り分である1/2を、夫の兄が全額相続することになります。

同様に、『同時死亡の推定』を適用し、夫の相続について計算すると、妻が遺産の2/3を相続し、夫の母が1/3を相続することになります。夫の相続について、夫の父はいないものとして計算するので、両親の取り分の1/3を夫の母が全額相続することになります。

 

死亡時期の先後によって相続分が異なる

死亡時期の先後によって、相続分が大きく変わったり、相続分は変わらなくても、実際に取得する遺産の額が変わってくることがあるため、実は、亡くなる順番というのは重要な意味を持ちます。

例えば、仮に上記のケースで、交通事故により夫の父は即死だったが、夫は病院に搬送され、その後亡くなったという場合には、死亡時期の先後が明確なため、『同時死亡の推定』は働かず、亡くなった順番=相続が発生した順番によって、相続人や相続分を考えることになります。

この場合、夫の父が亡くなった時点では、夫は生存しているため、夫も夫の父の相続人となります。その場合、遺産は、夫の母が1/2、夫が1/4、夫の兄が1/4という相続分にしたがって分配されますので、『同時死亡の推定』が及ぶ場合と比べて、夫の兄の取り分は半分に減ってしまいます。そして、夫が夫の父の遺産を相続した分、その遺産が増加しているため、夫の相続人となる妻および夫の母が最終的に取得する遺産は増えることになります。

『同時死亡の推定』というルールは、亡くなった先後関係が不明な場合に、あくまで『推定』するというだけですので、仮に、後にどちらが先に亡くなったのか判明した場合や、先後関係を証明できる場合には、『推定』は覆すことができます。仮に推定が覆えされた場合には、実際の順番通りに相続分を計算しなおすことができます。

 

法律上の推定
少し専門的なお話しとなりますが、法律の条文上、『推定』すると規定されているものは、法律上の推定と呼ばれ、あくまで単に『推定』しているだけであり、反証によって覆すことを法律が認めています。それに対して、法律上、『みなす』と規定されている場合には、「真実どうであるか」に関わらず、法律上、そうみなし、取り扱うという効力が発生し、それを反証によって覆すことは認められません。

 

おわりに

今回のコラムでは、ご家族が災害や事故等に巻き込まれ、亡くなった家族間の死亡時期の先後関係が不明の場合、相続はどうなるのか、『同時死亡の推定』とは何かについて、解説しましたが、いかがだったでしょうか。ご家族が同時に何らかの原因で亡くなるというケースは、稀ではありますが、近年、自然災害等も多く、実際に起こらない話しではありません。ある意味、イレギュラーなケースほど、相続でもめたり、何らかの問題が発生しやすいとも言えますので、いざという時の備えとして、予め知識として知っておくことは有用です。

当事務所では、相続・遺言・相続登記などに関する相談を広く受けております。相談は、初回無料ですので、相続についてわからないことや、お悩みのある方は、お気軽にご相談ください。