第38回相続コラム 相続人不存在の財産について

相続コラム

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第38回相続コラム 相続人不存在の財産について

第38回相続コラム 相続人不存在の財産について

今回のコラムでは、相続人がいない場合の相続財産がどうなるのかについて具体的な事例をもとに解説していきたいと思います。

突然ですが、問題です。

Aさんは従兄弟のBさんと土地を共有していましたが、従兄弟のBさんが急に他界してしまいました。Bさんに相続人はいません。Bさんの共有持分や他の遺産をAさんは取得することができるでしょうか?

法律では亡くなった人の遺産を相続できる相続人を次のように定めています。
常に相続人になる。→配偶者(夫、妻)
第1順位→子(亡くなっていれば孫、ひ孫)
第2順位→直系尊属(父母・祖父母)
第3順位→兄弟姉妹(亡くなっていれば甥・姪)
亡くなった人に配偶者や第1順位から第3順位の人がいない場合、法定相続人はいないこととなります。従兄弟であるBさんが亡くなってもAさんは法定相続人に該当しません。したがって、AさんはBさんの不動産の共有持分や他の遺産を直接相続で受け取ることはできない、ということになります。

では、Aさんが遺産を受け取るにはどうしたらいいのか?

1.特別縁故者

このように法定相続人がない従兄弟がいる場合、Aさんが何もしないでいると遺産を受け取ることはできません。しかし、家庭裁判所で相続財産管理人選任の申立をすると、要件にあえば「特別縁故者」として遺産を相続できる場合があります。
特別縁故者とは
(1) 被相続人と生計を同じくしていた者
(2) 被相続人の療養看護に努めた者
(3) (1)ないし(2)に準じて「特別の縁故があった」人
とされています。
典型的な特別縁故者の例は内縁の妻や夫です。AさんとBさんが従兄弟であるというだけでは必ずしも特別縁故者にあたると家庭裁判所が判断してくれない可能性があります。

仮に同居していたなどの事情でAさんが特別縁故者にあたるとされたとしても、特別縁故者としてAさんがBさんの不動産共有持分や他の遺産を取得するには、相続財産管理人選任の申立をしてから少なくても10ヶ月以上かかります。債権者や受遺者、相続人の不存在を確かめるための公告期間があるためです。

2.不動産の共有者として取得

AさんがBさんの特別縁故者にあたらなかったとしても、そもそも民法は「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。」と定めています。しかし、この条文に基づいてAさんがBさんの不動産共有持分だけを取得しようとしても、相続財産管理人選任の申立をしてから少なくても13ヶ月以上かかります。同様に公告期間があるためです。

やっぱり便利な遺言

相続人のいない従兄弟から遺産を受け取りたい場合は、生前に従兄弟に遺言書を書いてもらうことを強くお勧めします。Bさんが遺言書で「Bさんの全ての財産をAさんに遺贈する」と定めておけば、相続財産管理人を選任する手続等は一切不要です。相続財産の帰属を早期に確定させ、スムーズに相続手続を行うために、遺言書の作成は非常に有効な手段であるといえます。