第248回相続コラム 特別寄与料と寄与分の違いまとめ

相続コラム

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第248回相続コラム 特別寄与料と寄与分の違いまとめ

第248回相続コラム 特別寄与料と寄与分の違いまとめ

前回のコラムでは特別寄与料の判例をご紹介し、前々回のコラムでは寄与分の類型について解説しました。特別寄与料と寄与分、よく似た制度なのですが、いくつか異なる点もあります。今回のコラムでは、 特別寄与料と寄与分の違いをまとめてみたいと思います。

 

特別寄与料と寄与分の大きな違い

被相続人の財産の維持・増加に貢献した相続人に対しては、その貢献に応じて、遺産の取り分を増加させることを法律は認めており、その増加した取り分のことを寄与分といいます。

故人に長年尽くしてきて、その財産の維持・増加に貢献してきた相続人が、他の相続人と何ら相続分が変わらないというのでは、不満に思うのは心情ではないでしょうか。

そこで、法律では、寄与分という制度を設け、財産の維持・増加への貢献度に応じて相続分を増加させることで、相続人間の実質的公平を図っているのです。

それに対して、特別寄与料という制度は、被相続人の介護などを無償で提供することによって遺産の維持・増加に貢献してきた相続人以外の親族が、相続人に対してその寄与度に応じた金銭を請求できるようにした制度です。

相続人以外の親族が、いかに遺産の維持・増加に貢献しようとも、相続人ではない以上、寄与分を主張することはできません。しかし、被相続人の療養看護等を行い、遺産の維持に貢献する人が常に相続人とは限りませんし、そのような者が、一切遺産を受け取ることができないというのでは、あまりに不公平です。

そこで、相続人以外の親族の貢献に報いるために、特別寄与料という制度が創設されたのです。

まとめると、寄与分も特別寄与料も、被相続人の療養看護等を行い、遺産の維持・増加に貢献した者に対して、その貢献に報いる制度という点で共通しています。

しかし、寄与分は相続人が主張できる権利なのに対して、特別寄与料は相続人以外の親族が主張できる権利です。つまり、権利の主体が異なるというのが特別寄与料と寄与分との大きな違いとなります。

民法904条の2
共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、…(省略)…相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

民法1050条
被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。

特別寄与料と寄与分のその他の違い

寄与行為

どのような行為が寄与行為と言えるのかについては、法律の条文に列挙されているのですが、寄与分では「事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法」、特別寄与料では「無償で療養看護その他の労務の提供」と記載されており、特別寄与料の寄与行為の範囲は寄与分の行為の範囲より狭くなっています。つまり、寄与分とは異なり、「財産上の給付」を行ったとしても、特別寄与料の請求はできません

特別の寄与の度合い

寄与分も特別寄与料も、「特別の寄与」をした場合に認められる権利ですが、何が「特別の寄与」と言えるのかについては、両者に違いがあります。

寄与分の対象となる相続人と被相続人の間には、密接な親族関係があるため、相互に扶養義務を負っているのが通常です。ですので、通常のお世話をするのは、むしろ扶養義務から当然とも言えるので、そのような義務を超える顕著な貢献でないと、「特別の寄与」とは言えず、寄与分の主張はできません。

それに対して、特別寄与料を主張する者は、相続人のような義務を負っていないのが通常であり、その貢献に報いるのが相当と認められる程度の貢献で足りると考えられています。

期間制限

特別寄与料の主張は、相続の開始及び相続人を知った時から6ヶ月、または、相続開始の時から1年以内にする必要があります。それに対して、寄与分の主張は、相続開始から10年経過するまで可能です。

以前は、寄与分の主張には、期間制限はなかったのですが、令和5年4月1日から施行された改正法により期間制限が設けられることになりました。

詳しくは、「第218回相続コラム 改正法施行の影響 寄与分や特別受益の主張に期間制限ができました」をご覧下さい。

おわりに

今回のコラムでは、 特別寄与料と寄与分の違いを解説してみましたが、いかがだったでしょうか。 特別寄与料と寄与分は、よく似た制度なため、混同されがちですが、様々な違いがありますので、この機会に違いを整理して頂ければと思います。特に、特別寄与料が主張できる期間は、寄与分と比較すると、相当短いため、注意が必要となります。

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