第249回相続コラム 特別寄与料の相場はいくら?療養看護型を例に解説

相続コラム

相続コラム

相続コラム

相続コラム

第249回相続コラム 特別寄与料の相場はいくら?療養看護型を例に解説

第249回相続コラム 特別寄与料の相場はいくら?療養看護型を例に解説

前回、前々回のコラムで解説してきた特別寄与料。被相続人に対して尽くしてきた相続人以外の親族に認められた請求権であり、自身の貢献に応じた金銭を相続人に請求することができます。この特別寄与料では、いったいどのくらいの金銭を請求できるのでしょうか。今回のコラムでは、特別寄与料の決め方、相場・計算式について、療養看護型を例に解説していきたいと思います。

 

特別寄与料のおさらい

特別寄与料とは、2019年に施行された改正法により新たに創設された制度であり、療養看護等で遺産の維持・増加に貢献した相続人以外の親族に、相続人に対して寄与に応じた金銭を請求できる権利を与えた制度となります。

特別寄与料の最大のポイントは、相続人ではない親族に認められた権利であるという点です。

被相続人の介護等は、相続人ではない親族、例えば『長男の妻』のような方が行うケースも多く、そのような方の貢献に報いるための制度として創設されました。

民法1050条第1項
被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。

 

特別寄与料の決め方

当事者間で決める場合

前提として、当事者間の協議で特別寄与料を決める場合には、当事者同士が納得される金額であれば、いくらであっても構いません。お互いが納得し、合意に至るのが理想であり、当事者が納得しているのであれば、法律がわざわざ介入する必要はないからです。

ただし、特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることはできないとされています(民法1050条第4項)。

例えば、遺産のほぼ全てを遺言によって特定の団体等に寄付しており、相続人の手元には100万円程しか残っていないというような状況の中で、その100万円を超える額の特別寄与料は請求できませんよ、ということです。

民法1050条第4項
特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。

特別寄与料の相場・計算式

当事者間で協議を行うにしても、ある程度の相場は知っておきたいのが人情。

当事者間で協議が調わないときは、家庭裁判所で調停等を行うことになりますが、そこで用いられる特別寄与料の計算式が、ひとつの判断基準となります。

家庭裁判所で特別寄与料を決める場合には、「寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して」、その金額を定めるとされています(民法1050条第3項)。

これだけでは具体的な額がイメージしづらいと思いますので、特別寄与料の典型パターンとも言える療養看護型を例に、裁判所でよく用いられる計算式をご紹介します。

民法1050条第2項
前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から一年を経過したときは、この限りでない。

民法1050条第3項
前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。

 

療養看護型の計算式

一般的に、家庭裁判所では下記のような計算式で療養看護型の特別寄与料を算定していると言われています。

特別寄与料=日当額×療養看護日数×裁量割合

日当額は、介護保険制度を参考に要介護度に応じて5,000~8,000円とされることが多いと言われています。その日当額に介護日数を掛けて、最後に“裁量割合”を乗じることになります。

この裁量割合は、親族には扶養義務があり、また、介護の専門家ではないことから、親族による介護を、職業介護者による介護よりも費用を低額にするために考慮されるものであり、0.5~0.9が乗じられます。

例えば、日当が5,000円、介護日数が1年間(365日)、裁量割合が0.7と判断された場合には、

5000円×365日×0.7=1,277,500円

の特別寄与料になるという計算です。

 

おわりに

今回のコラムでは、特別寄与料の決め方、相場・計算式について、療養看護型を例に解説してみましたが、いかがだったでしょうか。社会の高齢化が急速に進み、また、介護の人手不足が叫ばれる中、親族による介護等が必要な場面も増えてくることが予想されます。特別寄与料について、相続人と話し合いをしようという方は、今回解説した特別寄与料の計算式・相場が参考になるのではないでしょうか。

当事務所では、相続・遺言・相続登記などに関する相談を広く受けております。相談は、初回無料ですので、相続についてわからないことや、お悩みのある方は、お気軽にご相談ください。