第182回相続コラム 相続放棄しても受け取ることができる財産・権利まとめ[保存版]

相続コラム

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第182回相続コラム 相続放棄しても受け取ることができる財産・権利まとめ[保存版]

第182回相続コラム 相続放棄しても受け取ることができる財産・権利まとめ[保存版]

被相続人が多額の負債を残して亡くなってしまったというような場合には、相続放棄を検討することになります。相続放棄をすると、故人の財産に対する一切の相続権を放棄することになるため、プラスの財産を相続することができなくなりますが、借金や負債などのマイナスの財産を相続することもなくなるため、借金などを相続したくない場合には有効な手段となります。今回のコラムでは、相続放棄をしたとしても、受け取ることのできる財産・権利についてまとめたいと思います。

 

生命保険金

相続人ご自身が生命保険の「受取人」として指定されている場合には、たとえ相続を放棄したとしても、生命保険金を受け取ることが可能です。

生命保険金を受け取る権利は、亡くなった方の遺産を構成するものではなく、保険会社との契約によって発生する受取人固有の権利だからです。つまり、相続によって移転する相続財産ではないため、相続放棄をしたとしても、影響は受けないのです。

それに対して、同じ生命保険であっても、解約返戻金や満期返戻金は、解約や満期によって、契約者本人=故人の財産となるため、相続財産を構成します。そのような場合には、相続を放棄すると、故人の遺産=相続財産を受け継ぐことはできないため、そのお金を受け取ることはできませんので注意が必要です。

詳しくは「第177回相続コラム 相続放棄した場合でも生命保険を受け取ることはできるのか」をご覧ください。

 

遺族年金

遺族年金とは、国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受けることのできる年金のことをいいます。遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があり、亡くなった方の年金の加入状況などによって、いずれかまたは両方の年金が支給されます。

遺族年金は、被保険者の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的としたものであり、遺族がその固有の権利にもとづいて受給するもので、被相続人の遺産を構成するとは考えられていません。

つまり、生命保険金と同様、遺族年金を受け取る権利は、相続によって取得すべき権利=遺産ではなく、遺族固有の権利なため、相続放棄をしたとしても、その権利を失うことはありません。

 

未支給年金

年金の受給権者が亡くなった場合に、その方に支給すべき年金であって、まだ支給されていないものを未支給年金といいます。年金は、支給月の前月と前々月分をまとめて後払いされるため、受給権者が亡くなると、通常、未支給の年金が発生します。

故人が受け取るべきであった未支給年金は、故人に帰属していた権利であり、相続放棄をすると相続人が受け取ることはできなくなりそうにも思えますが、こちらも特別な法律の定めがあるため、相続放棄とは無関係に、一定の条件を満たす相続人は、受け取ることが可能です。

未支給年金は、死亡した年金受給者の「配偶者、子、父母、孫、祖父母、または兄弟姉妹等」であり、かつ「死亡の当時に生計が同一だった方」であれば受給することが可能です。

国民年金法第19条1項
年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の親族であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。

 

厚生年金法第37条1項
保険給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の親族であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の保険給付の支給を請求することができる。

 

お墓・位牌・仏壇など

お墓や位牌、仏壇・仏具などは、法律上、祭祀財産と呼びます。これらの祭祀財産については、法律上特別な規定があり、相続財産=遺産とは別の取り扱いとなっております。つまり、相続放棄をしたとしても、祭祀財産はその効果を受けずに、それらを受け継ぐべき人が引き継ぐことができます。

民法第897条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、…、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。

例えば、慣習上、代々、祖先のお墓や位牌などを、長男が継いできたのならば、たとえ長男が相続放棄をしたとしても、自身の亡き父から、祭祀財産を引き継ぐことができます。

 

その他相続放棄しても受け取れる財産・権利

上記の他にも、相続放棄したとしても受け取れる財産・権利として、健康保険に加入していた方が亡くなった際に、その方の埋葬を行った人に支給される葬祭費・埋葬料や、勤めていた会社の規定によって遺族に支払われる死亡退職金等があります。葬儀の際の香典も、相続放棄した方が喪主であれば受け取ることができます。

ポイントとしては、故人の遺産を構成するものではなく、遺族に対して支給される、遺族固有の権利は、基本的には相続放棄によって影響を受けることはなく、そのまま受け取ることが可能です。