第170回相続コラム 遺産分割協議との関係から見る「遺言がないと困る理由」

相続コラム

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第170回相続コラム 遺産分割協議との関係から見る「遺言がないと困る理由」

第170回相続コラム 遺産分割協議との関係から見る「遺言がないと困る理由」

近年、終活ブームなどの影響もあり、遺言への関心も高まっておりますが、実際に「遺言を書いた」という方は、まだまだ少ないのが現状です。「遺言は元気なうちに書く」のが鉄則ですが、つい先延ばしにしてしまうというケースも少なくありません。今回のコラムでは、遺言がないとなぜ困るのか、遺産分割協議と遺言の関係から解説したいと思います。

 

遺言と遺産分割協議の関係

遺言がある場合の相続

相続が発生し、故人が遺言を残していた場合、その遺言に従って遺産を分配することになります。遺言の内容にもよりますが、通常は、誰に何を相続させるのかが遺言によって記されているため、その通りに分配することで足ります。

遺言がない場合の相続

相続が発生し、故人が遺言を残していない場合には、自動的に相続人が財産を相続することにはなりますが、その段階では、遺産は相続人間の抽象的な共有財産となるだけで、具体的に誰が何をどのくらい相続するのかは不明な状態となります。

そこで、抽象的な共有状態を解消し、具体的に誰が何を相続するのかを決めるためには、遺産分割協議という相続人同士の話し合いを行い、そこで遺産の最終的な帰属を決める必要があります。

また、遺言はあったとしても、その内容として、記載漏れの財産があったり、または、抽象的な持分のみを指定している場合、例えば「全財産の半分を妻に、残りの半分を長男に譲る」などの記載があるのみでは、どうやって財産を半分に分けるのかを、別途、遺産分割協議で決める必要があります。

 

遺言と遺産分割協議まとめ

相続発生の際、遺産をどのように分配するのかは

■遺言があれば遺言に従う
■遺言がない場合、または、遺言に不十分な点がある場合には遺産分割協議で決める

のが原則となります。

一応、法律上は、遺言があったとしても、遺言と異なる内容の遺産分割協議を行うことは可能ですが、相続人以外の受遺者(遺言によって財産を譲り受ける者)がいる場合には、その者の利益を無視して遺産分割協議をすることはできません。

 

遺言がなければ遺産分割協議が必要

相続が発生し、故人の遺言がない場合には、相続人間の遺産分割協議が必要となります。

正確には、遺産分割協議自体は、法律上、必須のものとして要求はされていませんが、凍結された故人の預金口座の凍結を解除したり、不動産の名義変更をしたり、また、相続税の申告の際に有利となる様々な控除を受けるためには、遺産分割協議の結果を記載した遺産分割協議書の提出が必要となるため、事実上、遺産分割協議が必須となります。

遺言があれば、遺産分割協議書に代えて、その遺言を提出することになります。

 

遺産分割協議は大変

遺産分割協議が有効に成立するためには、相続人全員の合意が必要となります。

ひとりでも同意が得られなかったり、反対する者がいると、その協議は無効となってしまうため、「相続人全員の合意」を形成するのは、想像以上に大変です。

特に下記のようなケースでは、手続き的負担が大きくなります。

■相続人の数が多い
■相続人同士が遠方に住んでいる
■相続人の中に重い病気を患っている者がいる
■相続人の中に認知症の者がいる
■相続人の中に未成年者がいる
■相続人の中に行方不明者がいる

また、およそ「協議」というものは、お互いの意見・主張をすり合わせる作業が必要になるので、お互いの利害が衝突し、争いに発展する可能性を常に秘めていると言えるため、合意どころか争いに発展するケースも少なくありません。

遺言がないとなぜ困るのか

「遺言がないとなぜ残された家族が困るのか」、その答えは、遺言がないと、遺産分割協議が必要となってしまい、相続人に手続き的負担を負わせることになり、また、遺産分割協議は相続人間の争い=「争続」に発展してしまう危険性を秘めているからと言えます。

遺言を残すと遺産分割協議を省くことができるため、
相続人の手続き的負担を軽減できる
相続人間の争い=「争続」を未然に防ぐことができる