第81回相続コラム 賢く利用する遺言保管制度 – 通知の利用

相続コラム

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第81回相続コラム 賢く利用する遺言保管制度 – 通知の利用

第81回相続コラム 賢く利用する遺言保管制度 – 通知の利用

今年7月10日から始まった自筆証書遺言保管制度を賢く利用するために、同制度を利用した場合に活用すべき2つの「通知」制度について解説します。

 

関係遺言書保管通知

遺言者の死後、相続人や受遺者、遺言執行者が法務局で「遺言書情報証明書」の交付を受けたり(遺言書証明情報について詳しくは「第71回相続コラム おさえておくべき保管された遺言に関する手続き」をご参照ください)、遺言書の閲覧申請をしたりすると、法務局からその他の全ての相続人に対して遺言書が保管されている旨の通知がされます。これを「関係遺言書保管通知」と言います。これにより、法定相続人全員が、遺言書の存在やその内容を知る平等な機会を得ることになります。法定相続人であれば、遺言者と疎遠にしていた甥や姪であっても、又は遺言者の死亡の事実も知らずにいた遺言者の前妻の子供であっても、当然通知の対象に含まれることになります。遺言書の存在やその内容を法定相続人の一部にだけ秘密にすることはできません

しかし、この「関係遺言書保管通知」は、相続人等の誰かが遺言書の閲覧等をしなければ、遺言者に相続が発生しただけでは発送されません。相続人が誰も法務局に保管された遺言書の存在自体を知らなければ意味がないものになってしまう恐れがあります。

 

関係遺言者保管通知 まとめ

遺言書証明情報の交付、遺言書の閲覧申請をすると通知される。
法務局から、法定相続人全員に通知される。
相続人の誰かが閲覧申請等しなければならない。相続が発生したからといって発送されるものではない。

 

死亡時の通知

遺言書の内容が実現されるためには、まず相続人の誰かが遺言書の存在自体を知る必要があります。そこで、「関係遺言書保管通知」を補う「死亡時の通知」制度があります。遺言者は遺言書の保管申請の際、「死亡時通知の申出」をすることができます。この申出をすると、遺言者が死亡したときに、法務局からあらかじめ遺言書が指定した相続人、受遺者、遺言執行者などのうち1名に対して、遺言書が保管されている旨の通知がされることになります。

通知の宛先として指定できるのは1名だけですが、遺言書を保管されていることを確実に伝えたい人をあらかじめ指定しておくと、本人の死後に法務局から自動的に通知を発送されます。相続人である家族だけでなく、遺言執行者となる第三者を指定することも可能です。この制度を利用すれば、必ずしも家族に遺言書を作成してある旨を伝えておく必要がない、とも言えるかもしれません。法務省によると「死亡時の通知」については、令和3年度以降頃から本格的に運用が開始するとされています

 

死亡時の通知

・遺言書の保管申請の際に「死亡時通知の申出」をすることができます
・申出をすると、遺言者が死亡したときに、法務局からあらかじめ指定した人に遺言書が保管されている旨の通知がされる
・指定できるのは1名。相続人である家族だけでなく、遺言執行者となる第三者を指定することも可能
・運用の開始は令和3年度以降頃から

 

死亡時の通知の長所を活かす

特に「死亡時の通知」制度は、公正証書遺言にもない自筆証書遺言保管制度だけの長所と言えます。保管申請の手数料は3900円と比較的低額であり、高齢者が遺産の配分を決める定型的な遺言書だけに限らず、自分が突然亡くなってしまったときに備えて、若い方が家族への感謝のメッセージを遺言書に残しておく、という利用の仕方も十分に考えられます。

当事務所でも遺言書に関する相談を幅広く承っております。お気軽にご相談ください。