第80回相続コラム 具体例で学ぶ遺産分割方法の指定(清算型)
当事務所では遺言についてのご相談が増えてきていることから、今回も引き続き遺言の書き方のコツを具体例とともに紹介したいと思います。遺産分割方法を遺言で指定する際のポイントを解説していきます。
遺言の相談例
自分が亡くなった時に遺産分割であまり関係が良くない家族が揉めることがないようにしたいと考えています。亡くなった後は自宅も処分してもらって構いませんし、預金もそのとき残高がいくらになっているか分からないので、各自の割合だけを決めておきたいのです。可能なら一部をお世話になった公益財団法人に寄付もしたいという希望もあります。
遺産分割方法の指定
今回の遺言相談例のようなケースでは、具体的に誰に何を相続させるというよりも、誰にどのくらいの割合で財産を相続させるのかを指定することが必要になります。
遺言書では、相続財産一つ一つについて、それぞれ相続する相続人を指定していく方法だけでなく、法定相続分とは異なる割合で各自の相続分を指定することも可能です。
しかし、例えば「長男Dには遺産の20%を与える」とだけ書かれているような遺言では、残りの80%をどのように分割するのかがはっきり分からず、かえって争いになりかねません。
遺産全体について、誤解が生じる余地がない記載をすることが重要です。
遺言書では、法定相続分とは異なる割合で各自の相続分を指定することが可能。その際、遺産全体について、誤解が生じる余地がない記載をすることが重要。
遺産分割方法の指定例
第○条 遺言者は、遺産分割協議において、遺言者の有する財産の全部を換価した換価金から遺言者の一切の債務を弁済した残金を、次のとおり分配するよう分割の方法を指定する。
妻 A(昭和○○年○○月○○日生) 10分の6
長女B(平成○○年○○月○○日生) 10分の1
次女C(平成○○年○○月○○日生) 10分の1
長男D(平成○○年○○月○○日生) 10分の1
2 換価金の残金の10分の1を公益財団法人E(住所:○○県○○ 市・・・)に遺贈する。
第三者の遺言執行者を指定
このような遺言書の場合は第三者の遺言執行者を指定しておくことをお勧めします。上記の遺言の内容を実際に実現するためには、遺産の換価、清算、分配を行う必要がありますが、相続人のうちの一人がこれを行うのは適切でないケースが多くあるからです。
被相続人や相続人と血縁関係等がない第三者の専門家が遺言執行者になると、相続人の事務作業の負担を大きく減らすだけでなく、手続の透明性が確保されて相続人間の無用なトラブルを防ぐことにつながるという大きなメリットがあります。
当事務所でも遺言書に関する相談を幅広く承っております。お気軽にご相談ください。
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