第84回相続コラム 具体例で学ぶ自筆証書遺言の封印

相続コラム

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第84回相続コラム 具体例で学ぶ自筆証書遺言の封印

第84回相続コラム 具体例で学ぶ自筆証書遺言の封印

遺言に関する相談を多く頂いておりますが、今回はよくある自筆証書遺言の封印について、具体的事例をもとに解説したいと思います。誤って開封した場合や、自筆証書遺言を残す際のポイントを解説します。

 

自筆証書遺言の封印のよくある相談事例

先日亡くなった父親の遺品等を整理していたところ、封がされた封筒がありました。中身が分からなかったので開封してみたところ、中には父親が生前に書いたと思われる自筆の遺言書が入っており、とても驚きました。私が勝手に開封してしまった父親の遺言書は無効なものになってしまったのでしょうか?

 

封印された自筆証書遺言の扱い

自筆証書遺言の多くは封印されて封筒などに入っています。相続が発生した後、遺言書(公正証書遺言を除く)を保管していた人や遺言書を発見した人は、遺言書を家庭裁判所に提出して、検認を請求しなければいけません(民法1004条1項)。そして、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いがなければ、開封することができません(民法1004条2項)。遺言書を家庭裁判所に提出することを怠って、家庭裁判所ではないところで遺言書の封印を開封してしまった人には、5万円以下の過料の制裁があります(民法1005条)。自筆証書遺言の検認手続について詳しくは「第49回相続コラム 知らないと罰せられることも!?遺言の検認」をご参照ください。

 

検認を怠ったとしても無効になるわけではない

とはいえ今回のケースのように分からずに開封してしまったものは仕方がありません。現状のまま、それ以上手を付けずに、家庭裁判所に遺言書を提出するのが良いでしょう。遺言書を発見したときの状況や、なぜ開封してしまったか、その後どのようにしていたかなどを、ありのまま正直に申告すべきです。少なくとも封印されていた遺言書が開封されてしまったからと言って、それだけで遺言書が無効になることはありません

 

遺言書を残す際は検認に配慮

遺言書を残す人は、この例のように家族が誤って遺言書を開封してしまうことがないように、中に入っているのが遺言書であることを封筒に明記すべきでしょう。そもそも遺言書をどのように保管するか、誰かに預けるべきなのか等々は、慎重に決めなければなりません。

自筆証書遺言については、やはり先月から開始した法務局の保管制度の利用をお勧めします。過去に書き上げた自筆証書遺言がある方は、今からでも保管申請をすることが可能です。この制度で保管がされていれば、封印やその開封については何も気にする必要はなく、家庭裁判所での検認手続も必要ありません

当事務所では遺言書に関する相談を幅広く承っております。お気軽にご相談ください。