第79回相続コラム 具体例で学ぶ遺言の書き方 – 予備的文言

相続コラム

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第79回相続コラム 具体例で学ぶ遺言の書き方 – 予備的文言

第79回相続コラム 具体例で学ぶ遺言の書き方 – 予備的文言

令和2年7月10日から法務省の自筆証書遺言保管制度がスタートしました。それに関連して遺言を作成する際のコツを、具体例とともに紹介したいと思います。今回は予備的文言の活用が主なテーマとなります。

遺言についての相談内容

妻子がいない私(A)は、自分の死後、自宅の土地建物を弟(B)ではなく妹(C)に全て相続させたいと考えて、そのような遺言書を作成しました。ところが最近妹が重い病気にかかり入院してしまいました。もしも妹が私よりも先に亡くなってしまった場合、私の自宅は、私の遺言書の内容をふまえて、全て妹の子(D)に代襲相続されるのでしょうか?

 

遺言で指定した財産の相続人が、遺言者よりも先に亡くなってしまっていた場合

遺言で指定した財産の相続人が、遺言者よりも先に亡くなってしまっていた場合、遺言書の該当部分の解釈をどのようにするかという問題があります。結論から言うと、この相続人を代襲相続することになった人がいても、原則としてAさんの遺言書で指定された権利を承継することはできません。根拠は以下の最高裁判例です。

最高裁平成23年2月22日判決

「『相続させる』旨の遺言は,当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には,当該『相続させる』旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから,遺言者が,上記の場合には,当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り,その効力を生ずることはないと解するのが相当である。」

 

冒頭のケースの場合

冒頭のケースでAさんよりも先にCさんが亡くなってしまった場合、Aさんの遺言書の該当部分は意味のないものとなってしまいます。Aさんの死後、Aさんの自宅についてはAさんの相続人であるBさんとDさんで遺産分割協議をしなければなりません。BさんとDさんの法定相続分は2分の1ずつです。当然にDさんがAさんの自宅を全て相続することはできないのです。

 

遺言の予備的文言

Aさんが、自分よりも先にCさんが亡くなってしまった場合はDさんに自宅不動産を相続させたいと考えているのであれば、その希望を以下のように遺言書に明示しておく必要があります。万が一に備えて予備的に記載する以下のような文言を「予備的文言」といいます。

第1条 遺言者は、遺言者が所有する下記不動産をC(昭和××年×月×日生まれ)に相続させる。

第2条 万が一、遺言者より前に又は遺言者と同時にCが死亡していた場合、遺言者は前条記載の不動産をD(平成△△年△月△日生まれ)に相続させる。

遺言書の文言は,遺言者やそのご家族の方々の状況やご希望等を詳しく検討して慎重に作成することが求められます。当事務所でも遺言書に関する相談を幅広く承っております。お気軽にご相談ください。