第178回相続コラム 会社経営者が遺言をのこすべき理由-株式・事業用資産の分散

相続コラム

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第178回相続コラム 会社経営者が遺言をのこすべき理由-株式・事業用資産の分散

第178回相続コラム 会社経営者が遺言をのこすべき理由-株式・事業用資産の分散

残されたご家族が安心して暮らすため、財産の承継を円満に行うためには、遺言が重要な相続対策ツールとなります。特に会社経営者の方は、事業承継が絡むため、遺言書の作成は必須とも言えます。今回のコラムでは、会社経営者の方が遺言をのこすべき理由として、基礎的な知識である株式や事業用資産が分散することの危険性について解説したいと思います。

 

株式の分散

株式会社の経営者は、多くの場合、自社のオーナーでもあり、会社の株式を保有していることがほとんどです。株式を上場していなかったとしても、株式には財産的価値があるため、当然、相続の対象となります。

遺言がなければ、その株式は、相続人間で遺産分割協議で分配されるところ、結果的に、会社の株式が分散し、会社の重要な意思決定が行えなくなったり、また意図しない親族に会社を乗っ取られる危険性もあります。

株式とは、いわば会社の所有権を細分化した権利なため、株式の過半数を取得されると、役員を交代されてしまうこともあります。

例えば、会社を営んでいた方が亡くなり、その相続人として、3人の息子がいたとします。長男が会社を継ぐ予定だったのですが、先代が遺言を残していなかったため、遺産分割協議で、先代が保有していた100%の株式を、兄弟それぞれ1/3ずつ継ぐことになったとします。

そうすると、長男は会社の株式を1/3しか保有していないので、会社の重要な意思決定はもちろん、自身を役員に選任することすら単独ではできません。仮に、次男と三男の両者が結託すると、両者合わせて2/3の株式を保有しているため、長男を追い出し、自分達で会社を経営することも可能となってしまいます。

 

事業用資産の分散

本来、会社=法人の資産と、経営者個人の資産は、全く別物ですが、中小企業の場合には、経営者自身が会社オーナーであることも多く、会社の資産と経営者の資産との区別が曖昧なケースがあります。

相続によって会社の資産が相続人の手に渡るということはありませんが、経営者個人の資産は相続の対象となり相続人に承継されます。ですので、事実上、会社の資産として事業に供していた故人の資産が、会社を受け継ぐべき人以外の手に渡り、事業に支障が生じる危険性があります。

例えば、経営者個人の土地を、会社の工場用地として利用していたとします。その際に、明確に会社として、経営者個人と借地契約等を結んでいた場合は別ですが、特にそのような契約もないまま、経営者が亡くなり、その相続人が土地を相続すると、その相続人と会社との間では、特に土地を利用させる法的根拠がないため、土地の利用料の支払を求められたり、最悪、立ち退きを要求されたりする危険性があります。

 

経営者の相続対策の基本

事業承継を円滑に行うためには、事業を承継する人に株式を集中させることと、会社の資産と経営者個人の資産で曖昧な点があれば、それらの区別をしっかりと行い、必要な契約等を整理することが大切です。また、事業用の資産についても、事業を承継する人に集中させるべく対策を講じることが必要です。

具体的には、生前に株式等を譲渡したり、または、遺言で、承継者に必要な資産を相続させる対応が必要です。

事業承継が絡む相続対策については、税金対策はもちろん、株式や事業に必要な資産を特定の者に集中させる都合上、遺留分対策なども併せて考える必要がありますので、予め、事業承継に詳しい専門家に相談することをおすすめします。

当事務所は、事業承継を含めた相続対策について、広く相談を受けております。初回無料にて相談を受けておりますので、お気軽のご相談ください。