第72回相続コラム 具体例で理解する不動産を遺贈する際のポイント

相続コラム

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第72回相続コラム 具体例で理解する不動産を遺贈する際のポイント

第72回相続コラム 具体例で理解する不動産を遺贈する際のポイント

遺言書で自分の財産を他人に与える処分行為を一般に遺贈といいます。遺言で贈与するので遺贈です。今回のコラムでは、遺言で不動産を贈与するというよくある事案について、具体例をもとに、どのような手続(不動産登記)が必要になるのか、遺言執行者が指定されているか否かで場合分けして解説したいと思います。

 

[事案]
妻子はいないが法定相続人となる兄弟が3人いるAさんが内縁の妻Bに自宅不動産を遺贈する場合を例として、Aさんの死後、以下のパターンでそれぞれどのように遺贈の不動産登記を申請するか解説します。

このような事案での最大のポイントは、Aさんとしては、自身の内縁の妻Bが自分の死後も安心して今までどおりの暮らしができるようにしたいし、Bさんの負担もなるべく減らしたいということです。

 

遺言書で遺言執行者の指定がなかった場合

Aさんの相続人全員(3人の兄弟)とBさんが共同申請で遺贈の不動産登記を申請する必要があります。遺言執行者がいない以上、亡くなったAさんの代わりに申請を行うのは相続人である兄弟全員であり、不動産を譲りうけるBは、Aの兄弟全員と共同して手続を申請する必要があります。

実際の手続を司法書士に依頼する場合であっても、Aさんの3人の兄弟全員に印鑑証明書を用意してもらい、司法書士への委任状にそれぞれ実印で押印をしていただく必要があります。Aさんの遺言や遺贈に納得していない相続人がいると、協力してもらうのが非常に困難になる可能性があります。

もしも相続人のうち1人でも協力が得られない場合は、Bさんは家庭裁判所に遺言執行者選任の申立をしなければいけません。

 

遺言書でBさんが遺言執行者に指定されていた場合

Bさんが遺言執行者に指定されていれば、不動産登記手続に必要な書類はBさんが一人で用意することができます。司法書士に依頼すれば、不動産登記はスムーズに完了します。

しかし、遺言執行者には重たい義務や責任があります(「第69回相続コラム 家族の負担が増える!?注意したい遺言執行者の指定」をご参照ください)。Bさんは3人の法定相続人に対して遺言執行者就任の連絡や完了の報告を怠ることはできないことに注意が必要です。

 

遺言書で第三者が遺言執行者に指定されていた場合

遺言執行者とBさんが共同申請で遺贈の登記を申請することになります。このケースでも不動産登記はスムーズに完了するはずです。

遺言執行者は不動産登記だけでなく、相続人に対する連絡や報告も責任をもって行いますが、Bさん自身が相続人に連絡する必要はありません

 

オススメの遺言執行者の指定

3つのパターンを解説しましたが、まずは遺言執行者がいるのか否かによって、手続の難易度が変わってきます。遺言執行者は遺言執行に関する様々な権限を持っているので、手続が非常にスムーズです。相続人が多い場合や、余計な争いごとを増やさないようにする観点からは、遺言執行者を指定することをオススメします。

また、遺言執行者に特定の誰かを指定する際には、遺言執行者が大きな権限と重たい義務や責任を持つことになることをふまえ、指定される人の負担に注意する必要があります。

不動産の遺贈を含む遺言書を作成する場合は、遺言執行者に司法書士を指定することをお勧めします受遺者となる方の負担を大きく減らすことができるだけでなく、手続の透明性が確保されて、相続人や受遺者の無用なトラブルを防ぐことにつながる場合もあります。

当事務所でも遺言作成や遺言執行に関する相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。