第200回記念相続コラム 相続土地国庫帰属制度
- 2022.11.28
- 相続と不動産
- 対象者, 相続土地国庫帰属制度, 第200回記念, 負動産
早いもので、このコラムも第200回となりました。
第1回が2018年12月12日だったので、約4年が経ったことになります。その間、相続を取り巻く環境は大きく変わり、スタートを控えた新制度もチラホラ。
今回はその中から、2023年4月27日に始まる相続土地国庫帰属制度についてお伝えします。
法務省のホームページでも「相続した土地を国が引き取る制度がスタートします!」と大々的にPRされているこの制度。一体どんなものなのでしょうか。
悩ましい『負動産』問題
不動産は、高い金額で取引されるものばかりではありません。
需要が少ないため売却が難しく、固定資産税や管理費ばかりが所有者の負担となり、『負動産』などと揶揄される物件がたくさんあります。
法務省の調査によれば、土地を所有する世帯のうち「土地を国庫に帰属させる制度の利用を希望する世帯」の割合は約20%とされています。
相続土地国庫帰属制度の流れ
相続土地国庫帰属制度の手続きは、
「相続または遺贈により土地を取得した者からの承認申請」
↓
「法務大臣による要件審査・承認」
↓
「申請者が10年分の土地管理費相当額の負担金を納付」
↓
「国庫帰属」
という流れで進みます。
相続土地国庫帰属制度の対象者
相続土地国庫帰属制度の対象となるのは、相続又は遺贈により土地を取得した人です。売買や贈与で土地を取得した人は、この制度を利用することができません。
ただし、例えば夫婦で1つの土地を2分の1ずつ共有する形で購入した後、夫の持分2分の1を相続で取得した妻は、土地全体についてこの制度を利用することができます。
相続土地国庫帰属制度の要件
相続土地国庫帰属制度の開始により、土地の管理コストの国への転嫁や、土地の管理を疎かにするモラルハザードの発生が懸念されています。そのため、この制度の利用には一定の要件が設定され、法務大臣の審査を要することに。
具体的には、次の10項目のいずれにも該当しないことが要件です。農地や森林でも、これらの項目に該当しなければ、相続土地国庫帰属制度の対象となります。
①建物の存する土地
②担保権または使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
③通路など他人による使用が予定されている土地
④土壌汚染対策法に規定する特定有害物質で汚染されている土地
⑤境界が明らかでないなど、所有権の存否、帰属や範囲に争いのある土地
⑥崖がある土地のうち、管理に過分の費用または労力を要する土地
⑦管理・処分を阻害する工作物、車両、樹木などが地上にある土地
⑧除去が必要なものが地下にある土地
⑨隣接する土地の所有者などと争訟をしなければ使えない土地
⑩その他、管理・処分に過分の費用または労力を要する土地
相続土地国庫帰属制度の負担金
相続土地国庫帰属制度の申請者が負担する負担金の具体的な金額が気になるところですが、法務省によれば「本制度によって国庫に帰属する土地については、粗放的な管理(巡回のみ)で足りる土地が中心と考えられることから、巡回に要する実費を踏まえ、負担金の額は、一部の市街地などを除き、20万円とする」とのこと。
なお、一部の市街地などについては、必要となる管理行為を踏まえ、土地の面積に応じて負担金の額を算定することになります。
相続土地国庫帰属制度のご相談は司法書士へ
「不要な土地をどうすればいいのか?」というお悩みをお持ちの方にとって、相続土地国庫帰属制度の利用は、重要な選択肢になるはず。「制度が始まったらすぐに申請したい」という方は、早めに専門家に相談することをお勧めします。
当事務所では、不動産の相続について広くご相談を受け付けております。対応する司法書士は相続手続きのエキスパート。初回相談は無料なので、不動産の相続で気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
第200回を迎えた相続コラム。今後も、皆さんが相続で困らないための情報を発信していきますので、何卒よろしくお願いいたします。
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