第260回相続コラム 知っておきたい相続登記の3つのパターン

相続コラム

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第260回相続コラム 知っておきたい相続登記の3つのパターン

第260回相続コラム 知っておきたい相続登記の3つのパターン

相続登記が義務化される令和6年4月1日まで2ヶ月を切りました。相続した不動産の名義変更である相続登記は、相続人が不動産をどのように取得したのかによって、いくつかのパターンに分かれます。今回のコラムでは、相続登記の代表的な3つのパターンについて解説したいと思います。

 

そもそも相続登記って何?

相続登記とは、土地や建物などの不動産の所有者が亡くなった場合に、その不動産の名義人を相続人に変更する手続きのことを言います。

不動産の所有者は、外から一見しただけではわかりません。例えば、そこに家があれば「その家に住んでいる人が所有者じゃないの?」と思われる方も少なくありませんが、住んでいる人は借りて住んでいるだけかもしれませんので、必ずしも住んでいる人が実際の所有者とは限りません。また、建物ではなく土地の場合、土地だけを見て、外形から誰が所有者であるか判別するのはほぼ不可能と言えます。

そこで、法律では、不動産の所有者が誰であるのかについて、法務局という役所に、登記簿という記録簿を設け、誰がどの不動産の所有者であるか等について、記録し管理しているのです。

つまり、登記簿上、所有者として記録されている名義人が亡くなった場合には、相続によって相続人に所有権が移転するため、その名義の変更を申請する手続きが相続登記ということです。

なお、不動産の名義人が亡くなった際に、法務局が勝手に名義変更をしてくれるわけではないので、相続によって所有権を取得した相続人等が、自ら登記申請する必要があります。また、この登記の申請は、令和6年4月1日から義務化されるため、相続により不動産を取得したことを知った後、3年以内に登記を申請しないと、罰則の適用があります。

 

相続登記の代表的な3つのパターン

相続登記は、『相続』によって、不動産の所有権が相続人に移転した場合の名義変更手続きではありますが、『相続』と一口にいっても、様々な相続パターンがあります。代表的な相続のパターンとして、「遺言書によって相続するパターン」、「遺産分割協議によって相続するパターン」、「法定相続分通りにそのまま相続するパターン」の3つのパターンがあります。他にも遺産分割調停や審判によって相続するというパターンもありますが、特殊なケースとなるため、今回のコラムでは割愛します。

 

遺言書によって相続するパターン

遺言書に、特定の相続人に不動産を相続させる旨の記載がある場合には、その遺言書に従って、指定された相続人が不動産を相続するのが原則となります。

なお、遺言書と異なる内容の遺産分割協議を行うことも、法律上は有効となります。詳しい解説は「第186回相続コラム 遺言と異なる内容の遺産分割協議はできるのか 注意点も合わせて解説」をご覧ください。遺言書と異なる内容の遺産分割協議を行った場合には、後述する「遺産分割協議によって相続するパターン」に該当することになります。

遺言書によって相続するパターンでは、遺言書によって不動産を取得した相続人は、他のパターンとは異なり、他の相続人の関与を必要とすることなく、単独で相続登記を申請することができます。

また、申請の際の提出書類も、他のパターンとは異なり、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等は必ずしも必要ではなく、被相続人が亡くなったことおよび不動産を取得する者が相続人であることのわかる戸籍謄本等で足りますし、提出する相続人の戸籍謄本も、相続人全員の戸籍謄本は不要となり、相続人の戸籍謄本は遺言書によって不動産を取得する相続人の戸籍謄本のみが必要となります。

 

遺産分割協議によって相続するパターン

遺産分割協議とは、どのように遺産を分配するか相続人全員で行う話し合いのことをいいます。遺産分割協議が有効に成立すると、それによって最終的な遺産の帰属が決まるため、遺産に含まれる不動産についても、その相続人が確定します。

遺産分割協議によって相続するパターンでは、相続登記の申請書類として、遺産分割協議書の提出が必須となります。また、遺産分割協議自体、相続人全員の合意が必要条件となるため、漏れなく相続人全員が参加しているということを証明するために、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を漏れなく提出する必要があります。戸籍を遡って相続人を調査しないと、「実は隠し子がいた」、「生き別れの兄弟姉妹がいた」等により、遺産分割協議に参加すべき相続人が変わってくるおそれがあるからです。

 

法定相続分通りにそのまま相続するパターン

相続が発生後、遺言がなく、遺産分割協議も成立していない段階では、遺産は法定相続分に従って相続人間の共有状態となります。

遺産に含まれる不動産についても、相続人間の共有状態となるため、その状態の権利関係で、そのまま相続登記の申請をすることができます。

申請の際には、当然、遺言書や遺産分割協議書の提出は不要となります。ただ、相続人が誰であり、法定相続分の割合はいくらなのかを確定させるためには、漏れなく正確に相続人を調査する必要があるため、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を漏れなく提出する必要があります。

法定相続分による相続登記は、保存行為の一種と考えられるので相続人の1人からの申請で手続きが可能です。

法定相続分通りに相続登記を申請した後に、遺産分割協議が成立した場合には、再度、登記の申請が必要となり、ケースによっては、登録免許税等の費用が二重にかかってしまうおそれがあるため注意が必要です。また、不動産の共有状態が長く続くと、後のトラブルの原因となる危険性がありますので、しっかりと遺産分割協議を行うことをオススメします。

不動産を共有する際のリスクについて詳しくは
第43回相続コラム 意外と知らない!?不動産を共有名義にすることのリスク」をご覧ください。

 

おわりに

今回のコラムでは、相続登記の代表的な3つのパターンについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。相続登記のパターンが異なると、申請者や申請に必要な書類が変わってくるため、どのようなパターンがあり、自分はどのパターンに該当するのか、しっかりと見極めることが大切となります。申請者や必要書類の詳細は、また別のコラムで詳しく解説したいと思います。

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