第146回相続コラム キャッシュレス決済の時代に知っておきたい電子マネーの相続について

相続コラム

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第146回相続コラム キャッシュレス決済の時代に知っておきたい電子マネーの相続について

第146回相続コラム キャッシュレス決済の時代に知っておきたい電子マネーの相続について

キャッシュレス決済の時代が到来したことにより、近年、電子決済手段が年々増加しており、なんらかの電子マネーを日常的に利用している方も多いのではないでしょうか。今回のコラムでは、電子マネーの契約者・利用者が亡くなった際に、電子マネー(その貨幣的価値)は相続の対象になるのかについて解説したいと思います。

 

電子マネーとは

電子マネーとは、お金の価値をデータ化し、カードやスマートフォンなどにお金としての機能を持たせたものを言います。

代表的なものとして、SuicaやPASMOなどの交通系ICカード、nanacoやWAONなどのような小売系ICカードがあります。また、最近流行の「○○Pay」などのPayサービスも含まれます。

 

電子マネーの支払方式と相続の関係

電子マネーの支払方式にはいくつかの種類がありますが、相続で問題となるのは「プリペイド型の電子マネーのチャージした残高が相続の対象になるのかどうか」という点です。

プリペイド型の電子マネーでは、事前にICカードやアプリに現金をチャージしておき、チャージした残高の分だけ使用できるという仕組みになっています。そのため、ある人が現金を電子マネーにチャージした後に亡くなった場合、既にチャージした残高(貨幣的価値を持つ電子情報)が相続人に相続されるのか(相続人が払戻しを受けられるのか)どうかが問題となります。

他の支払方式として、ポストペイ型(後払い型)やデビット型(即時支払型)というものがありますが、ポストペイ型の場合はクレジットカード会社と提携し、後日、クレジットカード会社経由で支払の請求がくるため、“チャージした残高”というものはなく、同様に即時支払型のデビット型も、決済と同時に支払った分が銀行から直接引き落とされる仕組みになっているため、相続で問題にすべき“チャージした残高”はありません。(ポストペイ型の電子マネーとして、例えば、iDやQUICPayなどがあります。)

代表的なPayサービスであるPayPay、LINEPay、楽天ペイ、メルペイなどは、利用の際に、プリペイド方式とポストペイ方式を選択可能なため、同じPayサービスを利用していたとしても、相続を問題にすべき残高が存在する場合とそうでない場合があるので注意が必要です。

 

電子マネー(チャージした残高)は相続できるのか

電子マネーの利用者・契約者が亡くなった場合に、電子マネーにチャージした残高は、相続人であるご家族が相続できるのか、または、払戻し等を受けることができるのでしょうか。

電子マネーにチャージした残高を相続できるかどうかは、法律上明確に定まっているわけではなく、デジタル遺産に関する法整備やガイドラインも不十分なため、実際に相続できるかどうかは、各サービスの提供主体との契約・利用規約によって区々なのが現状です。

例えば、(株)セブン&アイ・ホールディングスが発行するnanacoカードは、規約上、利用者の死亡時には残高が失効し、現金による払い戻しにも非対応とされています。

nanaco/会員規約
https://entry.nanaco-net.jp/entry_all/web_agr.html

 

QRコード決済サービスで有名な「PayPay(ペイペイ)」も、以前は、利用者が亡くなると、残高は失効するとしていましたが、規約が改定され、チャージされた残高を相続することが可能になりました。

PayPay残高利用規約
https://about.paypay.ne.jp/terms/consumer/rule/balance/

 

個別に相談すると救済される可能性もあります

契約者・利用者が亡くなった際の規定がない場合には、運営主体に個別に問い合わせて、払戻し等の相談をすることになります。また、規約上、残高は失効する旨定められていたとしても、個別に相続人が問い合わせると、払戻しに応じてくれる運営主体も少なくありません。上記のPayPayも以前は規約上、残高は失効するとされていましたが、実際には相談されると払戻しに応じていたことから、規約自体を改定したという経緯があります。デジタル遺産に関する取り扱いは、発展途上とも言えるので、故人の電子マネーの残高がある場合には、あきらめずに、運営主体に問い合わせてみることをオススメします。

また、相続の際に、相続人が運営に問い合わせるなどのアクションを起こす前提として、どんなキャッシュレスサービス、電子マネーを被相続人が利用していたのか把握することが必要となりますので、エンディングノートなどに利用サービスやその内容を遺しておくことが大切となります。