第171回相続コラム 遺言書を認知症になる前に書くべき理由

相続コラム

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第171回相続コラム 遺言書を認知症になる前に書くべき理由

第171回相続コラム 遺言書を認知症になる前に書くべき理由

遺言書は、残された家族同士が争ってしまう「争続」を未然に防ぎ、また、相続発生時の手続き的負担を大きく軽減する重要なツールです。「遺言書はいつまでに書けばいいのか?」という質問をよく頂きますが、その答えは「認知症になる前」です。今回のコラムでは、なぜ認知症になる前に遺言を残す必要があるのか解説したいと思います。

 

認知症発症後の遺言は無効になるリスクが高まる

遺言が有効に成立するためには、法律上、遺言に求められる条件を満たす必要がありますが、大前提として、遺言作成時に、自身の行為がどういうものか、その結果として、どのようなことが起こるのかを判断する能力が必要とされます(法律用語では「遺言能力」といいます)。

遺言能力を欠く状況で作成された遺言は、たとえ法律上要求される形式を満たしていたとしても、無効となってしまいます。

認知症と一口に言っても、その程度は様々であるため、認知症になっているからといって、必ずしも遺言能力がないと判断されるわけではありませんが、認知症発症後に作成された遺言は、無効と判断されるリスクが高くなります。

 

認知症発症後の遺言は「争続」を誘発するリスクが高まる

認知症発症後に作成された遺言については、常に「遺言作成時に遺言能力がなかったのでは?」と疑義が生じることになり、せっかく残された家族のために遺言を作成したはずなのに、かえって遺言能力の有無をめぐる争いの火種を残すことにもなりかねません。

残された家族の負担を軽減し、家族同士の争いを防ぐために遺言を残したのに、遺言が原因で家族同士が争ってしまっては本末転倒です。

 

認知症発症後の遺言は
■遺言能力がないと判断され、無効となってしまう危険性が高い
■遺言能力の有無をめぐって相続人間で争いが発生する危険性がある

 

認知症になる前に遺言を書く

厚生労働省が発表する推計によると、2025年には認知症の有病者数が約700万人となり、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症を発症する試算となっています。

認知症予備軍も含めると、さらにその数は増えていくことが予想されます。認知症はもはや“他人事”ではなく、“自分事”としてしっかりと対策をすることが必要になります。

厚生労働省:認知症の人の将来推計について
https://www.mhlw.go.jp/content/000524702.pdf

 

遺言を書くこと自体にデメリットはありません。特に自筆証書遺言は、紙とペンとハンコがあれば、今すぐに書くことが可能です。遺言は何度書き直しても構いません。遺言の内容が気に入らなかったり、気が変わったら、書いた遺言を撤回し、書き直せばいいのです。「認知症になる前に」とは言いましたが「できるだけ早く遺言書を書いておく」ことをオススメします。