第137回相続コラム 遺言執行を第三者に任せる遺言執行者の復任権とは

相続コラム

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第137回相続コラム 遺言執行を第三者に任せる遺言執行者の復任権とは

第137回相続コラム 遺言執行を第三者に任せる遺言執行者の復任権とは

遺言書が見つかり、自分が遺言執行者に指定されていたけれど、「遺言執行なんて、どうしたらいいのかわからない」、「難しい手続きは専門家に任せてしまいたい」という方も多くいらっしゃると思います。今回のコラムでは、遺言執行を第三者に任せる、遺言執行者の復任権について解説したいと思います。

 

そもそも遺言執行者とは

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人です。遺言が執行される時には、遺言を書いた本人は亡くなっていますから、遺言の内容を自らの手で実現させることはできません。そこで、遺言を書いた本人の代わりに遺言の内容を実現させる人が必要となります。これが遺言執行者です。

遺言執行者は、通常、遺言によって指定されます。そして、遺言執行者は、法律よって与えられた様々な権限により、遺言に書かれた内容を実現するために必要な手続きを行うことになります。

遺言執行者は、法律により様々な権限が付与されていますが、反面、公正な職務の執行を確保するために様々な義務も負っています。

遺言執行者が負う義務について詳しくは「第68回相続コラム 遺言執行者がすべきことって何?」をご覧ください。

 

遺言執行者の復任権

遺言執行と一口に言っても、以前は、主な遺産といったら銀行預金や持ち家・土地だったのが、近年では、株式や社債などの有価証券や暗号化資産を保有していたり、またインターネットの普及によってネットバンキング等の利用者も増え、その保有形態も複雑化しているため、その執行手続きも年々複雑化しています。また、高齢化社会の影響により遺言執行者として指定された相続人等も高齢化しており、遺言執行の手続きを行うこと自体が困難という状況も少なくありません。

そこで、法は、遺言執行に関して、復任権というものを用意し、遺言執行の任務を第三者に行わせることができるようにしています。実際には、弁護士や司法書士などの専門家に委ねることが多くなります。

 

法改正前後の遺言執行者の復任権

実は、令和元年の法改正前の旧民法では、遺言執行者の復任権を原則として認めておらず、遺言執行者が病気等の事情があり、第三者に遺言執行を任せてもやむを得ない事情がある場合や遺言自体に復任を認める旨の記載がある場合にのみ、例外的に復任が認められていました。

旧法では、遺言は故人の最終意思であり、慎重な処理を必要とすることや、故人が特にその人を信じて任せているという点を重視していたためです。

しかし、相続人等の高齢化の影響や、相続財産の多様化・複雑化により、遺言の執行を専門家の手に委ねたいというニーズが強くあったため、改正後の民法では、原則、自由に遺言執行者は復任することができ、例外的に、遺言で復任を禁止していた場合のみ、復任が認められないものとしました。旧法と新法では、原則と例外が逆転したことになります。

 

旧民法第1016条
遺言執行者は、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることができない。ただし、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは、この限りでない。

 

新民法第1016条
遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

 

遺言書の日付に注意

上記の改正法は、令和元年7月1日以降に作成された遺言について適用されます。つまり、遺言の日付が令和元年7月1日以降であれば、新法適用下にあるため、遺言執行者の復任が当然認められることになります。もちろん、新法下にあっても、遺言の内容に復任禁止の旨の記載があれば、復任はできません。

また、遺言の日付が改正法施行前であったとしても、遺言の内容に遺言執行者の復任を認める旨の記載があれば、復任が可能です。

 

遺言執行について悩んだら専門家に相談

遺言執行に関しては、年々手続きも多様化・複雑化しており、また、遺言執行者は様々な法的義務を負うことになります。遺言執行を安心・確実に行うためには、復任権を利用し、専門家の手に任せることをオススメします。

当事務所では、将来の遺言の執行まで見据えた遺言書作成のご相談や、遺言執行者に代わって相続に関する手続きを丸ごとサポートするサービスもご用意しております。また、旧法下で作成された遺言執行者のサポートも、履行補助者という立場でお手伝いすることも可能です。遺言の作成や遺言執行でお悩み・お困り事がありましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。