第179回相続コラム 会社経営者の相続対策 意外な落とし穴について解説

相続コラム

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第179回相続コラム 会社経営者の相続対策 意外な落とし穴について解説

第179回相続コラム 会社経営者の相続対策 意外な落とし穴について解説

会社経営者の方にとって、相続対策は重要です。相続対策をせずにオーナー経営者の方が亡くなってしまうと、残された家族間で誰が事業を引き継ぐのか等で争いになるだけではなく、事業承継について争いが発生することにより、会社の従業員や取引先にも迷惑をかける危険性があります。今回のコラムでは、会社経営者の方の相続対策について、見落としがちな注意点について解説したいと思います。

 

会社の株主は誰なのか

会社の株式の多くは、通常、創業者が保有しており、または、相続対策等によって、事業を承継すべき創業者の一族の手に渡っているのが一般的です。

ただし、注意したいのが、1990年の商法改正前に設立された株式会社の株式です。

1990年の商法改正前は、会社設立時に発起人が7人必要とされ、その発起人は株式を引き受ける必要がありました。つまり、1990年の商法改正前に設立された会社には、オーナー経営者以外にも、少数株主が存在することになります。

株主は、たとえ保有株式数が少なかったとしても、その保有する株式数に応じて、会社の経営に参加する権利を法的に有することになるため、例えば、先代が亡くなったことをきっかけに会社の経営に口を出してきたり、また、保有株式を会社に高額で買取るよう請求してくるケースも少なくありません。

先代経営者と発起人は、通常、両者の間に何らかの信頼関係があるが故に発起人を引き受けているため、先代が経営している間には、特に問題は起こらなかったとしても、経営者の交代や、または、発起人の方が亡くなり、その相続人が株式を取得したことにより、その者が口を出してくるというケースもあります。

円滑に事業を承継し、承継後の経営をスムーズに行うためには、生前から、株式を整理しておくことが大切になります。具体的には、議決権を制限する種類株式を発行したり、可能であれば株式を会社で買い取ったり、または、株式を併合して、保有株式数が1株未満となるように調整するなどの対策を行います。

 

名義株に注意

上記のような問題は、いわゆる名義株の場合には、より問題が複雑化します。通常、会社に資金の払い込みをした出資者が株主となりますが、出資はしていないのに、株主名簿上、株主となっている者がいることがあります。そのような名義だけの株式を名義株といいます。

上で、発起人のお話をしましたが、発起人として7人という人数を集めるのは簡単ではなかったため、「発起人を揃えるために、名義だけを借りていた」というケースも少なくありません。

先代経営者が亡くなったことにより、後継者が設立当時の経緯を知らないことに乗じて、名義株主が会社の経営に口を出してきたり、名義株主の相続人が当時の経緯を知らずに、株式の買取を請求してくるといった危険性もあります。

名義株かどうかの判断には、設立当時の事情をよく知る創業者の存在が不可欠であり、また、名義株主との交渉をスムーズに行うことができるのも創業者自身なため、生前からの株式の整理が非常に大切になります。

 

取締役の人数に注意

2005年以前の旧商法では、株式会社の取締役は3人以上必要でしたが、2005年に成立した新会社法の下では、取締役の人数規制はなくなり、取締役を1人とすることも可能になりました。

取締役がオーナー経営者の1人だけという会社で、その唯一の取締役が亡くなった際には、たとえ株式や事業用資産の承継等、相続対策を行い、後継者がしっかりと決まっていたとしても、手続き上、面倒なことが発生するので注意が必要です。

取締役が1人の会社では、その者が代表権を有する取締役として、会社の代表者となります。会社の代表者が亡くなってしまうと、会社が機能しなくなるため、新たに代表者を選任する必要があり、その選任は株主総会によって行うことになりますが、株主総会を開こうにも、それを招集すべき取締役も存在しなくなるため、いくら次の代表者となる後継者が決まっていたとしても、その手続きを進めることができなくなってしまう場合もあります

このような場合には、株主が裁判所に申し立てを行い、株主総会を招集するための「仮取締役」を選任してもらう必要がでてくるなど、手続き的な負担が大きくなり、その間の会社の意思決定を行えなくなるなど、事業そのものがストップしてしまう危険性があります。

取締役がオーナー経営者1人という会社では、上記のような場合に備えて、後継者を予め取締役に選任しておくことが大切となります。後継者が取締役となっていれば、仮にオーナー経営者が亡くなったとしても、役員が一人も存在しないという状態が回避され、後継者自らが取締役として株主総会を招集し、自身を代表取締役に選任することができます。

 

事業承継で困ったら専門家に相談

経営者の方の相続対策については、株式や事業用資産の承継だけではなく、会社自体に関わる法律問題等にも目を配る必要がありますので、思わぬ落とし穴にはまらないよう、事業承継に詳しい専門家に相談することをおすすめします。

当事務所は、事業承継を含めた相続対策について、広く相談を受けております。初回無料にて相談を受けておりますので、お気軽のご相談ください。