第173回相続コラム 認知症対策って何をすればいいの?任意後見制度について解説

相続コラム

相続コラム

相続コラム

相続コラム

第173回相続コラム 認知症対策って何をすればいいの?任意後見制度について解説

第173回相続コラム 認知症対策って何をすればいいの?任意後見制度について解説

認知症になってしまうと、銀行口座が凍結されたり、自宅を売却(売買契約)して施設の入居費用を捻出するといった行為も、法律上必要とされる判断能力がないとして、行えなくなるなどの問題が発生してしまいます。超高齢化社会の到来により、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症を発症すると言われており、決して他人事ではありません。今回のコラムでは、認知症対策の代表的な手段である、任意後見制度について解説したいと思います。

 

任意後見制度とは

任意後見制度とは、判断能力が十分にある元気なうちに、予め自ら選んだ信頼できる人(任意後見人)と、自身の代わりにしてもらいたい財産管理や介護サービス締結等の療養看護に関する事務を契約で決めておき(任意後見契約)、実際に、認知症になった際には、その後見人に、契約した内容の財産管理等をお願いする制度を言います。

簡単に言うと、まだ元気なうちに、認知症に備えて、あらかじめ自らが選んだ信頼できる人に、代わりにしてもらいたいことを契約で決めておく制度と言えます。

 

任意後見制度のメリット

任意後見制度の最大のメリットは、誰が後見人となるのか、信頼できる人を任意に選ぶことができるということです。

認知症を既に発症してしまい、凍結された口座の解除や契約の締結を行うためには、成年後見人という自身に代わって法律行為を行う者を、家庭裁判所に選任してもらう必要があります。これを法定後見制度と言います。

法定後見制度によって選任された成年後見人も、認知症の方、本人に代わって、様々な契約行為ができますが、後見人の選任は家庭裁判所が行うので、誰が後見人となるかは裁判所の判断次第となってしまいます。ケースによっては、弁護士や司法書士等のご家族以外の専門家が就任することもあり、また、一度後見が開始されると、本人の判断能力が回復するか、本人が亡くなるまで続くため、トータルで計算すると相当額の後見人報酬が必要となり、本人の財産がその分減少していくことになってしまいます。

任意後見制度によって後見人を選ぶ場合は、ご自身が信頼できる人を自由に選ぶことができます。また、報酬についても、任意後見契約の際に自由に額を決めることができますので、ご家族との契約であれば、報酬をゼロにすることも可能です。

ただし、任意後見の場合であっても、任意後見が開始する際には、任意後見人を監督する任意後見監督人が選任され、その監督者に対する報酬は発生します。

 

任意後見制度のメリット
任意後見制度の後見人は、本人が予め任意に選ぶことができる
ご家族を後見人とすると報酬をゼロにすることも可能

 

任意後見契約は認知症になる前に行う必要がある

任意後見制度を利用するには、任意後見契約を後見人となる者と結ぶ必要があります。そして、契約行為を行う以上、契約を結ぶ本人に契約の内容等を理解し判断する能力が必要となるため、既に認知症になっている方は、任意後見制度を利用することはできません

任意後見制度を利用される場合には「元気なうちに」任意後見契約を結んでおく必要があるのです。

 

任意後見制度を利用するには

任意後見制度を利用するには、後見人となってくれる人と任意後見契約を結ばなければなりませんが、任意後見契約は、誰が後見人となるか決める重要な契約なため、公証人に公正証書を作成してもらうことが法律上義務付けられています。

任意後見契約を締結すると、公証人の嘱託により、法務局に登記がなされます。実際に後見契約の効力が発生した際には、法務局で登記事項証明書を取得することで、任意後見人は自らの代理権の存在を証明することができます。

 

任意後見監督人選任により後見開始

任意後見契約は、契約した段階では効力は発生せず、本人の判断能力が低下した後に、任意後見人となる者やご家族が、家庭裁判所に任意後見監督人選任の申し立てをすることによって、任意後見が開始します。

任意後見契約は、認知症などにより判断能力が低下した場合に備えて結ばれるものなため、契約段階では効力は発生しません。

任意後見人は、本人により選任された後見人ではありますが、後見が必要な時点では、本人による監督は見込めないため、後見人を監督する者が必要であり、その監督人は家庭裁判によって選任されます。そして、その監督人が選任されると、任意後見契約の効力が発生し、任意後見が開始することになるのです。

任意後見監督人選任の申し立ては、本人とそのご家族や任意後見人となる者が行うことができます。本人以外が申し立てを行う際には、原則として、本人の同意が必要となります。本人が意思表示できない場合には、同意は不要になります。

 

任意後見制度まとめ

認知症対策としては、他にも家族信託(民事信託)という有効な手段がありますが、今回のコラムでは、それと双璧をなす任意後見制度について解説しました。難しい内容についても、触れていますが、押さえておきたい大事なポイントは、任意後見制度は「もしもの場合の後見人をご自身が信頼できる人を自由に選ぶことができる」という点と、それは「認知症になる前にしか利用できない」という点です。

参考:厚生労働省の任意後見制度について解説ページ
https://guardianship.mhlw.go.jp/personal/type/optional_guardianship/

 

当事務所では、相続や遺言についてはもちろん、認知症対策として、任意後見制度や家族信託についてのご相談も広く行っております。初回相談は無料となっておりますので、認知症対策について詳しく知りたい方や、将来の財産管理に不安のある方は、お気軽にご相談ください。