第134回相続コラム 相続対策の定番、暦年贈与について解説

相続コラム

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第134回相続コラム 相続対策の定番、暦年贈与について解説

第134回相続コラム 相続対策の定番、暦年贈与について解説

いかに相続税を節約するのかという相続対策。その対策として定番化している手段のひとつが「暦年贈与」と呼ばれるもの。今回のコラムでは、暦年贈与の活用方法とその注意点について解説したいと思います。

 

相続対策と生前贈与

相続対策として、生前贈与をされている方は多くいらっしゃいます。生前贈与とは、相続とは異なり、亡くなる前=生きているうちに財産を他人に無償で譲り渡すことをいいます。

生前贈与を行うことで、相続税の課税対象となる財産を減らすことができます。また、相続税は、相続される財産が多ければ多いほど、その税率が高くなるので、課税対象の財産を減らすことによって税率も下げることができます。

生前贈与によって、相続税の課税対象を減らすことにより、相続税は節約できますが、贈与の際には贈与税という税金がかかります。税金対策として生前贈与を行ったとしても、多額の贈与税が課税されてしまうと本末転倒になってしまいます。ですので、相続対策として生前贈与を行う際には、相続税と贈与税のバランスを考慮する必要があります。

 

暦年贈与とは

暦年贈与は、生前贈与による相続対策のひとつで、毎年1月1日から12月31日までの一年間(暦年)の贈与額が110万以下であった場合に、贈与税がかからないというしくみを使った贈与の方法です。

 

贈与税の計算式
(1年間に贈与でもらった財産-110万円)×税率=贈与税額

 

簡単に言うと、毎年、110万円以下という贈与税が課税されない範囲で贈与を行い、相続財産を減らすという方法になります。コツコツと長年かけて暦年贈与を行うと、将来の相続税を大幅に節約することが可能です。毎年贈与するというシンプルなものなため、相続税対策の中でも比較的取り組みやすく、定番化している対策なのもうなずけます。

 

暦年贈与の活用

暦年贈与は、贈与税の110万円の非課税枠を利用した節税なのですが、この110万円の非課税枠というのは「もらう側」から見た話です。財産を渡す「あげる側」としては、何人に贈与しても「もらう側」の非課税枠には影響がありません

ですので、例えば、3人のお子さんと7人のお孫さんがいる場合、それぞれに110万以下の財産を贈与すると、相続財産を一気に1100万円減らすことが可能です。もちろん贈与税は課税されません。

また、暦年贈与は、他の贈与税の控除制度と併用が可能です。

例えば、「贈与税の配偶者控除」との併用も可能です。「贈与税の配偶者控除」とは、婚姻期間が20年以上の夫婦間に認められている贈与税の優遇制度です。「居住用不動産」や「居住用不動産を買うためのお金」を夫婦間で贈与する場合は、最高で2,000万円まで贈与税はかからないという制度です。暦年贈与の110万円と併用することで合計で2,110万円まで贈与税はかからないということになります。

 

暦年贈与の注意点

定期贈与とみなされるリスク

年間の贈与額が110万円以下であれば贈与税は課税されませんが、毎年同じ金額の贈与を受け続けると「定期贈与」とみなされ、年間の贈与額が110万円以下であっても贈与税が課税されてしまう場合があります。

定期贈与とは、毎年一定の金額を贈与することが決まっている贈与のことです。定期贈与の場合、定期贈与の取り決めをした年に「定期金に関する権利」の贈与を受けたとして贈与額の合計金額に対して贈与税が課税されます。

例えば、毎年110万円を10年に渡って贈与するという取り決めがおこなわれた場合、取り決めをおこなった年に1,100万円の定期金に関する権利の贈与を受けたとして1,100万円に対して贈与税が課税されます。

暦年贈与が定期贈与とみなされないように、例えば、毎年贈与契約書を作成して贈与を行うなどの対策が必要です。毎年の贈与額を変えたり、贈与時期を変えることも有効です。

 

死亡前3年以内の贈与は相続税の対象

死亡前3年以内に故人から相続人に対しておこなわれた贈与については、死亡時に相続人の相続財産に加算され、相続税が課税されてしまいます。死亡前3年以内の贈与を加算する規定のことを生前贈与加算と言います。つまり、死亡前3年以内の生前贈与は、相続財産とみなされて相続税が計算されます。

ただし、生前贈与加算は、相続人への贈与が対象ですので、それ以外の人への贈与では戻されて計算されることはありません。

例えば、祖父の相続税対策で子に暦年贈与をする場合、子は相続人ですから相続開始前3年以内の子に対する贈与財産は相続税の課税対象になります。しかし、孫は相続人ではありませんから孫に対する3年以内の贈与財産が相続税の計算に含まれることはありません。

 

相続対策は専門家に相談を

相続対策として効果的な暦年贈与ですが、正しい方法で贈与しないと、定期贈与とみなされ思わぬ税金が課税されてしまったり、想定どおりの節税効果が見込めない場合もあります。当事務所では、税理士と連携して、相続税対策の各種シミュレーションを行ったり、効果的な相続対策のご提案が可能です。相続や遺言のみならず、相続対策でお悩みの方は、お気軽に当事務所へご相談ください。