第254回相続コラム 遺産の中から自分名義の預金通帳が出てきた場合、それは誰のものになるのか?

相続コラム

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第254回相続コラム 遺産の中から自分名義の預金通帳が出てきた場合、それは誰のものになるのか?

第254回相続コラム 遺産の中から自分名義の預金通帳が出てきた場合、それは誰のものになるのか?

遺産を整理していると、その中から自分名義の預金通帳が発見されるというケースは少なくありません。被相続人が「子や孫のために口座を作り、コツコツとお金を貯めていた」というのが、その典型的なケースです。今回のコラムでは、遺産の中から、自分名義(被相続人の子や孫名義)の預金口座が発見された場合、その口座の預金は誰のものになるのか、注意点も併せて解説したいと思います。

 

名義預金は誰のものか

被相続人が、子や孫の名義で口座を開設し、その口座にお金を貯めているというケースは非常に多く見られます。このように、実質的には被相続人が所有・管理している預金ではあるが、形式的には子や孫などの他人名義となっている預金のことを『名義預金』と言います。

名義預金は、単に名義が他人名義になっているというだけで、実質的には被相続人が所有・管理していた預金ですので、その預金は被相続人の遺産、つまり相続財産を構成すると考えられています。

相続財産を構成するということは、遺産分割の対象となりますので、名義人が、「これは私名義の預金だから、私が貰っていくね」等と言って、勝手に預金を持っていくことはできません。また、相続財産を構成するということは、相続税の課税対象となりますので、注意が必要です。

よくある勘違いとして、「子や孫名義の預金口座にお金を貯めていた場合には、それは子や孫の財産となっているので、相続税はかからない」と思われている方も少なくありませんが、いわゆる名義預金は相続財産として、相続税の課税対象となります。

■名義預金は、相続財産を構成するため、遺産分割の対象となります。
■名義人が勝手に預金を自分のものにすることはできません。
■相続財産である以上、相続税の課税対象となります。

 

名義預金か否かの判断基準

名義預金かどうかの判断基準について、何か法律で特別な定めがあるわけではありませんが、蓄積された裁判例から、概ね以下のような基準で判断されると考えられています。

1.預金の原資を出しているのは誰か
2.その預金口座を運用・管理しているのは誰か
3.預金から生じる利息などの利益を取得しているは誰か
4.被相続人と名義人と運用管理者との関係
5.名義人となった経緯

 

例えば、被相続人が子や孫の将来のために、お金を貯めていたというケースで、預金の原資は被相続人が出しており、印鑑や通帳も被相続人が管理していたという場合には、それは名義預金と判断される可能性が非常に高くなります。

他方で、例えば、親である被相続人が、親権者として、子名義の預金口座を開設し、お小遣いやお年玉を預金し、管理していたという場合には、預金の原資は名義人本人のものであり、運用・管理していたのは被相続人ではあるが、それは親権者として行っていたにすぎず、預金から生じる利息を受け取っていたのも名義人本人であると考えられるので、名義預金には該当しないと判断される可能性が高いと言えます。

被相続人が、子や孫名義の預金口座を開設し、名義人に内緒にしたまま、そこにコツコツとお金を貯めていたという場合、素朴な疑問として、それは名義人である子や孫のために貯めていたのだから、それは子や孫に贈与する趣旨ではないかと思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。すなわち、名義預金は、名義人に贈与されたものとして、名義人のものとなっているという考えです。

確かに、そのような被相続人の意思を汲み取ることはできますが、贈与というものは、法律上、贈与する者と贈与される者との契約であり、両者の合意が必要となりますので、贈与する者の一方的な意思のみでは、贈与契約は成立しません。被相続人が名義人に内緒でお金を貯めていたというのは、お話としては美しいのですが、名義人が贈与された事実を知らない以上、合意があったとは認められず、贈与契約は成立しないことになります。

 

おわりに

今回のコラムでは、遺産の中から、自分名義(被相続人の子や孫名義)の預金口座が発見された場合(いわゆる『名義預金』が発見された場合)、その口座の預金は誰のものになるのか、注意点も併せて解説しましたが、いかがだったでしょうか。

遺産の中から、名義預金が発見されるというのは、よくあるケースです。名義が自分名義になってるからという理由で、遺産分割協議を経ずに、勝手に自分のものにしたり、相続税の計算から除外しないように注意が必要です。

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