第205回相続コラム 年金に加入している方が亡くなった際に遺族がもらえる「遺族年金」とは

相続コラム

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第205回相続コラム 年金に加入している方が亡くなった際に遺族がもらえる「遺族年金」とは

第205回相続コラム 年金に加入している方が亡くなった際に遺族がもらえる「遺族年金」とは

家計を支える一家の大黒柱の方が亡くなると、残されたご家族としては、その後の生活に不安を覚えるのではないでしょうか。今回のコラムでは、そうした不安を払拭する遺族年金について解説したいと思います。

 

遺族年金とは

遺族年金とは、国民年金または厚生年金保険等に加入していた方が亡くなった場合に、その方によって生計を維持されていた遺族が受け取ることのできる年金のことをいいます。

遺族年金は、一家の大黒柱が亡くなった際に、残された家族が路頭に迷わないように、生活を保障する目的で支給されます。

亡くなった方の年金の納付状況・遺族年金を受け取る方の年齢・優先順位などの条件をすべて満たしている場合、遺族年金を受け取ることができます。

 

「生計を維持されていた」(生計維持要件)

遺族年金は、残された家族の生活保障がその目的なため、亡くなった方によって生計を維持されていた遺族が支給対象となります。

「生計を維持されていた」と言えるためには、以下の条件を満たす必要があります。

・同居している、もしくは別居していても仕送りなど受けていること。
・前年の収入が850万円未満であること、または所得が655万5千円未満であること。

上記の条件を満たさないと、「生計を維持されていた」とは言えないため、遺族年金の支給対象ではなくなります。

 

「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」

日本の公的年金制度は、いわゆる「2階建て構造」となっているため、遺族年金についても同様に「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」との 2階建てになっています。

1階部分である国民年金に加入していた方の遺族に支給される「遺族基礎年金」と2階部分である厚生年金に加入していた方の遺族に支給される「遺族厚生年金」があります。亡くなった方の年金の加入状況などによって、いずれかまたは両方の年金が支給されます。

一般の会社員や公務員の方は、2階建ての年金制度に加入していることになるため、そのご遺族の方は、一定の要件を満たすと、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の両方を受給できることになります。

 

遺族基礎年金

受給要件

次の1から4のいずれかの要件を満たしている方が死亡したときに、遺族に遺族基礎年金が支給されます。

1.国民年金の被保険者である間に死亡したとき
2.国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が
死亡したとき
3.老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき
4.老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

1および2の要件については、死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。ただし、死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。
3および4の要件については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限ります。

 

支給対象者

遺族基礎年金の支給対象者は下記のようになります。

亡くなった方に生計を維持されていた
・子のいる配偶者
・子

子とは18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方をさします。子のある配偶者が遺族基礎年金を受け取っている間や、子に生計を同じくする父または母がいる間は、子には遺族基礎年金は支給されません。

 

年金額(令和4年4月分から)

■子のある配偶者が受け取るとき

777,800円+子の加算額

■子が受け取るとき(次の金額を子の数で割った額が、1人あたりの額となります。)

777,800円+2人目以降の子の加算額
1人目および2人目の子の加算額 各223,800円
3人目以降の子の加算額 各74,600円

 

遺族厚生年金

受給要件

次の1から5のいずれかの要件を満たしている方が死亡したときに、遺族に遺族厚生年金が支給されます。

1.厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
2.厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
3.1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき
4.老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき
5.老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

1および2の要件については、死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。ただし、死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。
4および5の要件については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限ります。

支給対象者

死亡した方に生計を維持されていた以下の遺族のうち、最も優先順位の高い方が受け取ることができます。なお遺族基礎年金を受給できる遺族の方はあわせて受給できます。

1.妻(※1)
2.子(18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方。)
3.夫(死亡当時に55歳以上である方に限ります。)(※2)
4.父母(死亡当時に55歳以上である方に限ります。)(※3)
5.孫(18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方。)
6.祖父母(死亡当時に55歳以上である方に限ります。)(※3)

※1 子のない30歳未満の妻は、5年間のみ受給できます。
※2 受給開始は60歳からとなります。ただし遺族基礎年金をあわせて受給できる場合に限り、55歳から60歳の間であっても遺族厚生年金を受給できます。
※3 受給開始は60歳からとなります。

 

年金額

遺族厚生年金の年金額は、死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額となります。なお、上記受給要件の1、2および3に基づく遺族厚生年金の場合、報酬比例部分の計算において、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。

65歳以上で老齢厚生(退職共済)年金を受け取る権利がある方が、配偶者の死亡による遺族厚生年金を受け取るときは、「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」と「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自身の老齢厚生(退職共済)年金の額の2分の1の額を合算した額」を比較し、高い方の額が遺族厚生年金の額となります。

参考:日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150401-03.html

おわりに

今回のコラムでは、遺族年金の概要について解説しましたが、いかがだったでしょうか。年金制度には、細かい条件がありますので、実際に支給を受ける場合には、条件の詳細や不明点について、最寄の年金事務所やねんきんダイヤル(公務員の方は共済組合)で確認することをオススメします。また、遺族年金には、5年の時効がありますが、申請した時点から5年前までは遡って支給を受けることができますので、条件を満たしているのに申請していなかったという方は、最寄の年金事務所等で相談してみることをオススメします。専門の社会保険労務士に相談するという手段もあります。

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