第228回相続コラム 相続人代表者指定届とは何か、よくある疑問についても解説

相続コラム

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第228回相続コラム 相続人代表者指定届とは何か、よくある疑問についても解説

第228回相続コラム 相続人代表者指定届とは何か、よくある疑問についても解説

遺産の中に不動産がある場合に、相続人の元に『相続人代表者指定届』という通知が届くことがあります。遺産分割等が済んでいない段階では、最終的に不動産をどの相続人が相続するのか不明なため、誰が代表者となるのか、疑問に思う方も少なくありません。今回のコラムでは、『相続人代表者指定届』とは何か、よくある疑問についても解説したいと思います。

 

そもそも相続人代表者指定届とは

相続人代表者指定届とは、不動産等の固定資産の所有者が亡くなった場合に、亡くなった所有者の代わりに固定資産税の納税通知書を受け取る人を指定する届け出のことをいいます。

不動産の所有者は、固定資産税や都市計画税を納付する必要があります。そして、不動産の所有者が亡くなると、その不動産の所有権は相続によって相続人に移転することになるので、固定資産税等の支払義務を負うのは、相続人ということになります。

しかし、相続が発生し、遺産分割協議等が未了の間は、不動産の所有権は、相続人全員の共有状態となるため、相続人全員に納税のための通知書を送付するとなると、通知を発する役所の事務負担が増大してしまいます。

そこで、通知を発する役所としては、事務負担を軽減するために、誰に納税通知書を送るべきか指定してもらうべく、『相続人代表者指定届』を送付しているのです。

 

相続人代表者指定届と納税義務は別

相続人代表者指定届により、自身が相続人代表者となったとしても、それは単に納税通知書の送付先が自分になるというだけで、それ以上の意味は持ちません。

つまり、相続人代表者だけが納税義務を負うということはないし、また、それによって遺産分割の内容が決まるということも一切ありません。遺産分割が終了するまでは、共有している相続人全員が、自身の相続分に応じて、納税の義務を負担することなります。仮に、相続人代表者が、他の相続人の分も含めて固定資産税を納付したとしても、他の相続人の負担分については、立て替えた分の支払を請求することができます。

固定資産税の納税義務について、詳しくは
第162回相続コラム 相続発生後、実家の固定資産税は誰が支払うのか?」
をご覧ください。

 

遺産分割協議が成立しても相続人代表者指定届は届くことがある

遺産分割協議が成立すると、厳密には、その時点で、遺産の最終的な帰属が決まるため、その協議によって不動産を相続した相続人が、協議成立以降の納税義務者となります。しかし、不動産の名義変更(相続登記)を完了していないと、役所としては、誰が正式な不動産の相続人となったかは不明なため、相続人代表者指定届が通知される場合があります。

遺産分割協議が成立した場合には、しっかりと相続登記を行うことが大切です。

 

相続人代表者指定届は必ず提出しなければならないのか

相続人代表者指定届は、上で説明したように、役所の事務手続き上の便宜のために利用されるものですので、必ず提出しなければならないという性質のものではありません。仮に、届出を行わなかったとしても、一定期間経過後、役所の方で相続人の中から代表者を指定し、固定資産税の納付書を送付してくることになります。

令和2年度税制改正で創設された「現に所有している者(相続人等)の申告の制度化」により、市町村によっては、現所有者(相続人)の届出が義務となっている地域もあります。東京都では「現所有者申告書」という届出の提出が求められ、その提出は義務となっていますので注意が必要です。また、「相続人代表者指定届兼現所有者申告書」という名称で、提出が義務とされる地域もあります。

参考: 総務省ホームページ
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/144643_02.html

参考:東京都主税局
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/scene/inheritance.html

 

相続放棄と相続人代表者指定届

相続放棄を選択すると、放棄をした者は、そもそも相続人ではなかったことになります。そのため、相続放棄をした場合には、故人の遺産について、固定資産税を支払う義務は一切ありませんし、自身が相続人代表者となる必要もありません。

 

おわりに

今回のコラムでは、『相続人代表者指定届』とは何か、よくある疑問についても解説しましたが、いかがだったでしょうか。自身が代表者になると、固定資産税の納税義務を全て負うかのように思われる方も多いのですが、そのようなことはないので安心してください。従来の『相続人代表者指定届』ではなく、「現所有者申告書」等の名称で、申告書の提出が義務となっている地域もありますので、その場合には、相続登記が終わるまでは、対応が必要です。

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