第257回相続コラム 期限はないけど期限に注意!?遺産分割協議はいつまでにすべきか

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第257回相続コラム 期限はないけど期限に注意!?遺産分割協議はいつまでにすべきか

第257回相続コラム 期限はないけど期限に注意!?遺産分割協議はいつまでにすべきか

遺産分割協議について、法律上、「いつまでに行われなければならない」というような特別な期限は設けられていません。しかし、遺産分割協議は、相続手続きを進める際の前提として要求されたり、また、一定期間行わないことによるリスクも存在するため、事実上、一定期間内に行うことが要求されます。今回のコラムでは、遺産分割協議はいつまでに行うべきか、期限のある相続手続きとの関係から解説したいと思います。

 

そもそも遺産分割協議とは何か

相続が発生し、故人が仮に遺言をのこしていた場合には、その遺言に従って、遺産を分配することになります。

しかし、遺言がなかった場合には、遺産は自動的に相続人に相続されることにはなるのですが、その段階では、遺産は抽象的な共有状態となるため、誰が具体的にどの遺産をどのように相続するのかは未確定の状態となります。

そのような抽象的な共有状態を解消し、具体的に誰が何をどのように相続するのかを決めるためには、遺産を分割するための話し合いを相続人全員で行う必要があり、その話し合いが遺産分割協議となります。

つまり、遺産分割協議とは、相続人全員で行う、遺産の分け方を決める話し合いということになります。

 

遺産分割協議の期限

遺産分割協議自体には、法律上、特に期限は定められておりません。しかし、他の相続手続きとの関係で、一定期間内に行わないことによるリスク等があります。

相続税の申告と遺産分割協議【10ヶ月以内】

相続税の申告・納付が必要な場合には、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内にその手続きを行う必要があります。相続税は、申告期限内に申告をしないと、無申告加算税や延滞税が課されてしまうおそれがありますので、注意しなければならない期限のひとつです。

この相続税の申告の際に、遺産分割協議がまとまっていなかったとしても、法定相続分の割合で遺産を取得したと仮定して、相続税の申告・納付を行うことは可能です。しかし、その場合には、『配偶者控除』や『小規模宅地の特例』等、遺産分割が完了していることが適用要件となっている節税効果の高い控除や特例を使えなくなってしまうので、結果として、相続税が高額になってしまうリスクがあります。

つまり、相続税の申告・納付が必要なケースで、その高額な納付額を低く抑えるためには、事実上、遺産分割協議を、申告期間内に済ませる必要があるということになります。

どうしても、早期に遺産分割協議がまとまらない場合には、『申告期限後3年以内の分割見込書』というものを税務署に提出し、後に納め過ぎた税金の還付を受けるという方法もありますが、一度高額な相続税を納める必要があるということと、更正請求するという手間がかかります。

 

相続登記義務化と遺産分割協議【3年以内】

当コラムでも、何度が解説しておりますが、相続した家や土地などの不動産の名義変更、すなわち相続登記が2024年4月1日から義務化されます。

相続登記が義務化されると、相続で不動産の所有権を取得した場合には、相続の開始を知って、かつ、所有権を取得したと知った日から3年以内に登記を申請しなければなりません。その後、遺産分割で異なる割合で所有権を取得した際は、その分割の日から3年以内の登記申請が義務づけられます。これらの申請を正当な理由がないのに怠ると、罰則の適用を受けることなります。

上の法律のルールに従って、相続開始後まず法定相続分どおりに相続登記を申請し、その後、遺産分割協議が成立した場合に、再度、登記を申請することも可能ですが、二度登記を申請するとなると、手間もかかるし、登記の際の登録免許税も二度納める必要がでてきます。

ですので、一度の手続きで登記申請を済ませたい場合には、遺産分割協議を3年以内にまとめる必要があります。また、遺産分割協議が早期にまとまらない場合には、新設された『相続人申告登記』という制度を利用することも可能です。

相続人申告登記について詳しくは
第125回相続コラム 相続登記の義務化と新設された制度(相続人申告登記)」をご覧ください。

 

寄与分・特別受益と遺産分割協議【10年以内】

遺産分割協議には期限はありませんが、寄与分や特別受益の主張は、相続開始後10年経過すると、その主張が制限されます。

寄与分や特別受益という制度は、遺産分割の実質的公平を図るための制度となりますので、これらの主張が制限されるということは、その主張が制限された相続人にとって不公平な遺産の分配結果となってしまうおそれがあります。

ですので、公平な遺産分割を行うためには、寄与分や特別受益の主張が可能な期間内に、遺産分割協議を行う必要があるということなります。

寄与分・特別受益の主張の期間制限について詳しくは
第218回相続コラム 改正法施行の影響 寄与分や特別受益の主張に期間制限ができました」をご覧ください。

 

口座凍結解除と遺産分割協議【番外編】

相続が発生し、故人名義の口座が凍結された場合、その口座をいつまでに凍結解除しなければならないという決まりはありません。

しかし、口座名義人に生活を依存していた方や、夫婦の生活資金をまとめて一方の名義の口座に預けているような方は、その口座が凍結されてしまうと、生活費の支払が一時的に困難になり、生活に困窮してしまうおそれがあるため、ケースによっては速やかな口座凍結解除が必要となります。

口座凍結解除のためには、遺言がなければ、遺産分割協議書の提出が必要となるため、速やかな口座凍結解除を望む場合には、遺産分割協議を早期にまとめる必要があります

遺産分割協議がまとまる前に、どうしても預金を払戻したい場合には、令和元年から新たに施行された『預貯金の払戻し制度』を利用することで、一定額まで預金を引き出すことが可能です。

口座凍結解除について詳しくは
第138回相続コラム 故人の銀行口座から預金を引き出せない!? 口座の凍結とその解除方法」をご覧ください。

 

おわりに

今回のコラムでは、遺産分割協議はいつまでに行うべきか、期限のある相続手続きとの関係から解説しましたが、いかがだったでしょうか。遺産分割協議自体には、期限はありませんが、他の手続きとの関係上、事実上必要となるケースも多いため、遺産分割協議はなるべく早めに行うことを強くオススメします。また、口座凍結を速やかに解除するために、遺産分割協議を省くべく、予め遺言書をのこしておくことも大切です。

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