第187回相続コラム 遺言とは異なる内容の遺産分割協議をした際の相続登記や相続税

相続コラム

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第187回相続コラム 遺言とは異なる内容の遺産分割協議をした際の相続登記や相続税

第187回相続コラム 遺言とは異なる内容の遺産分割協議をした際の相続登記や相続税

前回のコラムでは、遺言とは異なる内容の遺産分割協議ができるのか、その可否について解説しました。今回のコラムでは、遺言とは異なる内容の遺産分割協議をした際の相続登記の申請や相続税について、内容を少し掘り下げ、注意点等を解説したいと思います。

 

前回のコラムのおさらい

遺言は、故人の最終意思として最大限尊重されるべきものですが、常にそれに拘束されるわけではなく、一定の条件を満たせば、遺言とは異なる内容の遺産分割協議をすることも可能です。

具体的には、

・相続人全員の合意があること
・遺言で遺産分割が禁止されていないこと
・遺言執行者がいる場合には、遺言執行者の同意があること
・相続人ではない受遺者がいる場合には、その者の同意があること

という上記の条件を全て満たす場合には、遺言とは異なる内容の遺産分割協議も可能となります。

詳しくは前回のコラム
第186回相続コラム 遺言と異なる内容の遺産分割協議はできるのか 注意点も合わせて解説
をご覧ください。

 

遺言とは異なる内容の遺産分割協議をした場合の相続登記

遺言とは異なる内容の遺産分割協議をした場合の相続登記について、具体例を用いて解説します。

具体例
遺言では、A不動産を長男に相続させる旨、B不動産を次男に相続させる旨の記載がのこされていたが、遺産分割協議を行い、A不動産は次男が相続し、B不動産を長男が相続することに合意した。

少し専門的なお話しではありますが、上記の例のように、特定の財産を特定の誰かに譲り渡す旨の遺言があると、まずは遺言によって、財産の所有権が故人から移転し、その後に、遺産分割協議があると、相続人間で財産の交換ないし贈与が行われたと考えることができます。

そのため、上記の考えを徹底すると、A不動産は長男、B不動産は次男について、相続を原因とする所有権移転登記を申請し、次いで、それぞれの不動産について、交換(ないし贈与)を原因とする所有権移転登記を申請することになるのが原則です。つまり、権利の移転を正確に記録するためには、二段階の登記申請がそれぞれの不動産で必要となります。法務局に記録される登記というものは、公の記録となるため、権利の移転を正確に反映する必要があるからです。

ただし、実務上、具体例のようなケースで、二段階の移転登記をしないで、直接遺産分割協議による相続登記を申請する運用がなされることもあります。登記官に対し、遺言とは異なる遺産分割協議による移転登記であることを申告しない限りは、直接相続登記ができてしまうからです。また、上記の具体例のようなケースの取り扱いについては、諸説あり、上記とは異なる考え方も存在します。

遺言とは異なる内容の遺産分割協議を行い、その内容として不動産の権利の帰属が含まれる場合には、権利関係が複雑になり、その相続登記の手続きも難解になるため、司法書士などの専門家に相談することをオススメします。

 

遺言とは異なる内容の遺産分割協議をした場合の相続税

遺言とは異なる内容の遺産分割協議をした場合の税金の取り扱いについても、同じく具体例を用いて解説します。

具体例
遺言では、A不動産を長男に相続させる旨、B不動産を次男に相続させる旨の記載がのこされていたが、遺産分割協議を行い、A不動産は次男が相続し、B不動産を長男が相続することに合意した。

こちらについても、厳密に法律を適用すると、一度相続(遺言)による権利移転があり、それについて相続税が課され、相続人間の交換や贈与について、別途、贈与税等が課されるようにも思われます。

しかし、相続税の計算では、直接、遺産分割協議に基いて、遺産分割がなされたものと取り扱い、贈与税はかかりません

上記の例でいうと、A不動産を次男、B不動産を長男が直接相続したものとして、相続税を計算することになります。

国税庁回答
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4176.htm

ただし、上記の扱いは、遺言によって財産を譲り受けた者が相続人のケースであり、相続人以外の受遺者が登場する場合には扱いが異なる場合があるので注意が必要です。

相続人以外の受遺者がおり、その受遺者を加えた遺産分割協議により受遺者にも遺産を取得させた場合には、受遺者について遺贈の目的物についての相続税が課されたうえで、相続人との間で遺産と交換したとされ、譲渡所得税が課されうるということに注意が必要です。

相続税についても、遺言とは異なる内容の遺産分割協議を行う場合には、計算が複雑になるため、
税理士などの専門家に予め相談することをオススメします。

 

まとめ

遺言とは異なる内容の遺産分割協議を行うと、権利関係が複雑なものとなり、不動産が含まれる場合の相続登記に関する手続きや、税金の計算が複雑になるため、誤った手続きをしてしまったり、税金等が高額になることを防ぐために、専門家に相談することが大切です。

当事務所では、相続・遺言・相続登記などに関する相談を広く受けております。相談は、初回無料ですので、遺言とは異なる内容の遺産分割協議についてや、その後の相続登記の手続きについて、お困りの方は、お気軽にご相談ください。