第43回相続コラム 意外と知らない!?不動産を共有名義にすることのリスク

不動産は複数人の名義(共有)にすることができます。親から不動産を相続した子が複数人いる場合などにおいて、話し合いがまとまらないので「とりあえず兄弟で共有にしておこう」と考える方も多くいらっしゃいます。ただ、安易に共有名義にしてしまうと、後から困った事態になることもあるため注意が必要です。
今回は不動産を共有名義にすることによるリスクについて解説します。
将来売却する場合
共有状態の不動産を売却することになった場合、売主が共有の場合はその共有者全員が売却手続きに関与しなければなりません。
具体的に言えば、共有者全員分の登記識別情報(以前の権利証にあたるもの)、印鑑証明書の提出、実印の押印が必要となります。
近年、不動産売却の際の各手続きにおける本人確認は以前より厳しくなっていますので、手続きに関与する不動産仲介会社や司法書士などと、意思確認のため一度は面会しなければならないことが原則です。
そのため、各相続人が遠方に住んでいる場合などはかなりの手間、費用がかかることもあります。
保有し続ける場合
将来に向かって保有し続ける場合であっても、最初は2人の共有だったのにその子供たちがそれぞれ2人ずついて・・となると、代が替わるごとにどんどん頭数が増えていってしまいます。
こうなると、次の相続の時にはお互いの関係が希薄なため話し合いすらできず、裁判所の調停にもつれ込むパターンになることも十分考えられます。
どんどん頭数が増える数次相続のリスクについて、詳しくは「第24回相続コラム どんどん増える!?意外とこわい数次相続とは?」をご覧下さい。
不動産を相続した場合のリスク管理
親から受け継いだ不動産を守りたいと考えるのは子供として自然な感情ですが、あまりそこにこだわりすぎると不動産は単なる「負動産」になってしまいます。
誰も住む予定がなく管理コストばかりかかるのであれば、思い切って早期に売却を考えた方がよいこともあるのです。
ひとまず名義を相続人のうち誰か1人にしておいて物件を売却し、その売却代金を相続人全員で分けることも可能です。
売却や代金分配のタイミングを間違えると税務上、贈与扱いにされるリスクもありますが、司法書士や税理士等の専門家に依頼すればそのような点に配慮した遺産分割協議書を作ることもできますので、相続開始後(=不動産の名義人が亡くなった後)なるべく早い段階でアドバイスを受けることをおすすめします。
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