第30回相続コラム しっかり押さえたい遺留分の基本
30回にわたり相続に関する様々なトピックスについて触れてきました。今回はズバリ「遺留分」について解説したいと思います。相続分について調べたことのある方なら聞いたことがある単語かと思います。相続分と似ているけど異なる遺留分。遺留分について基本から解説します。
そもそも遺留分とは?
遺留分(いりゅうぶん)とは、一定の範囲の相続人に認められている、法律により最低限保証された遺産の取り分のことを言います。
相続分は、遺産を相続することが前提で、その遺産をどのくらいの割合で相続するのかというお話でした。
それに対して、遺留分は、何らかの理由で相続ができなくなった場合に、法律が最低限の遺産を受け取ることができるようにした制度です。
具体例
父母と長男・長女という家族構成で父が亡くなった場合に、父が相続財産の全額である金1000万円について、ある団体に遺贈するという遺言を残していたとします。特に遺言等がなければ、法定相続人である母や長男・長女は遺産を相続できたはずでしたが、遺言があるために、一切遺産を受け取ることができなくなってしまいます。
このような場合に、特に母の生活が困難になることが予想されるので、法は本来の相続人の生活保護のため、遺留分という制度を設けて、一定の財産を受け取れるようにしているのです。
遺留分の割合
民法では、遺留分の割合が規定されています。直系尊属のみが相続人である場合は、被相続人の財産の3分の1、それ以外の場合は、被相続人の財産の2分の1です。ただし兄弟姉妹には遺留分が認められていませんので、注意が必要です。
先程の例で当てはめると
相続財産が1000万円で、相続人は被相続人の配偶者である妻と子になるので、相続財産の2分の1が遺留分となります。ですので、1000万円×1/2=500万円が遺留分となります。
この遺留分を、母、長男、長女で法定相続分に従って分配しますと、
母:500万円(遺留分)×1/2(法定相続分)=250万円
長男:500万円(遺留分)×1/2×1/2(法定相続分)=125万円
長女:500万円(遺留分)×1/2×1/2(法定相続分)=125万円
がそれぞれの取り分となります。
もちろん、遺留分として認められない500万円は、故人の遺言どおりになり、前述の例の場合は、団体に寄付されることになります。
遺留分は最低限度
遺留分を制度として認めるということは、その範囲で「故人の意思を法が強制的に曲げる」ことを意味します。先程の例ですと、父の寄付をしたいという意思を遺留分の範囲で効力を制限してることになります。直系尊属や配偶者・子には遺留分を認めて、兄弟姉妹に遺留分を認めていないのは、遺留分は故人の意思を法が無理やり曲げてしまうものなので最低限度にしようという発想の現れといえます。
まとめ
遺留分は相続分とは異なり、遺産の取り分がもらえない場合のお話であり、その場合に特別に取り分を保障したものです。故人の意思を制限して取り分を保障しているので、それは最低限のものになります。
-
前の記事
第29回相続コラム 知って得する!?配偶者への贈与と配偶者控除 2019.07.05
-
次の記事
第31回相続コラム 遺留分を取得するための遺留分減殺請求とは? 2019.07.19