第246回相続コラム 寄与分が認められる代表的な5つの類型

相続コラム

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第246回相続コラム 寄与分が認められる代表的な5つの類型

第246回相続コラム 寄与分が認められる代表的な5つの類型

相続人間の実質的公平を図るために設けられた『寄与分』。ご自身の被相続人に対する貢献が、果たして寄与分の主張を可能とするものなのか、気になる方も少なくないと思います。今回のコラムでは、どのような場合に寄与分の主張が可能なのか、寄与分の主張が認められる代表的な5つの類型について解説したいと思います。

 

そもそも寄与分とは

被相続人の財産の維持・増加に貢献した相続人に対しては、その貢献に応じて、遺産の取り分を増加させることを法律は認めており、その増加した取り分のことを寄与分といいます。

故人に長年尽くしてきて、その財産の維持・増加に貢献してきた相続人が、他の相続人と何ら相続分が変わらないというのでは、不満に思うのは心情ではないでしょうか。

そこで、法律では、寄与分という制度を設け、財産の維持・増加への貢献度に応じて相続分を増加させることで、相続人間の実質的公平を図っているのです。

民法第904条の2
共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

 

寄与分の5つの類型

では、寄与分の主張はどのような場合に認められるのでしょうか。ここでは、代表的な5つの類型を紹介したいと思います。

 

1.家業従事型

「被相続人の事業に関する労務の提供」により、被相続人の財産の維持形成に貢献するというパターンです。簡単に言うと、被相続人の家業を手伝うことによって貢献するというパターンです。

この家業従事型で注意したいのは、他の従業員と同様に、給与=対価を受け取っていたような場合には、寄与分の主張は認められないということです。

寄与分の主張が認められるのは、あくまで「特別な寄与」をした場合であり、労務の対価として給与を受け取っている場合には、逆に言えば、給与の対価として労務を提供していると考えられるので、寄与分を主張可能とする「特別な寄与」があったとは言えないからです。

ただし、仮に、給与を受け取っていたとしても、他の従業員と異なり、著しく低い報酬しか受け取っていないというような場合には、寄与分の主張が可能なケースもあります。

 

2.出資型

被相続人に対して金銭等の「財産上の給付」をしたことによって被相続人の財産の維持形成に貢献したというパターンです。例えば、「事業用の資金を援助した」、「住むための不動産を用意した」などのケースです。

「住むための不動産を用意」したとしても、賃料を受け取っていたような場合には、寄与分は認められませんので注意が必要です。原則として、寄与分が認められるためには、上述の『家業従事型』と同様に、行為の無償性が必要と考えられるからです。

また、「財産上の給付」と言っても、小遣い程度の給付では、相続人と被相続人の間には親族関係があるため、その身分関係に基づいて通常期待される範囲内の給付と判断され、「特別な寄与」とは言えないため、寄与分の主張は認められません。

 

3.療養看護型

被相続人の「療養看護」を行い、介護や看護費用の支出を免れさせ、財産の維持形成に貢献したというパターンです。

ここでの療養看護は、被相続人と相続人の身分関係上、当然に期待される程度を超える療養看護が求められます。例えば、入院した被相続人をたまに見舞う程度では足りませんし、また、ほぼ介護は介護職の方に任せており、介護職の方が訪問しない時にだけ、たまに介護していたというのでも認められないのが通常でしょう。

療養看護型で寄与分が認められている審判のほとんどが、相続人が「療養看護に専念していた」と言えるようなケースです。

 

4.扶養型

相続人が被相続人の生活費等を捻出することで、被相続人が生活費等の支出を免れ、被相続人の財産の維持形成に貢献したというパターンです。

例えば、被相続人が病気等により仕事ができない状態なため、生活費の大半を負担していたというような場合です。

ただ、実際に寄与分の主張が認められるかはケースバイケースですが、同居の親族間等には扶養義務がそもそもありますので、扶養していたからといって、必ずしも寄与分が認められるとは限らないので注意が必要です。

 

5.財産管理型

相続人が、被相続人の財産を管理したり、維持費を負担するなどして、被相続人の財産の維持形成に寄与したというパターンです。

例えば、被相続人が所有している賃貸不動産を管理をしていたり、その固定資産税を負担していたというような場合です。

被相続人の土地売却にあたり、借家人との立退交渉や、家屋の取壊し、土地の売買契約の締結等に尽力した相続人について、寄与分を認めた審判例もあります。

 

おわりに

今回のコラムでは、どのような場合に寄与分の主張が可能なのか、寄与分の主張が認められる5つの類型について解説しましたが、いかがだったでしょうか。寄与分がどのような場合に認められるのかについては、ケースバイケースなことが多く、また、その判断には専門的知識も必要になるため、自分のケースに寄与分の主張が認められるか気になる方は、相続の専門家に相談することをオススメします。

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