第157回相続コラム 契印?両面印刷?製本テープ?意外と知らない複数枚の遺産分割協議書の綴じ方
相続した不動産の名義変更や凍結された預金口座の解除など、遺産整理の際に、遺産分割協議書の提出が要求される場面が多く存在します。遺産分割協議書の書き方については、インターネットを検索すると、雛形やテンプレートなど、様々な見本を発見することができますが、意外と困るのが、作成した遺産分割協議書が複数枚になったときの扱いです。今回のコラムでは、遺産分割協議書が複数枚になった場合の綴じ方について解説したいと思います。
複数枚の遺産分割協議書の有効性
遺産分割協議書を作成した際に、1枚の用紙に内容が収まっていれば、特に問題はないのですが、2ページ以上になった際に、その綴じ方に困る方が少なくありません。
一般的に、遺産分割協議書に限らず、他の契約書でも、複数枚の書面を「単にホチキスで止めただけ」というような場合には、法律上、有効性を証明することが難しく、正式な合意書面とは認められないケースがほとんどです。勝手にページを差替えたり、抜き取ったりすることが可能であり、真正な書面であることが担保できないからです。
後述する「契印」などの対応がなされていないまま書面を提出すると、法務局や金融機関などで訂正を求められるケースが多く、遺産分割協議書は、相続人全員の合意書面であるところ、訂正するには、再度、相続人全員の協力が必要になり、非常に手間と時間がかかります。
複数枚の遺産分割協議書の綴じ方
契印を押す
遺産分割協議書が複数枚になった際に、一般的に用いられるのが「契印を押す」という方法です。
「契印」とは複数枚にわたる文書が、1つの連続した文書であることを証明するために、両頁にまたがって押印される印鑑のことです。契印が押印されていると文書が正しく連続している(抜き取りや差し替えがされていない)ことの証明となります。
契印の際に用いる印鑑は、遺産分割協議書の作成時の印鑑と同じものを用います。遺産分割協議書の作成には、相続人全員の合意が必要であり、その証拠として、相続人全員の署名と印鑑を押印します。相続人全員が押印している以上、契印も、相続人全員の印鑑が必要になります。
遺産分割協議書が2枚の書面となった場合には、1枚目と2枚目の境目に契印を、3枚となったら2枚目と3枚目の境目にも契印というように、各ページの境目に相続人全員の契印を押します。
両面印刷
遺産分割協議書の内容が2ページ以内で収まるなら、両面印刷するという方法があります。
一般的な家庭用プリンターなどで出力すると、A4用紙までしか印刷できないことが多く、A4用紙1ページに遺産分割協議の内容を全て収めるのは、遺産の多寡にもよりますが、実際上、難しくなります。
「2ページなら内容が収まる」という場合には、法律上、「合意書面を両面に印刷してはならない」という決まりは特にないので、両面に印刷するという方法をオススメします。
書面が複数枚になってしまうと、「契印」などが必要になり、その契印に誤りがあると、書面が無効になってしまうおそれがあるので、契印を必要としない両面印刷は、無効となるリスクが少なくなります。
見開きで印刷
A3用紙に出力可能な場合には、見開きで両面印刷にすると、A4用紙4ページ分の内容を収めることができます。
この方式で遺産分割協議書を作成する場合も、契印が不要になるので、契印の誤りによって生じるリスクを回避することができます。
製本テープを利用
書面の枚数が多くなればなるほど、契印を押す手間が増えます。そのような場合におすすめの手段が製本テープを利用する方法です。
製本テープを利用すると、複数の書面をまとめて製本できるところ、ページの境目毎に契印を押すという手間を省くことができます。
製本テープを利用する場合、ページ毎の境目に契印は不要となりますが、製本テープで綴じた箇所、本の表面と裏面の2箇所に契印を押す必要があります。
遺産分割協議書の作成で困ったら
遺産分割協議書の作成で困ったら、専門家に相談するのもひとつの手段です。遺産分割協議書は、相続に関する手続きで必要となる重要な書面であり、後の争いを防止し、円滑に手続きを進めるために専門家を利用すると安心できます。
当事務所は、相続や遺言に関するご相談を初回無料にて受けておりますので、お気軽にご相談ください。
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