第313回相続コラム 相談事例から解説する遺言の不備と相続登記について【不動産の特定】

相続コラム

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第313回相続コラム 相談事例から解説する遺言の不備と相続登記について【不動産の特定】

第313回相続コラム 相談事例から解説する遺言の不備と相続登記について【不動産の特定】

近年、終活ブームの影響により、遺言を作成される方も年々増えております。遺言の定番とも言える自筆証書遺言は、その名が示すとおり、自書することで遺言としての効力が発生するお手軽な遺言である反面、その内容に不備があることも少なくありません。

今回のコラムでは、よくある相談事例をもとに、遺言に不備のある場合の相続登記の申請について解説したいと思います。なお、今回の事例は、遺言書の内容に「不動産の特定」について不備があったケースになります。

※本コラムの事例は、解説の便宜のために構成された架空の事例になります。実際の取り扱い事件とは異なります。

相談事例

相談者Xさんの夫であるAさんは、数ヶ月前に亡くなりましたが、生前、妻であるXさんのために、自筆証書遺言を作成していました。

遺言書には「世田谷区○○町○丁目○番○号の家及びその敷地を妻Xに相続させる」旨が記載されていましたので、その遺言書をもとに法務局で相続登記(不動産の名義変更)の申請を行いました。

しかし、Xさんの相続登記の申請には「不動産の特定」に不備があるとして、却下されてしまいました。

遺言書に記載された不動産の住所は、確かにAさんが所有していた自宅の住所と一致しているのですが、それでも不動産の特定が不十分として却下されてしまい、困り果てて司法書士事務所に相談に来られたという事例です。

相談事例の問題点

遺言では対象となる財産を具体的に特定する必要がある

まず、前提として、遺言によって特定の財産を相続させる場合には、その財産を具体的に特定する必要があります。

例えば、仮に、Aさんが世田谷区に2軒家を所有していた場合に、「世田谷区の家を1軒Xに相続させる」と記載したところで、どちらの家を相続させるのか、遺言書の記載からは判断することはできません。

特に、申請を受ける法務局の登記官は、申請書や提出された書類のみで判断を行うため、それらの書類の記載から明確に不動産が特定される必要があります。

住所では不十分

日常生活の上では、土地や建物を指し示す際に、住所を用いるのが一般的です。

しかし、正確に土地や建物の権利関係等を記録・管理している法務局の登記簿では、「地番」や「家屋番号」等の情報によって、不動産を特定しています。

そのため、単に土地や建物の住所を指し示すだけでは、不動産の特定として不十分と判断され、登記の申請が却下されてしまうケースがあります。

今回の相談事例の遺言書には住所のみが記載

今回の相談事例でも、遺言書には、不動産の住所のみが記載されていたので、遺言書に記載されている不動産と登記の申請対象の不動産が、同一の不動産なのかどうかが、登記官には判断できず、申請が却下されてしまっています。

■遺言書で財産を特定する際には具体的に特定する必要がある。
■不動産を特定する場合には、その住所では不十分。

 

自筆証書遺言の落とし穴

自筆証書遺言は、お手軽に作成できる反面、その内容に不備があるケースも少なくありません。その典型が、相続の対象となる不動産を住所のみで指定するというケースです。

同じ住所であっても、分譲地などで複数同一住所の不動産が存在するケースもありますし、住所のみという少ない情報では、登記官は同一性を担保することができないので、不動産を正確に特定するには、登記簿記載のとおりに不動産の情報を記載する必要があります。

建物の特定:登記簿記載のとおりに以下の事項を記載する。
・所在
・家屋番号
・種類
・構造
・床面積

土地の特定:登記簿記載のとおりに以下の事項を記載する。
・所在
・地番
・地目
・地積

 

不備のある遺言書と相続登記の申請

今回の相談事例では、遺言書に不動産を記載する際に、その特定方法が不十分であったため、相続登記の申請が却下されてしまっています。

遺言書を作成する際に、事前に司法書士等へ相談していれば、不備のない遺言書を作成することができていたのかも知れませんが、既にAさんは亡くなっているため、後の祭りです。

遺言書に「不動産の特定」に関する不備がある前提で、対応しなければなりません。

遺産分割協議書の作成

遺言書を申請に利用できない場合、遺言書と同一内容の遺産分割協議書を作成し、同書面を提出することによって相続登記の申請をすることができます。

遺産分割協議が有効に成立するためには、他の相続人全員の協力が必要にはなりますが、申請が受理される確実な手段となります。

他の相続人の協力を得るのが難しい場合

他の相続人の協力を得るのが困難なケースでは、不動産の特定を補完すべく他の資料を用意し、法務局の登記官と交渉するという方法があります。

例えば、上申書を作成するとともに、遺言者Aさんの税金関係の書類や名寄帳等を併せて提出することで、遺言書に記載された不動産と申請対象の不動産が同一であることを登記官に説明し、申請の受理を促します。

最終的には、登記官の判断となるため、登記申請が必ず受理されるとは限りませんが、申請が受理されるケースもあります。

おわりに

今回のコラムでは、よくある相談事例をもとに、遺言に不備のある場合の相続登記の申請について解説しましたが、いかがだったでしょうか。

自筆証書遺言の内容に不備があるケースというのは、珍しくありません。特に、専門家に一切相談せずに作成した遺言書には、今回の相談事例のように「不動産の特定」を住所のみで行ってしまうケースが、多く見られます。

残されるご家族のために遺言書を作成することは、非常に大切なことです。ただ、その遺言書によって、かえってご家族の負担を増やしては本末転倒となってしまいますので、遺言書を作成する際には、相続の専門家に相談することをオススメします。

また、不備のある遺言書が見つかった場合であっても、遺産分割協議書を作成することで登記の申請を受理してもらえるケースもありますので、登記の専門家である司法書士にご相談ください。

当事務所では、相続・遺言・相続登記などに関する相談を広く受けております。相談は、初回無料ですので、相続についてわからないことや、お悩みのある方は、お気軽にご相談ください。