第312回相続コラム 相続した不動産の名義変更、相続登記の相談はどこにすべきか

不動産を相続した場合、その名義を変更をすることを専門用語で『相続登記』と言います。2024年4月1日より、相続登記の申請は義務となっているため、不動産を相続した方にとって必須の手続きとなります。
初めての相続のケースでは、どのように相続登記の手続きを進めたらよいのか、誰に相談したらよいのか不安に思う方も少なくないと思います。
今回のコラムでは、相続した不動産の名義変更、相続登記の相談先についてご紹介するとともに、各相談先の特徴やメリット・デメリット、利用する際の注意点等を解説したいと思います。
相続登記の相談先を選ぶ前に知っておきたい基礎知識
相続登記とは何か?必要な手続きと申請先
相続が発生すると、故人が所有していた家や土地などの不動産は相続人に相続されるのが基本となります。相続人が不動産の新たな所有者となったとしても、不動産の名義が自動的に変更されるわけではないので、名義を変更するためには手続きが必要となります。
不動産の所有者が誰であるか、その名義は法務局の登記簿で記録され、管理されています。不動産の名義を変更するということは、登記を変更することになりますので、不動産の名義を変更するためには、法務局に登記の申請を行う必要があります。
不動産を相続した際の名義変更のことを、専門用語で相続登記と言います。相続を原因として、登記の名義を変更(所有権を移転)するので、相続登記と呼ばれます。
■相続によって不動産の所有権が相続人に移転し、相続人が所有者となります。
■相続した不動産の名義を変更するためには、手続きが必要となります。
■相続で取得した不動産の名義変更を、専門用語で相続登記と言います。
■相続登記の申請先は法務局になります。
相続登記の義務化と怠った場合の罰則
2024年4月1日の改正法施行により、相続登記を申請することは義務とされましたので、相続や遺言によって不動産を取得した者は、一定期間内に相続登記を申請しなければなりません。
法律で定められた期間内に相続登記の申請を行わないと、罰則の適用を受ける場合があります。
相続登記義務化についての詳細は「第267回相続コラム 本日令和6年4月1日より相続登記義務化スタート」をご覧ください。
主な相続登記の相談先
相続によって不動産を取得する機会は、人生で何度も起こることではないので、大多数の方にとって相続登記の申請は初めてのことになるかと思います。
相続登記に関する悩みや不安を抱える中、安心して相談できる相談先を確保したいものです。相続登記についての主な相談先を挙げると以下のようになります。
■司法書士・司法書士事務所
■弁護士・弁護士事務所
■法務局の相談窓口
■相続登記相談センター
以下、相談先毎に特徴やメリット・デメリット等を解説します。
司法書士・司法書士事務所
司法書士は登記の専門家
司法書士とは、司法書士法の規定に基づき、登記や供託の申請代理、法務局等に提出する書類の作成提出等を行う法律の専門家です。簡単に言うと、司法書士は、登記・法律の専門家として国に認められた国家資格者です。
司法書士は、登記申請だけではなく相続登記に必要な戸籍謄本の収集や法務局に提出する遺産分割協議書の作成等も可能です。
特別な理由のない限り、相続登記についての相談先としては、登記の専門家である司法書士(司法書士事務所)が最適と言えます。
司法書士に相談するメリット・デメリット
司法書士は、相続登記を含む登記の専門家です。単に相談するだけではなく、面倒な書類集め・申請書の作成から実際の申請まで、必要な手続きを丸ごと代行してもらうことも可能です。また、複雑な申請が必要なケースでは、司法書士に依頼することがマストという場合もあります。
ただし、専門家に手続きを依頼するとなると、報酬が必要となりますので、費用面を気にされる方にはデメリットとなります。また、当事務所のように無料相談を行っている司法書士事務所も少なくありませんが、相談が必ず無料とは限りませんし、初回が無料でも、2回目以降は有料という事務所も少なくないため、内容をしっかり確認することが大切となります。
弁護士・弁護士事務所
弁護士は法律全般のプロ
弁護士は、言わずと知れた法律の専門家。相続登記に限らず広く相続問題全般について相談することができます。
ただし、上で解説した司法書士と同様に、専門家の手を借りると費用が生じるというデメリットがあります。また、弁護士事務所では、初回から相談料が有料という事務所も少なくありませんので、注意が必要です。
弁護士が必須なケース
通常、単に相続登記のみを依頼したり、相談する場合には、司法書士を利用するのが一般的となります。
しかし、司法書士は、相続人の間に入って交渉したり、相続人同士の争いを解決したりすることはできませんので、相続人間で争いや問題がある場合には、弁護士が相談先となります。
■相続人間で争いや揉め事がない場合:司法書士に相談
■相続人間で争いや揉め事がある場合:弁護士に相談
他の士業に相談することはできるか?
近年、特にインターネット上で、住所氏名等を入力すれば、相続登記の申請書類が自動で作成されるというようなサービスを提供する事業者が増加していますが、司法書士や弁護士ではない者が、登記申請書類を作成したり、登記手続に関する相談に応じることは、法律で禁止されています。
他の士業も同様で、司法書士または弁護士の資格がない場合には、法律上、相続登記に関する相談に応じることはできません。
法務局の相談窓口
公的な相談窓口
相続登記を申請する法務局には、相談窓口があるのが通常です。法務局は、公的な機関であるため、無料で相談することができます。
専門家の手を借りず、自力で登記を申請する場合には、法務局の相談窓口を活用するのが一般的です。
なお、法務局は全国に中心となる各本局があり、その出張所、支局で構成されています。相続登記を相談する場合は、相続する不動産の所在地を管轄する法務局に相談することになります。
法務局の管轄一覧
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kankatsu_index.html
法務局のメリット・デメリット
法務局は、公的な機関であり、また、無料で利用できるのが最大のメリットとなります。
しかし、法務局の相談窓口も万能ではなく、いくつか注意すべき点があります。
法務局の相談窓口では、一般的な申請方法や添付書類について、説明はしてくれますが、個別の事情に踏み込んだアドバイスや法的判断が必要な内容には応じてくれません。
例えば、遺産分割協議を行った場合に、どの様式に従って申請書を記載すべきかは説明してくれますが、相談員は法律家ではないため、遺産分割の具体的な内容やその内容が法律的に有効かどうか等は、説明してくれません。
また、法務局の相談窓口を利用できる日時等には制限があります。法務局は、基本的に、いわゆる役所になりますので、利用できるのは平日の営業時間内(9時~17時)ということになります。相談時間も1回あたり20分程度の制限が設けられているのが一般的です。利用回数に制限は設けられていませんが、再度、別日に予約を取り直し、あらためて相談するという作業が必要になります。
相続登記相談センター
相続登記相談センターとは
相続登記相談センターは、日本司法書士会連合会が運営しており、無料で相続登記の相談をすることができます。
相続登記相談センターでは全国統一フリーダイヤルを開設しており、そこに連絡するとお住まいの地域の相続登記相談センター(司法書士会相談窓口)につながります。
相談窓口を通じて、登記の専門家である司法書士に相談することができます。
相続登記相談センター
https://www.shiho-shoshi.or.jp/inheritance_lp/
相続登記相談センターのメリット・デメリット
相続登記相談センターは無料で利用することができます。利用方法は、各地域の司法書士会毎に異なりますが、基本的には、司法書士と電話や対面、オンライン等で相談することが可能です。
登記のプロである司法書士に相談することが可能であり、また、その手段も豊富というのがメリットとなります。
ただし、1回あたりの相談時間には制限が設けられているのが通常で、全ての悩みを相談できるとは限りませんし、司法書士会によっては、相談回数の制限が設けられている場合がありますので注意が必要です。
おわりに
今回のコラムでは、相続した不動産の名義変更、相続登記の相談先についてご紹介するとともに、各相談先の特徴やメリット・デメリット、利用する際の注意点等を解説しましたが、いかがだったでしょうか。
費用をできるだけ抑えたいという場合には、法務局の相談窓口や相続登記相談センターを利用しながら、自力で登記を申請するという選択肢もあります。ただし、実際に自力で登記を申請することは想像以上に大変な作業です。専門家の手を借りることも許容できるのであれば、まずは専門家の無料相談を利用することをおすすめします。
当事務所では、相続・遺言・相続登記などに関する相談を広く受けております。相談は、初回無料ですので、相続についてわからないことやお悩みのある方は、お気軽にご相談ください。
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