第285回相続コラム 遺留分の放棄とは何か その方法も解説

相続コラム

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第285回相続コラム 遺留分の放棄とは何か その方法も解説

第285回相続コラム 遺留分の放棄とは何か その方法も解説

前回のコラムでは、遺言の内容として遺留分を認めない旨の記載があったとしても、その記載は無効となる旨解説しました。遺言作成者の意思として、遺留分を認めないことはできませんが、遺留分を受け取る側の相続人が自ら遺留分を放棄することは可能です。今回のコラムでは、遺留分の放棄とは何か、その方法も解説したいと思います。

 

遺留分とその放棄

そもそも遺留分とは

遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に最低限保障された遺産の取り分のことを言います。被相続人の遺言や遺贈により、相続人が取得した遺産が遺留分より少なくなった場合、不足した分の額を、遺言等によって遺産を取得した者から取り戻すことができます。

相続という制度には、残された相続人の生活を保障するという側面があるため、遺言等によって遺産の取り分が少なくなってしまった一定の相続人を保護するために、遺留分という最低限の取り分を法は保障しているのです。

例えば、父母と長男・長女という家族構成で父が亡くなった場合に、父が遺産の全額である1,000万円について、ある団体に遺贈するという遺言を残していたとします。特に遺言等がなければ、法定相続人である母や長男・長女は遺産を相続できたはずでしたが、遺言があるために、一切遺産を受け取ることができなくなってしまいます。

このような場合に、特に母の生活が困難になることが予想されるので、法は本来の相続人の生活保護のため、遺留分という制度を設けて、一定の財産を受け取れるようにしているのです。

具体的には、遺産1,000万円に対して、母は250万円、長男・長女はそれぞれ125万円の遺留分が認められるため、遺留分侵害額請求権を行使することで、各相続人は、遺留分相当額を、遺留分を侵害している遺贈を受けた団体から取り戻せるということになります。

 

遺留分の放棄

遺留分の放棄とは、遺留分の権利者が遺留分の権利を自ら手放すことを言います。遺留分という制度の趣旨は、残された相続人の生活保障にあるため、相続人自らが遺留分を放棄することは認められているのです。

 

遺留分の放棄方法

遺留分の放棄は、被相続人の生前でも死後でも行うことができますが、放棄する時期によって放棄の方法が変わってきます。

被相続人の生前

被相続人が生きている間に、遺留分を放棄すると、放棄をした相続人は、将来、遺留分侵害額請求権を行使できなくなるので、仮に、不公平な内容の遺言書を作成しても遺留分を巡るトラブルは発生しなくなります。

その反面、被相続人が自身の意思通りに遺言を実現させるために、遺留分を有する相続人に、遺留分を放棄するよう迫るなど、不当な干渉が行われる危険性があるため、被相続人の生前に遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可を得る必要があります

民法1049条第1項
相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。

 

被相続人の死後

被相続人が亡くなった後に遺留分を放棄する場合には、特別な条件等は法律で定められておりませんので、遺留分を有する相続人が遺留分を侵害している者に対して遺留分を請求しない旨の意思表示をするだけで、遺留分の放棄となります。

また、遺留分を取り戻す遺留分侵害額請求権は、「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年」以内に行使する必要があるため、期間内に何もしなければ遺留分を放棄したのと同じ結果となります。

民法1048条
遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。

 

おわりに

今回のコラムでは、遺留分の放棄とは何か、その方法も解説しましたが、いかがだったでしょうか。今回のコラムのポイントは、遺留分の制度趣旨は、相続人の生活保障にあるため、遺留分権者自らが遺留分を放棄することは可能ということと、被相続人の生前に遺留分を放棄するには、不当な干渉等のおそれがあるため、家庭裁判所の許可が必要という点にあります。

遺留分に配慮した遺言の作成や遺留分対策等でお悩みの方は、相続の専門家に相談することをおすすめします。

当事務所では、相続・遺言・相続登記などに関する相談を広く受けております。相談は、初回無料ですので、相続についてわからないことや、お悩みのある方は、お気軽にご相談ください。