第284回相続コラム 遺留分を認めない旨の遺言は有効なのか

相続コラム

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第284回相続コラム 遺留分を認めない旨の遺言は有効なのか

第284回相続コラム 遺留分を認めない旨の遺言は有効なのか

遺言を作成する際に気をつけなければならない事柄のひとつに遺留分があります。遺留分を考慮せずに遺言を作成してしまうと、相続人間で遺留分を巡る争いを誘発する危険性があるからです。

では、相続人間の遺留分を巡る争いを防ぐために、遺留分を認めない旨の遺言をのこした場合、その遺言は有効なのでしょうか。今回のコラムでは、遺留分を認めない旨の遺言は有効なのか解説したいと思います。

 

遺言と遺留分の関係

遺言は、遺言作成者の最終意思として、自身の遺産を誰にどのように相続させるのか自由に決めることができるのが原則です。そのため、遺留分を一切考慮しない遺言であっても、法律上、その遺言は有効となります。

例えば、遺言作成者に、長男と長女の2人の相続人がいる場合に、長女に全ての遺産を相続させる旨の遺言を作成した場合、その遺言は長男の遺留分を無視した遺言ではありますが、法律上は有効となります。

しかし、相続という制度には、残された相続人の生活を保障するという側面があるため、兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分と呼ばれる最低限度の遺産の取り分を法律で認めています。

そして、遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求というかたちで、遺留分を他の相続人等から取り戻すことができます

例えば、遺言作成者である故人には、長男と長女の2人の相続人がおり、自身の遺産である1,000万円の全てを長女に相続させる旨の遺言をのこしていたとします。遺留分を侵害している遺言も法律上は有効なため、長女が1,000万円を相続することになりますが、長男は自身の遺留分相当額である250万円を長女から遺留分侵害額請求権を行使することによって取り戻すことが可能となります。

具体的な遺留分の計算については、「第30回相続コラム しっかり押さえたい遺留分の基本」をご覧ください。

 

遺留分を認めない旨の遺言

遺留分を無視した内容の遺言を作成しても、後に遺留分侵害額請求権を行使されることによって、自身の希望通りに遺産が分配されないばかりか、相続人間で遺留分を巡る争いを誘発するおそれがあります。

では、遺留分を巡る争いを防ぐために、遺留分を認めない旨の遺言を作成した場合はどうなるのでしょうか。

例えば、「全ての遺産は長男に相続させる。この遺言に関して遺留分は認めないものとする。」等の内容の遺言を作成した場合です。

結論から言いますと、遺言の内容として遺留分を認めない旨の記載があったとしても、その記載は無効となります。

遺留分は、残された相続人の生活保護のために認められた最低限保障された取り分であるため、遺言によっても一方的に奪うことは認めるべきではないからです。

なお、遺言の内容として遺留分を認めない旨の記載があった場合、その遺留分を認めない旨の記載部分は無効となりますが、その他の遺言内容や遺言全体が無効になるわけではありません。

また、遺言としての効力があるわけではありませんが、「遺留分を請求しないで欲しい」旨を付言事項に記載することは、法律上、問題ありません。

付言事項とは、遺言の内容そのものではありませんが、遺言に、遺言作成者の想いや気持ちを付記するものであり、遺言としての強制力はありません。ですので、あくまで「お願い」ということにはなりますが、どうして遺産をそのように相続させるのか、想いや気持ちを付記することで、遺留分侵害額請求の行使を思いとどまらせる効果を期待することができます。

 

おわりに

今回のコラムでは、遺留分を認めない旨の遺言は有効なのか解説しましたが、いかがだったでしょうか。遺留分を無視した内容の遺言を作成しても、後に遺留分侵害額請求権を行使されることによって、自身の希望通りに遺産が分配されないばかりか、相続人間で遺留分を巡る争いを誘発するおそれがあり、また、遺留分を認めない旨の遺言も無効となるため、遺言を作成する際には、遺留分に配慮した内容にすることが大切となります。

例えば、1,000万円の遺産を2人の子のうち1人に全額相続させようと思っても、仮に遺留分侵害額請求権を行使されると、遺留分相当額の250万円は他方の子に譲る結果となってしまうので、そうであれば、最初から、遺言の内容として、1人に750万円、他方に250万円としておく方が、無用な争いを避けることができるし、合理的ということになります。

どうしても特定の相続人に遺産を多く残したいという場合には、生前贈与や生命保険を活用する等の相続対策・遺留分対策が必要になりますので、その場合には、相続対策の専門家に相談することをおすすめします。

当事務所では、相続・遺言・相続登記などに関する相談を広く受けております。相談は、初回無料ですので、相続についてわからないことや、お悩みのある方は、お気軽にご相談ください。