第149回相続コラム 遺産分割協議のやり直しはできるのか?その方法や注意点を解説

遺産は、遺言がなければ、最終的に遺産分割協議によって相続人の誰がどの財産を相続するのか決定されることになるため、遺産分割協議は、相続財産の帰属を決める重要な手続きとなります。今回のコラムでは、一度成立した遺産分割協議をやり直すことはできるのか、やり直す方法や注意点を解説したいと思います。
遺産分割協議のやり直しは原則できない
一度成立した遺産分割協議は、自由にやり直せるわけではありません。遺産分割協議は、遺産の最終的な帰属を決める大事な手続きなため、これを自由にやり直せるとなると、いつまで経っても財産の行く末が決まらず、法律関係が不安定になってしまうからです。
ただし、いくつか例外的に遺産分割協議をやり直せる場合があります。
再協議に相続人全員が同意した場合
再協議に相続人全員が同意し、新たに相続人全員の合意を形成した場合には、やり直しが認められます。
遺産分割協議は、相続人全員の合意により成立するものなため、再協議に相続人全員が納得し、新たに全員の合意を形成できるなら、これを無効にする理由がないからです。
ただし、当然といえば当然なのですが、遺産分割協議後に、相続人以外の第三者が関与していた場合には、その者との関係もやり直しできるとは限りません。例えば、相続した不動産を第三者に売却し、その代金を相続人間で分配していたような場合、いくら相続人間で遺産分割協議をやり直したからといって、第三者から不動産を当然に取り戻すことができるわけではありません。
遺産分割協議に取り消し事由や無効原因があった場合
遺産分割協議に何らかの不備があり、取り消しが可能な場合や無効原因がある場合には、遺産分割協議のやり直しができます。取り消しなどにより、有効な遺産分割協議が存在しなくなった以上、新たに遺産分割協議をやり直す必要があるからです。
遺産分割協議を取り消せる場合
詐欺や脅迫により、遺産分割協議に合意してしまった場合には、合意を取り消すことが可能です。
また、財産隠しがあった場合や、後に生前贈与が判明したような場合も、遺産分割協議の前提となる財産が変わってしまうことから、遺産分割協議を取り消せる可能性があります。
遺産分割協議が無効になる場合
遺産分割協議に不備があり、協議が無効になってしまう場合には、遺産分割協議をやり直す必要があります。
相続人に漏れがあった場合
遺産分割協議の成立には、相続人全員の合意が必要なため、後の調査で、例えば被相続人に隠し子がいて、その者が協議に参加していなかったというような場合には、遺産分割協議はやり直す必要があります。
認知症の相続人がいる場合
相続人の中に認知症の方がいる場合には、その者に代わって成年後見人という特別な代理人が必要になるのですが、その者なしに遺産分割協議が進められた場合には、有効な相続人の合意が得られたとは言いがたく、遺産分割協議はやり直しとなります。
同様に、未成年の子がいる場合に特別代理人の選任がない場合も遺産分割協議がやり直しになる場合があります。
詳しくは「第19回相続コラム 未成年者がいる場合、遺産分割で必要になる!?特別代理人とは」をご覧ください。
遺産分割協議をやり直す場合の注意点
税金等が二重に課せられる危険性がある
最初の遺産分割協議成立後、既に相続税を納付しているような場合、協議をやり直したとしても、納付した税金が還ってくるわけではないので注意が必要です。また、再協議の結果、財産が移転する場合に、その財産の移転が税法上贈与とみなされると、贈与税がかかります。贈与税の税率は、相続税と比較してかなり高額なため、注意が必要になります。
また、不動産の名義変更もやり直すとなると、登記費用や不動産取得税も別途必要になってしまいます。
遺産分割協議の取り消しには制限がある
遺産分割協議の際に、詐欺や脅迫があり、その協議を取り消す場合、取り消し権には5年の時効があるため、いつまでも取り消せるわけではありません。また、詐欺や脅迫によって遺産分割協議が取り消せる場合であっても、その協議に基づく法律関係に第三者が関与していた場合には、その第三者との関係においては、取消権が制限される場合があります。
迷ったら専門家に相談することをおすすめ
遺産分割協議をやり直す場合には、やり直しができる場面が限られており、その判断には高度な法律的判断が伴うものが少なくありません。また、仮にやり直しができるとしても、高額な税金を別途支払う必要性が生じたり、かえって損をするという危険性もあります。
当事務所は、長年様々な相続案件に携わってきた知識と経験があります。相続に精通した司法書士が無料相談を実施しておりますので、遺産分割協議についてお困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。
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