第150回相続コラム 相続人でなくても請求できます。家族を介護していた者が請求できる特別寄与料について

相続コラム

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第150回相続コラム 相続人でなくても請求できます。家族を介護していた者が請求できる特別寄与料について

第150回相続コラム 相続人でなくても請求できます。家族を介護していた者が請求できる特別寄与料について

社会の高齢化とともに、介護が必要な方も年々増加していますが、故人の介護をされていたご家族が相続人に対して金銭を請求できる特別寄与料をご存知でしょうか。今回のコラムでは、比較的新しい制度である特別寄与料について解説したいと思います。

 

遺産と寄与分

遺産は、遺言がなければ、法律に定められた割合(法定相続分)で相続人に分配されることになります。しかし、例えば、長女が、長年病気の母親の療養看護を献身的にしてきたにも関わらず、介護等を何もしてこなかった次女と相続分が同じというのでは、いくらお金のために介護していたわけではないとはいえ、苦労が報われず不満に思うのが心情です。

そこで、法は寄与分という制度を設け、療養看護等により、被相続人の遺産の維持に貢献してきた相続人は、他の相続人より多く遺産を受け取れるよう配慮しています。

 

特別寄与料とは

寄与分は、相続人であることを前提に、寄与の度合いに応じて他の相続人より多くの遺産を受け取れるという制度ですが、療養介護する人が常に相続人とは限りません

例えば、介護してきた者が「長男の妻」という場合には、被相続人から見ると長男の妻は相続人ではないので、いかに献身的に尽くしてきたとしても寄与分による「相続の恩恵」は受けられません。

そこで、2019年に施行された改正相続法では、特別寄与料という制度を設け、療養看護等で遺産の維持・増加に貢献した相続人以外の親族に、相続人に対して寄与に応じた金銭を請求できる権利を与えることとしました。

 

特別寄与料の請求

寄与料の請求は、介護等をしてきた寄与者が、相続人に直接請求することになります。特別寄与料が具体的にいくらなのかについての規定はないため、当事者間で、寄与の程度や期間、遺産の総額などを考慮し、話し合いで決めることになります。

仮に話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に審判を申し立てることになるのですが、この申立ては、寄与者が被相続人の死亡及び相続人を知ってから6ヶ月以内か、被相続人の死亡を知らない場合でも死亡時から1年以内に行わなければならないので注意が必要です。

また、この特別寄与料は、あくまで相続人ではない親族に認められた権利ですので、相続人が相続分とは別に特別寄与料を請求することはできませんし、親族ではない者、例えば仕事として介護を行うヘルパーさんも権利行使できません。親族であっても、有償で介護を行っていた場合には、その場合は既に対価を受け取っているので、特別寄与料の請求はできませんので注意が必要です。

 

参考

民法1050条第1項
被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。