第221回相続コラム 相続対策に有効な教育資金の一括贈与の特例
- 2023.05.01
- 知って得する相続対策
- 孫, 教育資金の一括贈与の特例, 相続対策

前回のコラムでは、お孫さんへの教育資金の生前贈与と税金との関係を解説し、その中で、教育資金の一括贈与の特例について、その概要を解説しました。今回のコラムでは、特例を利用するための条件や注意点などを解説したいと思います。
前回のおさらい
祖父母からお孫さんへ教育資金を贈与したとしても、都度、必要な額を負担する分には、扶養義務の履行として、贈与税は課税されません。
しかし、教育資金が必要なタイミングに必要な額を支出するのではなく、前もって一括で教育資金を贈与するような場合には、贈与のタイミングでは教育資金か否かを判別するのは難しく、通常通り、贈与税が課せられてしまいます。
将来の大学進学費用など、必要となるであろう教育費を予め一括で贈与する際には、『教育資金の一括贈与の特例』という特例措置の適用を受けることによって、最大1,500万円までの贈与を非課税にすることが可能です。
詳しい解説は、前回のコラム「第220回相続コラム 孫への教育資金の生前贈与と税金(教育資金の一括贈与の特例)について」をご覧ください。
『教育資金の一括贈与の特例』の利用条件
贈与を受ける人の要件
30歳未満であること
贈与を受ける人(受贈者)は、30歳未満であることが条件となります。教育費を念頭においているため、受贈者には年齢による制限があります。
前年の所得が1,000万円を超えないこと
受贈者には、所得制限があり、前年の所得が1,000万円を超えている場合には、特例措置の適用を受けることはできなくなります。
贈与する人の要件
贈与する人(贈与者)には、年齢制限や所得制限などはありません。受贈者の直系尊属であれば要件を満たします。直系尊属とは、父母や祖父母などの、自分より前の世代で、血のつながった直系の親族のことをいいます。おじやおば、配偶者の親である義理の両親等は含まれません。
教育資金の用途と非課税枠
教育資金には、様々なものが含まれますが、用途によって非課税枠が変わってきます。
学校などに対して直接支払う費用
学校などに対して直接支払う費用については、1,500万円まで非課税となります。例えば、幼稚園、小中学校、高等学校、専修学校、大学などに通うために必要となる、入学金、授業料、施設利用料、入学試験の費用、学用品費、給食費、修学旅行費などが対象となります。
学校以外へ支払う費用
学校へ直接支払う費用以外にも、教育には、様々な費用がかかります。例えば、学習塾などの月謝や、習い事の費用などです。また、制服や体操着など学校が必要と認めた物品の購入代金や、通学定期代なども、学校へ直接支払うわけではないですが、教育に必要な費用となります。
これらの学校以外へ支払う費用については、500万円までが非課税となります。『教育資金の一括贈与の特例』では、最大1,500万円までが非課税となりますが、その中で500万円までが学校以外へ支払う教育費も対象にできるということです。
参考:国税庁ホームページ
『祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし』
制度を利用するための手続きとその流れ
『教育資金の一括贈与の特例』を利用するためには、金融機関に教育資金口座を開設し、その金融機関を通じて「教育資金非課税申告書」を提出する必要があります。
贈与者と受贈者との間で、贈与契約書を交わす。
↓
受贈者(お孫さん)名義で金融機関に「教育資金口座」を開設する。
↓
口座を開設した金融機関に「教育資金非課税申告書」を提出する。
(「教育資金非課税申告書」を金融機関経由で、税務署に提出)
↓
贈与者(祖父母)が教育資金口座へ教育資金を入金する。
という流れになります。
教育資金入金後には、自由に口座からお金を引き出すことができるわけではなく、例えば、授業料等を支払った際に、領収書を受け取り、その領収書を金融機関に提出することによって、使用した分のお金を引き出すことができます(金融機関によっては先に引き出せるところもあります)。
『教育資金の一括贈与の特例』の注意点
『教育資金の一括贈与の特例』を利用すると、一括で贈与とは言え、教育費に使用した額を、その都度、領収書を提出して、口座から引き出すという格好になるため、教育費として使いきれなかった残額がでてくることがあります。『教育資金の一括贈与の特例』が使えるのは30歳までの子や孫となるため、受贈者が30歳になった時点で使い切れなかった残額がある場合には、その残額に対しては、贈与税がかかってきますので注意が必要となります(30歳になった時点で在学中であれば40歳までの利用が可能)。
また、教育資金を使い切る前に、途中で贈与者が亡くなった場合、残額が相続税の課税対象となることもありますので、その点にも注意が必要です。
おわりに
今回のコラムでは、『教育資金の一括贈与の特例』を利用するための条件などを解説しましたが、いかがだったでしょうか。最大1,500万円までの贈与を非課税とできるのは魅力的ではありますが、残額が発生した場合等に、贈与税がかかったり、また、ケースによっては相続税が課税される場合がありますので、相続税対策として『教育資金の一括贈与の特例』を利用される際には、税理士などの専門家に相談されることをオススメします。
当事務所は、30年以上、相続問題に携わってきており、また、相続税や贈与税に強い税理士とも提携しております。相続問題に関する無料相談を実施しておりますので、相続に関することでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。信頼できる税理士をご紹介することも可能です。
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