第211回相続コラム 相続時精算課税制度に110万円の基礎控除枠が追加

相続コラム

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第211回相続コラム 相続時精算課税制度に110万円の基礎控除枠が追加

第211回相続コラム 相続時精算課税制度に110万円の基礎控除枠が追加

令和5年度の与党税制改正大綱が発表され、相続に関する税制も大きく変わる見込みとなりました。今回のコラムでは、その中でも、相続時精算課税制度に焦点を当てて、同制度がどのように変わるのかについて解説したいと思います。

 

そもそも相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度とは、生前贈与について、2,500万円までは非課税(贈与税がかからない)とする一方で、贈与者が亡くなった際には、過去の生前贈与を相続財産に加算して、相続税を課税するという制度です。

簡単に言うと、「生前贈与時には2,500万円まで贈与税を課さないけど、贈与した人が亡くなった際には、生前贈与した分も遺産として考え、相続税を課しますよ」という制度です。相続時精算課税制度を利用すると、いわば“課税を先送り”するような格好になります。

ただ、“先送り”とは言っても、一般的に、相続税は贈与税に比べ様々な控除もあることから安価になることが多く、贈与税ではなく相続税が適用されることはメリットとなり、資産を持つ高齢の世代から若い現役世代に財産が移転することを促進する制度として設けられたのが相続時精算課税制度となります。

相続時精算課税制度について詳しくは
第165回相続コラム 生前贈与する際に知っておきたい相続時精算課税制度とは」をご覧ください。

 

年間110万円の基礎控除枠が追加

今回の改正により、2024年1月1日以降の贈与から、相続時精算課税制度を利用した場合に、年間110万円の基礎控除枠が追加されます。基礎控除枠分である年間110万円までの贈与であれば、贈与税も相続税もかからなくなるため、相続時精算課税制度が利用しやすくなります。

例えば、ある人が、3,000万円の資産を、自身の子に、相続時精算課税制度を利用して、6年間、毎年500万円ずつ贈与したとします。従来の制度では、5年間贈与を続けると、2,500万円の特別控除枠を使い切ってしまいますので、6年目の贈与には、20%の贈与税がかかってしまいます。

改正後の制度では、毎年110万円の基礎控除が受けられますので、毎年の贈与額は、500万円-110万円=390万円の贈与と計算されます。そのため、6年間贈与を続けても、390万円×6=2,340万円分しか、特別控除枠を使ってない計算になりますので、贈与税はかかりません。

 

■相続時精算課税の非課税枠は、2,500万円(特別控除枠)+年間110万円(基礎控除枠)
■相続時精算課税を選択した年以降の贈与は、基礎控除額を引いた金額が、相続税の課税対象になる(2,500万円まで)※相続税の課税対象=贈与税は非課税
■非課税枠を超えた金額に対しては、一律20%の贈与税がかかる
■その年の贈与額が基礎控除額の110万円以下の場合は、贈与税の申告は不要

 

おわりに

今回のコラムでは、相続時精算課税制度に新しく追加される基礎控除について解説しましたが、いかだったでしょうか。今回解説した、相続時精算課税制度以外にも、暦年贈与についても改正されるため、節税を考える際には、資産状況や相続発生までの期間等を考慮したシミュレーションが重要となってきます。相続時精算課税制度は、便利な反面、一度利用を選択すると、通常の暦年贈与ができなくなってしまうので、相続税に詳しい税理士等の専門家に相談の上、ご利用することをおすすめします。

当事務所は、長年、相続問題に携わってきており、また、相続税に強い税理士とも提携しております。相続問題に関する無料相談を実施しておりますので、相続に関することでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。相続税に強い税理士をご紹介することも可能です。