第159回相続コラム 葬儀費用と相続税の関係

葬儀費用は、一般的に少なくない額の支出を必要とするところ、故人の遺産から支出する方も多いかと思います。今回のコラムでは、故人の遺産、相続財産から葬儀費用を支出した場合、相続税はどのように計算されるのか解説したいと思います。
相続財産から葬儀費用を控除できる
相続税を計算する際には、一定の範囲の債務は相続財産から控除することが可能であり、葬儀費用も控除の対象となります。
つまり、葬儀費用にかかった額の分だけ、相続財産を減らすことができるため、その分、相続税を節約することができます。
ただし、税法上の葬儀費用と認められるもの、すなわち控除が可能な費用と、認められないものがあるため、注意が必要です。
葬儀費用として認められるもの
●葬式や葬送に際し、又はこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用が認められます。)
●遺体や遺骨の回送にかかった費用
●葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(例えば、お通夜などにかかった費用がこれにあたります。)
●葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
●死体の捜索又は死体や遺骨の運搬にかかった費用
上記のような費用は、税法上、葬儀費用と認められ、相続財産から支出した額を差し引いて、相続税を計算することができます。
葬儀費用として認められないもの
●香典返しのためにかかった費用
●墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用
●初七日や法事などのためにかかった費用
上記のような費用は、税法上、葬儀費用とは認められず、相続財産から支出したとしても、相続税を計算する際に控除することはできません。
参考:国税庁HP
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4129.htm
相続法と相続税法は異なる
前回のコラム「第158回相続コラム 葬儀費用を相続財産から支出しても相続放棄はできるのか?」では、相続財産から葬儀費用を支出した場合、その支出と相続放棄との関係を解説しましたが、相続法(民法)の扱いと相続税法の扱いが異なる場合があるので注意が必要です。
相続法も相続税法も「法律である」という点では同じなため、混同されがちですが、両者は異なる目的のために制定された別の法律であるため、両者で取り扱いの異なるものが存在します。
税法上、葬儀費用として扱われ、相続財産から控除可能な費用であったとしても、相続法上、一般的に葬儀に必要な費用とは認められず、その支出を行ったことにより、後に相続放棄ができなくなるというケースも存在します。逆に、税法上は、相続財産から葬儀費用として控除はできなかったとしても、相続法上は、葬儀に通常必要な費用として、後の相続放棄が許容されるというケースもあります。
前回のコラムに掲載した判例でも、「墓石を購入したとしても、社会的に不相当とはいえない」として、相続財産による墓石購入後の相続放棄を認めていますが、相続税法では、墓石を購入したとしても、その額を相続財産から控除することは認められません。
葬儀費用に関する法律で迷ったら専門家に相談
葬儀費用だけではありませんが、相続に関する諸問題には、税法や民法などが複雑に絡み、幅広い知識が要求される場合があります。そのようなケースでは、相続問題に詳しい、税理士や司法書士などの専門家に相談するのが、問題解決の近道となります。
当事務所でも、相続問題に長年携わってきた専門の司法書士が、相続や遺言に関する様々な相談を初回無料にて受けておりますので、お気軽にご相談ください。
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