第274回相続コラム 相続登記を申請するための遺産分割協議書の作成方法

相続コラム

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第274回相続コラム 相続登記を申請するための遺産分割協議書の作成方法

第274回相続コラム 相続登記を申請するための遺産分割協議書の作成方法

相続が発生すると、故人が所有していた不動産は、遺言書がなければ、相続人に相続されます。相続人が複数人いる場合には、法律で定められた割合(法定相続分)に従って遺産を相続人間で共有することになるため、遺産を構成する不動産も共同相続人間で共有状態となるのが原則です。

不動産を相続人の共有財産として相続登記を申請することもできますが、特定の相続人に不動産を相続させたいというケースでは、遺産分割協議を行う必要があり、その遺産分割協議の内容を示した遺産分割協議書を提出して、相続登記を申請する必要があります。

今回のコラムでは、相続登記を申請するための遺産分割協議書の作成方法を解説したいと思います。

 

相続登記と遺産分割協議書

遺言書がなく、遺産分割協議も終わっていないという段階では、遺産は、法律上、共同相続人間の共有財産となっているので、法定相続分通りに相続登記を申請することは可能ですが、それ以外の割合で相続登記を申請することはできません。

例えば、Xさんが亡くなり、その相続人として長男・次男の2人がいたとします。Xさんが所有していた不動産を、長男名義に変更したいからといって、いきなり長男の単独所有として相続登記を申請することはできません。なぜなら、遺産分割協議が成立していない段階では、故人が所有していた不動産は、長男・次男の2人で、それぞれ1/2の割合で共有状態になっているので、それを単独所有として登記を申請することは、実体に合わない虚偽の申請となるからです。

特定の相続人に不動産を相続させたいという場合には、遺産分割協議を行い、遺産の共有状態を解消し、遺産分割協議によって変動した法律関係に基いて相続登記を申請する必要があります。

上の例で言えば、長男と次男で遺産分割協議を行い、Xさんが所有していた不動産については、長男が相続するという合意が成立すれば、当該不動産は長男の単独所有となるため、長男名義に相続登記を申請することが可能となります。

なお、そのような合意が本当に成立しているのかどうかは、登記申請を受け付ける登記官には判断できませんので、合意の成立を証明するために遺産分割協議書の提出が必要になるというわけです。

 

相続登記申請用の遺産分割協議書(見本)

相続登記申請用の遺産分割協議書の見本は以下のようになります。

なお、上記の見本は、経堂太郎さんが亡くなり、その相続人として妻の経堂花子さん、長男の経堂一郎さん、次男の経堂次郎さんがおり、遺産分割協議によって経堂一郎さんが不動産を相続するというケースを念頭においております。

以下、上記見本をもとに、詳しく書き方を解説していきます。

 

相続登記申請用の遺産分割協議書の作成方法

遺産分割協議書の作成方法について、法律上、特に決まった様式はありません。パソコンで作成しても、手書きで作成しても問題ありません。

 

①について

作成した書面が遺産分割協議書であることを明確にするために『遺産分割協議書』と記載します。

 

②について

誰の遺産について分割する協議なのか明確にするために、被相続人(故人)の氏名、亡くなった日付、生年月日、本籍、住所等、被相続人を特定するための情報を記載します。なお、亡くなった日付は、正確に戸籍謄本等に記載された日付を記載します。

 

③について

遺産分割協議は、法律上、共同相続人全員で協議を行い、その全員の合意によって成立するため、それらが存在した旨を記載します。

 

④について

遺産分割協議の内容を記載します。今回の見本では、故人が所有していた不動産を経堂一郎さんが相続するという内容のため、その内容を記載しています。なお、『不動産』を具体的に特定するための情報を一緒に記載すると長くなり、読みづらくなるため、今回の見本では、“下記の不動産”と表記し、不動産の具体的な情報は、⑧で記載しています。

 

⑤について

遺産分割協議書を相続人全員分作成しなければならないという決まりはありませんが、後の争いを防ぐために、人数分作成し、各自保管するというのが一般的です。

 

⑥について

遺産分割協議が成立した日付を記載します。遺産分割協議は相続人全員の同意があれば、やり直すことが可能ですので、成立した日付は重要です。

 

⑦について

相続人全員の住所、氏名を記載し、押印します。パソコンで遺産分割協議書を作成する場合でも、氏名は署名するようにしましょう。氏名を署名しなればならないという決まりはありませんが、後の争いを防ぐべく、文書の真正性を確保し、証明力を上げるという観点からは署名することをおすすめします。押印は実印で行います。登記申請の際には、印鑑証明書の提出が要求されるためです。

 

⑧について

遺産分割協議の対象となった不動産を特定するために、不動産の情報の詳細を記載します。土地を相続する場合には、所在、地番、地目、地積を、建物を相続する場合には、所在、家屋番号、種類、構造、床面積を記入します。内容を正確に記入するために、登記事項証明書を取得し、その証明書の記載通りに記載し、登記申請書と対応するようにします。

 

おわりに

今回のコラムでは、相続登記を申請するための遺産分割協議書の作成方法を解説しましたが、いかがだったでしょうか。相続した遺産を共有状態のまま放置しておくと、空き家問題・所有者不明土地問題の温床となったり、共有者間での意見の食い違いから、その活用が阻害されたり、後のトラブルの火種となるおそれもありますので、しっかりと遺産分割協議を行い、その上で相続登記を申請することをオススメします。遺産分割協議では、原則、すべての遺産が分割の対象となりますが、相続登記を申請するためだけであれば、今回のコラムで示した見本のように、不動産のみについて協議の内容を記した遺産分割協議書も問題なく有効となります。

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